立ち上がる巨人
森の中。猫族とトロールが戦っていた。戦況は一目瞭然、猫族が劣勢だった。
トロールが足を失った猫族にバカでかい棍棒を振り下ろす。
足を失った猫族は手で必死に逃げようとするが、トロールの棍棒はグシャっという音と共に赤く染まった。
そのトロールが次に襲うは赤髪の猫族。
また同じ様に振り下ろすが、赤髪はひらりとその棍棒を避けて、トロールの後ろに回り込むんだ。
トロールは横に棍棒を振り回し後ろを攻撃しようとしたが赤髪には一向に当たらない。
何度振り回そうと、何度殺そうとしても、赤髪の尻尾すらかすりもしない。
赤髪は軽い身のこなしでトロールの背中に乗った。
トロールは大暴れ、赤髪はその手に持った双短剣で首を狙う。
一撃、ニ撃、三撃目でトロールの頭が空を舞った。
トロールは自らの血を辺りに撒き散らし。
叫ぼうとしているのか、斬れた首から空気を漏らしながら倒れた。
赤髪がその場を移動しようとしたときだった。
最初は足、右足からだった。次に左足、腰から上半身へと、身体が硬直して動かなくなっていった。いわゆるとこの金縛りというやつだ。
足音が後ろから近付いてくる。棍棒を引きずる音も。
止めろ。その棍棒で何する気だ!俺を殺す気か?止めてくれ!誰か、助けてくれ!
足音が止まり、ブオンという棍棒を振り上げる音がした。
止めろ!止めてくれ!
「デレスゴーア!」
突然、辺りが火の海となり、トロールが次々と倒れていく。
デレスゴーアという業火の中級魔法で一掃したのだ。
魔法の使用者はニアだ。
「全く、王族護衛がトロール如きで情けない」
「ニ、ニア様?!」
ニアが赤髪のアレスにかけられたら金縛りを解いた。安心したアレスはその場に座った。
「で、アレス。ここでなにしていたか説明してもらえるか」
「あぁ、ですがひとまずこの森を……!」
アレスはニアの後ろにいるものに驚いた。
「ニア!後ろだ!防げ!」
ニアが振り返ると、そこにいたのは倒した筈の頭のないトロールだった。しかも、棍棒を振り下ろそうとしていた。
「グラススーラ!」
ニアは咄嗟に土の中級魔法で壁をつくり防いだ。
再び立ち上がったのはこの頭のないトロールだけではなかく、先程業火の魔法で倒したトロールまでもが動き出した。
「ば、バカな!トロール如きが魔法を防いだのか?!」
「チッ、話は後だ。ニア様もう一発、デカいの頼めますか?その間に全員でこの森から出る」
「分かった。デレスゴーア!」
再びトロールに業火をお見舞いする。
「今だ!こっちだ!全員逃げろ!」
猫族はみな一目散に逃げ始めた。
「クライン!私らも逃げるぞ!」
「ハッ」
木の上にいたクラインは木から木へと移動していった。
一体、どういうことだ?魔法を防ぐトロールに、王族護衛の部隊がこんなところで…。考えても仕方ない。今は逃げるか。