アンブロシア 復活祭
はぁ~、酷い夢だったなぁ。全く身体が休まらなかった。
そう思いながらニアは廊下を歩いている気た。今日は魔族の王都“アンブロシア”の奪還によって、しばらくの安寧と平和を手に入れた魔族たちが祝のためにささやかな祭りをひらいていた。そのため王城の外はとっても賑やかだ。
ニアは立ち止まり大窓から祭りの様子を眺めた。そこへ私服のクロエが今にも寝てしまいそうな状態でやってきた。
「あ、ニア様。おはよーございま~す。…ふぁ~~」
と、あくびをした。
「あぁ、おはよう。お前にしては珍しいな。もう、祭りへ行ったかと思っていたのだが」
「ニア様、俺にどんなイメージもってるんだよ。俺そんな祭り男じゃないぜ?」
「おい!ニア様に対して何という口の聞き方だ!」
そこを通りかかった鎧を着た大男タタラがクロエに注意した。
「えぇ?いいじゃねぇかよ~。って、あんたなんで鎧着てんの?」
「警備のためだ。というより逆に城内を私服でうろついてるお前の方がおかしいと思うが」
「うっ、」
クロエは口を尖らせタタラを睨んだ。
「まぁまぁ、今日は祭りなんだからそう怒るなよタタラ」
ニアが仲裁に入った。
「ニア様がそうおっしゃるのなら。分かりました。 では、私は城内の警備があるので」
「あぁ、だが、あまり無理をするなよ。タタラも年なのだから」
「大丈夫ですよ。ニア様。では」
ニアの言葉に納得し、その場を去ろうとしたタタラの肩をニアは“ポン”と軽く叩いた。タタラはニアの目を見て軽く頷きその場を後にした。ニアはそれを見届けた後、祭りを見て溜め息をついた。
「ニア様、何かあった?」
「え?」
「いや、ニア様なんか今日は元気ないっていうか覇気がないなぁ~と、思ってさ」
「いや、昨夜久しく夢を見たんだ。その夢が妙に現実的でな、その、センソウと言う男に殺される夢なんだ。そのせいで疲れがとれなくてな」
「センソウかぁ。確かアイガの言ってた?」
「あぁ、そうだ。もしかしたら無意識の内に私がセンソウを怖がっているのかもな」
「ふ~ん、ま、元気出してくれよ!ニア様がそんなんじゃ、せっかく奪還できたのにまたとられっちまうよ」
「そうだな、すまない」
「ま、そういうことで俺は祭り行ってくるわ。んじゃな~」
クロエは窓を開け街へ飛び下りていった。ニアは窓を閉めようとした。が、次の瞬間心地のいい風が吹き込んできた。そして、活気に満ち溢れた街を見たニアの横顔は少し笑顔だったかのようにみえた。
「しっかりしなきゃな」
ニアは頬を軽く叩いた。