プロローグ1
お久しぶりの人はお久しぶりです。はじめましての人ははじめまして。
タンバです。
今回の作品は学園バトル物です。
昔、書いた作品、難攻不落のドレッドノートの設定を流用しつつ、新たな作品に作り替えました。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
では、よろしくお願いいたします。
西暦2065年。
日本・東京。
その日の朝は晴天だった。
しかし、今は灰色の煙が空を覆っている。
その煙の原因は、あちこちに広がる爆発によるものだった。
日本にとって、最も重要視すべき同盟国、アティスラント王国の王女が来日し、車に乗って姿を見せたところを狙ったテロだった。
美しいと評判の王女を一目見ようと押し寄せた群衆は、瞬く間に混乱に陥った。
街には悲鳴と爆音が木霊する。
そんな中、十代前半の少女が一人、茫然と佇んでいた。
共に来た両親とはぐれ、逃げる群衆たちによって、どこともわからない場所に押し出されたからだ。
ただ、少女が佇んでいたのはそれだけじゃなかった。
押し出された先は、テロリストたちの目標だった。
つまり、アティスラント王国の車がある道路だ。
王女の護衛についていた車は破壊され、周囲に展開していた軍も交戦状態だった。
そう、少女は戦場に立っていた。
そんな少女の目の前に二足歩行のロボットが現れる。
大きさは二メートル超。
横幅もあるガタイのいいロボットだ。
それがアティスラント王国と敵対するレムリア帝国が使うゴーレムという兵器だと頭ではわかった。
しかし、恐怖のあまり声すら出せず、足は竦み、少女は尻餅をついた。
ゴーレムの頭。
中央部には赤いモノアイがあり、それが少女を捉える。
やられる!
そう少女は確信したとき、自然と声が漏れた。
「だれか……助けて……!!」
少女の救いを求める声は、群衆の悲鳴にかき消される。
ゴーレムは右手を上げて、少女に振り下ろそうとしている。
その瞬間、少女は強く目を瞑った。
それから数秒。
恐れていた衝撃はやってこない。
恐る恐る目を開けると、先ほどまで目の前にいたゴーレムは真っ二つになっていた。
「えっ……?」
代わりに少女の目の前にいたのは足先から頭まで、すべて漆黒で固めた騎士だった。
その騎士はゆっくりと首を回し、兜で隠れた顔を少女に向ける。
「怪我はない?」
ただ一言。
黒い兜の中から声が発せられる。
意外なほど優しい声に、少女はびっくりしつつ、頷く。
「なら、このまま左に歩いていくんだ。そっちはもう王国軍が制圧しているから。急いで」
そう言うと、騎士は黒い翼を使って飛翔する。
それを見て、少女はさらに驚く。
だが、驚いてばかりもいられない。
少女がいるのは現在、最も戦闘が激しい地区であったからだ。
少女は立ち上がり、騎士に言われたとおり、左に向かって歩き出す。
そのとき、テロリストの声がどこからか聞こえてきた。
それは恐怖に歪んだ声だった。
「黒騎士サー・レイヴン……!!」
それが先ほど助けてくれた騎士の名だと、少女にはなんとなくわかった。
その名を胸に刻みながら、少女は歩く。
しばらくすると、兵士たちが駆けよってきて少女を保護した。
どうにか助かった。
それに対する安堵で、少女は膝から崩れ落ちる。
兵士たちに支えられ、少女は救急車に乗せられた。
仰向けの状態で見あげた空には、黒い騎士が飛んでいた。
テロリストのゴーレムを次々に破壊し、どんどん追い詰めていく。
その強さはまさに一騎当千。
あまりの強さに現実感がない。
だが、少女はその強さに憧れた。
自分もああなりたいと。
あの人のように、自分も誰かを守れるようになりたいと。
だから少女は救急車で運ばれるまで、騎士から目を離すことはしなかった。