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教会の地下室と長話老人と不適合者

部屋を出ると待っていた苦笑いを浮かべたライズ大司教が、重症患者のいる場所まで先導するようだ。

このふたり、途中までわたしが付いてきていないことに気づいてなく来た道を戻ったらしい。わらえる。

建物の中を進んでいくにつれ人気がなくなり、静かな廊下を進んだ先に教会には珍しい武装した騎士が立つ扉の前までやってきた。こちらに気づいた騎士はライズ大司教に一礼し道を開けた。

ライズ大司教は懐から鍵を取り出すと扉のカギ穴に差し込み開錠した。扉の開いた先には地下へと続く階段が姿をあらわした。

階段を降りていくと地下は薄暗い照明に照らされていた。暗いこともあるが奥の方まで見通せないくらいには奥行きがあり、両サイドには頑丈そうな扉がいくつも窺える。

なにこれ!めっちゃわくわくする!教会の地下へと続く階段とか、見られてはいけないような教会の裏の顔が詰まっているに違いない!

ここはやっぱり王道の悪魔崇拝者たちが密かに集いサバトだろうか。重症者の治療とか言って美少女のわたしを地下に誘導し生贄しようという魂胆だな。

あれ。そうなると黒幕はライズ大司教?

あり得る。ディフィニアは昔の伝手を頼りにライズ大司教を訪ねるが、長い月日がたち教会そのものに疑念を抱いたライズ大司教はのちに悪魔崇拝者になっていた。そうとは知らないないディフィニア一行は、ライズ大司教の口車に上手いことのせられ思惑に気づけず危機的状況に陥ると!


「安心くださいアキ様。これから行く目的の場所以外には寄りませんので、危なくないですよ」


ちょっと興奮のあまり辺りをせわしなく見ていたせいか、ライズ大司教が声をかけてきた。

目的の場所以外には寄らないから危なくないということは、目的の場所以外では危ないところがあるということかな。


「気にするでない。アキちゃんは怖がっているわけじゃないからの」

「そうなのですか。それにしてもアキ様はお年の割にしっかりされていますね」

「そうじゃろうて!なんたって、このわしが育てたのじゃからな!」


育てられた覚えはないが、ディフィニアのこの発言は今に始まったことじゃないので黙っておく。言ってもどうせスルーされるんだし。

いくつもある扉には種類が違うものがあるようだ。錠が付いた扉もあれば、扉自体に鍵穴があるのも、薄く発光しているのは魔法で封印されているのだろうか。

ライズ大司教に付いていきながら、鍵穴の付いた扉の鍵穴からのぞいてみたが暗くてよく見えなかった。これはあれだ。悪魔化したライズ大司教倒したあとに鍵をゲットできる系だな。


「さあ着きましたよ。こちらの部屋になります」


立ち止まったライズ大司教は、ジャラリと金属音を鳴らし鍵束を取り出した。

あれがドロップアイテムの鍵か。落ちるのは一本、二本で多くの扉は開けられないかと思ったが全部開けられる感じだな。

ライズ大司教は多くの鍵束の中から目的の鍵を少し探し、その鍵を差し込み開錠した。

「さあどおぞ。アキ様に治していただきたい方はこちらになります」

開かれた扉の先には、壁に拘束された男の姿があった。

部屋の中に足を踏み入れると静かに俯いていた男はこちらに気づくと、突如暴れだし拘束している鎖を大きく鳴らす。かまされた猿轡からうめき声と共によだれが漏れまき散らす。男の顔には血管がいくつもくっきりと浮かび上がり、振りまわす髪の間からは血走った目が覗く。だがそれらの異常よりも目を引くのは左腕だろうか。肥大化した前腕から先はヒトのそれではなく、黒く異形の姿となり鋭い爪が窺える。


「ライズよ。これはどういうことじゃ」


え、うそ。ほんとにきた?わたしの予想通りライズ大司教の教会裏切り説きちゃったの?


