●第0話 旅たち
紅い炎を吐き金属片を容易に溶かしていく炉
黄金に包まれた耐熱鎧を纏い
カーン カーン
溶けた金属を慣れた手つきで成型している白ひげ男が口を開く
「ビルダよ我が娘よ来月は成人として旅立つ日が来た」
「はいお父様...」
「成人の儀はもう理解してるか?」
「はいお父様」
「成人の儀に授かる事が出来る神の祝福
キャンセル不可・変更も不可、受けたら最後一生好みも選択できず
何が貰えるか解らない生涯に一度っきりのドッキリイベントである」
ビルダの冷たい視線が父に刺さる
「一度っきりのドッキリイベントである」
「2度も言わないでも解ってます錬金王ワッグス」
「父を呼び捨てするなし…」
「玉座でもないのに関係ないですわw」
少女はビルダ
ドワーフ鉱床に住まう地を統べるドワーフ王バッカスの曾孫
ミスリルの簡易加工法を確立し錬金王と言われたワッグスの子
身の丈は120cmはど、銀髪でクリクリのロングカールがキュートな
ドワーフには似つかわしくない華奢なラインで綺麗に透き通る様な肌
目はパッチリで口角は常にあがってそうな笑顔が眩しい...
鼻ペチャで胸ペチャでペチャペチャとよく喋りそうな大きな口
(ビルダ心の声:ペチャペチャ連呼するな!!)
「………とまぁ、ワシはドワーフ王として錬金のギフトにも恵まれ錬金王とも言われ
武器防具の製造と商売に成功し先代王の借金を返上しそして最怖もとい最愛の妻と………」
「お父様、話がズレてきてません…?」
またもビルダの冷たい視線が父に刺さる
「おっそうだな…」
「我が家ドワーフ王の血筋は女性が滅多な事で産まれないのは知っとるな」
「はいお父様」
「だが産まれた場合は授かるギフトが世界を変える程のレアで優秀な物を授かる事で有名であった」
「はいお父様」
ビルダの目がキラキラと輝く
「遥か昔・・・一なる女性と語られてる【建国】の祝福を受け取りドワーフ王国を築いたと言われ」
「ルクサーヌ女王ですねドワーフ王2代目バッカスの大祖母様
ギフトの力で全てのドワーフ達を魅了し
この標高6000mある山脈の地下洞窟に潜む火竜を退治し竜の住処を
最高硬度のアダマンタイトハンマー片手に地下城と地下都市を削り出したと言われる初代王です」
「500年前の女性は【英雄】の祝福を受取り魔王を倒した」
「魔王の手によって100年間暗黒の地に染められた大地を取り戻した英雄ミカエラですね
神から授かっと言われる神雷のアックスを片手に仲間と共に討伐されたと聞いています」
「600年前の女性は【支配】の祝福を受取り魔王になり…」
「その倒された魔王ルシフェナですね…
ドワーフから魔王が誕生したのも驚きですがその魔王を倒したのもドワーフ
討伐の際に神雷のアックスと共にルシフェナは深い谷底に落ちていったと聞いております…」
「と…一部を取り上げるだけでも伝説級の女賢人が連なる家系である」
「お前にもその血が流れておるのはわかって…」
「解ってますわお父様
私もその賢人達にも負けない偉大なる賢人として名を上げて見せます!!」
グッと拳を掲げ軽いノリで父の王の言葉を遮ってしまうビルダ
・・・・ふぅっ・・・・
深い深い溜息をついた
ワッグスが錬金の能力で完成させた二振りの剣をビルダに突き付け
「お前は頭は良いが母と違い周りを見ることを忘れ
こうと思えばすぐ行動してしまう…心配じゃわい…ビルダよ持ってけ…」
一つは打刀、紅い鞘に蒼い玉を埋め込まれた 一振り 名を不知火
刃渡り100cm程のオリハルコン製 刃は紅く染まり見ているだけで熱くなるような力強い刀
一つは小太刀、朱い鞘に碧い玉を埋め込まれた 一振り 名を朧夕日
刃渡り60cm程のミスリル製 刃は薄い蒼色を帯び刃幅が大きく
刃と柄の間には一握り程の刃が無い箇所があり
柄には透明の珠嵌め込まれて覗くと薄っすらと小さな光が灯ってる
本来ならば国宝級の名刀として城に飾られる様な品になるであろう
2対をを受け取り初めての冒険に出るのであった
「ありがとうお父様!大事にするわね♪」
「がんばるのじゃぞ・・・本来ならついて行きたいくらいじゃがな
成人の儀は該当者だけで旅をするのが習わし
ワシはついていけぬ
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あぁそうじゃその刀の能力じゃがな。。。」
振り返るとそこにはビルダはもう居なかった
「心配じゃわい・・・」