来たるべき反撃の時に
魔王アクトルの悲報は魔族たちに深い悲しみを与えた。そして、葬儀は盛大に執り行われた。そのとき魔族の誰もがこう思った。“もう、人間に屈するしか生きる道はないのか”と、そう思ったのはタタラを含む4人の騎士たちも例外ではなかった。このとき既に魔族の王都は人間の支配下に落ちていたのだからそう思うのも無理はない。だが、一人だけニアだけは絶対に人間に屈しようとはしなかった。
そして後日、ニアの魔王即位式が執り行われた。即位の際、ニアは演説でこんなことを言葉を口にした。“絶対に私は人間に屈しない”と、魔族たちはその言葉に小さな光や希望を感じることができた。だが、戦争に負けた相手だ。それにまだ負けただかりで魔族にはそこまでの力はない。どう足掻こうと今は人間の支配を脱却することはできない。そう分かっていながらも魔族はニアの言葉に希望を持ちたかったのだ。
人間の支配が始まってから若い魔族たちは人間の住む町に連れて行かれ奴隷のような扱いを受けていた。あまりの扱いに、かなりの数の死者も出ることとなった。魔族の王都には人間の兵隊が常に目を光らせていて、少しでも魔族が怪しい動きを見せれば人間の兵隊によって問答無用で公開処刑にされた。無罪を主張しようが何しようが容赦なく。人間の兵隊は魔族を殺すことに躊躇いなく…いや、むしろ楽しそうに魔族を殺していた。今、人間以外の種族は人間にこのような扱いを受けているのだ。だが、人間に対し反撃の時を伺っている者も多い。ニアもその一人だ。
人間の支配が始まってからもう三年が過ぎた。王城の地下には研究所がある。人間の兵隊にバレないようひっそりと兵器の研究を行っている。施設内の広い実験場には三メートル程の大きさの人型機械が置かれていた。機械の周りにはは3人の科学者が点検をしていた。どうやら異常が無かったようだ。
「人型機械兵器の全ての点検が終了しました。異常は確認されず」
という無線が入った。機械の置かれた実験場の上の方に設けられているコントロール室にいた所長は実験場の人たちに対し放送をながす。
「ご苦労、これより第五回人型機械兵器・ゴーレムの起動実験を行う。実験場にいる者は直ちに安全な場所へ移動するように。繰り返す、実験場にいる者は直ちに安全な場所へ移動するように。以上」
実験場の科学者たちは直ぐに移動をして実験場を出た。実験場への出入り口は閉鎖されコントロール室の明かりは最小限に抑えられた。科学者たちは所長の指示でゴーレムの起動を開始する。
「エネルギー充填100%、コアの起動を確認」
「完全起動まであと、二十秒……十五秒……十秒……5・4・3・2・1ゴーレム起動しました」
ゴーレムの目が光り辺りを見回し始めた。そして、直ぐに立ち上がり歩き出した。
「やりましたよ!ヘンネル所長!古代兵器ゴーレムの起動は成功です!」
「あぁそうじゃな!みんなやったぞ、実験成功じゃ!」
「やったー!」
コントロール室の明かりが戻り拍手と歓声が鳴り響く。すると、コントロール室の扉が開き中に背の高い黒髪で腰には二本の剣を据えた女性が入ってきた。ニアだ。
「魔王様?!」
ニアを見た科学者たちは皆頭を下げた。ニアが合図すると皆は頭をゆっくりと上げた。
「これはこれは、魔王様。よくおいでくださいました」
「あぁ、それで?ヘンネル、ゴーレムの研究の方はどうだ?」
「えぇ、只今起動実験を行ったところ見事成功!ご覧ください」
ヘンネルはゴーレムを指差した。ニアはゆっくりとそちらを向いた。すると、何も言わずにニヤリとした。そして、クスクスと笑い出した。
「ま、魔王様…?」
「ふふふ、素晴らしいじゃないか。それで、ヘンネルこれで他のゴーレムの起動もできるのだな?」
「はい、それはもちろんですとも」
「ぁあ、早くコイツを使ってニンゲン共を蹴散らしたいものだな。もう、支配が始まって三年。どれだけの魔族を失ったか…。だが!もう屈することはない!後少しだ。来たるべき反撃の時が!」
急遽王の間にタタラ・クロエ・マリ・エマのニア直属の四人の騎士たちが集められた。
「ニア様。いきなり集めてなんのつもりですかぁ?」
と、いかにもチャラそうな男が馴れ馴れしくニアに話しかけた。戦槍使いのクロエだ。
「貴様!口を慎め!」
そう忠を下したのは大剣使いのタタラだった。
「まぁまぁ、落ち着いて下さい皆さん」
場を和ませようとするのは片手剣使いのマリ。
「それで、ニア様。本日我々を集められた理由とは?」
そう言ったのが大鎌使いのエマだ。
「それはな…」
皆がニアの方を見た。
「近々、この王都の支配権を奪還するためだ」
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