「やはりディフィニア殿はご存じのようですね。アキ様のために説明しますが、こちらの者は『不適合者』であり『種』に蝕まれたものです」

「『不適合者』に『種』ですか?」

「『不適合者』とは教会が彼の様になった者に名付けた総称になります。十数年前よりこの男のような異形の姿を認めることが増えました。教会も彼らを元に戻せるか総力を挙げて手を尽くしました」


初めて聞くワードを聞き返すとライズ大司教は説明パートに移ったようだ。


「教会であらゆる手段を用いて『不適合者』治療を試みましたが今日現在まで成果は見られませんでした。同時になぜこの様な事態が起こり始めたのかを各国の協力のもと捜査が開始されましたがこちらも手掛かりは少なくこちらも難航。捜査が続くにつれ一つ分かったことがありました。共通している手掛かりというのが『不適合者』の方々はみな冒険者であり、何らかの事情でお金に困っていたそうです。ですがそれ以上の進捗なく、『不適合者』のみが増える一方でしたが、ある情報がひとりの冒険者よりもたらされました」


足すごくいたい。今日はわたし結構な距離を歩いたので疲れたんだけど、長くなりそうならイスとお菓子を用意してほしな。

一旦区切ったライズ大司教であったが、説明はまだ続くようだ。

明日は筋肉痛かと覚悟しつつライズ大司教の続く話を聞く。


その冒険者は他の『不適合者』に漏れず金銭に困っていたということです。ある日酒場で飲んでいるとき同郷の友と再会をした。最初はお互いの再会を喜びお互いの健闘を讃え話し酒を飲みました。そして知ります。同時期に冒険者となった友は冒険者として成功して、自分は冒険者を始めた頃と何も変わらない、そして酒が進むにつれ愚痴も出るようになりました。友の冒険者は語ります。友も何も初めから順調だったわけではない、悩み辞めてしまおうかと考えた時期もあると。その日は上手くいかず任務は失敗。当然報酬はなく、なけなしの金で今の自分と同じくひとり酒場で飲んでいた、その時に話をかけてきた人物によって解決したと友は喜びを露わにした。話しかけてきた人物は目深にかぶったローブで顔を見せなかったが、声から若い男の声だったと言います。怪しいとは感じつつも深酒で思考が定まらない友は、自分と同じように愚痴を漏らし話をしたと。ガキの頃憧れた冒険譚のように冒険者になって一山当てようなんて馬鹿げたことを考えたものだ、田舎に帰って畑でも耕すのが向いているのではいか、その方が両親も安心させてやれる。自分の情けなさについには涙を流し始め友に、友が吐露する話に相打ちを打つだけであったローブの男は口を開きました。甘い言葉で慰めてくれたとのことでしたが内容は酔いつぶれた頭には残らなかったとのことですが、はっきりと覚えている事がありました。ローブの男は友に小瓶に入れられた黒い植物の種のようなものを差し出してきました。差し出したローブの男曰くこの『種』を飲めばこれを飲めば明日からのキミは昔読んだ冒険譚の主人公のような冒険ができる。そう語る男のローブから覗く口は笑っていた。そんなもので人生が変わるわけがないと笑う友だったが、冗談だろうが愚痴に付き合ってくれたローブの男に付き合い、その種を酒で煽り吞み込んでしまいました。


話なっっが。

てか、そんな怪しいもの飲むなよ。お酒とか飲んだことないけど、こういう話を聞かされると飲まないようにしよって思う。

ライズ大司教の話にディフィニアであれば長い簡潔に。って言ってくれそうだけど、その本人も真剣に聞き入っているので助け船もきたいできなさそうだ。

せめてイス、ほんとうにイスください。


ローブの男は友が飲んだのを確認すると言いました。参考になったよ。キミみたいな人をターゲットにするのが良さそうだ。お礼にこれをもう一つあげる。あ、もう一つ飲んだところで効果はないから、友達にでも飲ましてあげて。そう言い残しローブの男は立ち去っていきました。翌朝目覚めた友は二日酔いに痛む頭で、冒険者ギルドに向かい魔物の討伐任務を受けて衝撃を受けました。その魔物は外皮が固くしぶといが、油断せず攻撃を掻い潜りダメージを与えていけば倒せる。何度討伐したことのある魔物でした。また酔いがひかないせいか魔物の攻撃は遅く感た。難なくその攻撃をかわし弱点を切り付け続ける。それがセオリーであったが、今日は一突きで外皮を突き破り倒してしまった。疑問に思いつつ個体差であったと判断し、今回は幸運だったと次の獲物を探し倒しました。そして友は気付きました。昨日まであれほど堅く苦戦を強いられた外皮が難なく切り裂けてしまう。思い起こすは昨日の酒場での出来事。友はローブの男が残して行った小瓶を取り出した。この『種』を飲んだからか怖くなった友は飛ぶように宿に戻り、その日は震えねむれなかったと話したそうです。もともと友は短絡的な性格であったようで、日が経つにつれ恐怖も薄れ受け入れていきました。それからは破竹の勢いで活躍を続け名のある冒険者として活躍するようになったと友は冒険者に語りました。友は冒険者に自分を重ね、これまでお守りとし持ち続けた小瓶を渡しました。友と別れ宿まで戻った冒険者は半信半疑で友の話を聞いていましたが、たしかに昔の知っている友は今ほどの力は持ち合わせておらず。活躍をきくようになったのもここ数年の話だった。信憑性がないわけではないのか。例えウソであっても自分に害はないだろうと思い、明日、起きたら飲んでみようと就寝した。そしてその判断が幸運であったを起きた時に知ることとなる。

早朝に鳴り響いた轟音とともに冒険者は目を覚ました。まだ薄暗い街は炎に照らされた明るく見えた。あたりに朝日が射すころには騒音は収まり冒険者は知ることとなる。早朝に事件を起こしたのが友だったことに。

この真相を知ったのは冒険者がギルドに着いてからからだった。友が死んだ。死因は巷でに噂で聞く体の一部が異形の姿に変化して理性を失うというものだった。友の場合は全身が異形の姿になっていたという。町の区画を破壊し数百もの犠牲をだしたのち帝国軍に討伐された。

昨夜友と酒場にて話していた姿が目撃されていて帝国軍に聴収されたが、たまたま偶然再会しただけだと話した。友からもらった『種』のことは言わなかった。幸い帝国は友の情報はすでに確認済みだったようで、冒険者は軽い聴収のみですぐに解放された。

冒険者には友の豹変について確信めいたものを感じていた。帝国軍の取り調べを受けたその足で教会へと向かい友のこと、『種』のことを話した。


「なぜ冒険者は帝国軍の聴収で話さず、教会に話したのですか?」


とても長いライズ大司教の前振りが話終わり。結局『不適合者』が何なのかがわからずじまいなんだけど。まさかこれから話が続くのだろうか。


「帝国軍はうわさが絶えませんからね。冒険者の方も眉唾物な情報でもありますが、身の危険を感じてしまったのかもしれません。教会も全部が全部奇麗というわけではありませんが世間体は良くしていますから、そういう意味では教会が頼りやすかったのかもしれませんね」


ようは教会は帝国と同じくらい後ろめたいことをしていると。大司教さまがそんなこと言っていいのかね?帝国がどれくらい悪いイメージあるのか知らないけどさ。


「そして続きなのですが。どこまで話しましたでしょうか。ああ、教会へ冒険者がやってきたところでしたね。冒険者はまず」

「ええい!話が長い!要約だけ話をさんか!」


ディフィニア!ついに、やっと言ってくれたのか。

どの世界でもやはり年寄りの話は長いのは共通している。

わたしの足はもう限界を超えている。宿まで歩いて帰る気力もありません。帰ったらノルンちゃんにマッサージをしてもらおう。してもらったことないけどノルンちゃんならできる気がする。ディフィニア?論外だよ。絶対へんなとこ触ってくるから、癒されるところか逆に疲れる。


「おお、これはすいません。冒険者により持ち込まれた話と『種』を教会は調べました。結果として『種』について詳しいことは分かりませんでした。先程言いましたように『不適合者』の治療についても進捗はなし。『不適合者』と『種』の情報を広め注意喚起をすることしかできていないのです」

「しかし、こ奴のように、金に困った者や力を求めるものいくら注意を促そうが無駄であるということじゃな」

「ディフィニア殿の言う通りです。被害は減るどころか増加傾向にあります」


飲むだけで簡単に力が手に入る。副作用が分かっていても、それに縋りたい者は多くいるんだろうな。

そうして『種』を飲んだなれの果てが目の前のこの男か。


「そして飲んだが最後。手の施しようがなく、もう彼らを救える手段は死のみ」

えーと。つまりあれですか?ライズ大司教は致死率100%の『不適合者』の治療を、わたしにしろと言っているんでしょ。

「さあアキ様。この者をお救いください」


え、救うってなに?さっき自分で手段は死のみって言ってたじゃん。わたしに殺せとおっしゃているの。

バカなの。この世界の専門家たちが調べたうえで治療不可能で殺すしかありませんって相手を、治癒魔法初心者のわたしに治せるわけないじゃん。

さっき部屋を出る前に言っていた認める認めないって件なんでしょ。そもそもなんの話なのそれ。当事者への説明が不十分すぎるよ。


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