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第二百二十九章 最強をこの手に

ほ、ほら、感想欄見たらなんかもう解説とかされてるし、別に続き書かなくても大丈夫かなって

いえ、すみません! ただオチまで書いたら気が抜けちゃっただけです!

 邪神との、長く、苦しい戦いの末……。

 いくつかの計算違いはあったものの、ただ一人の犠牲者も出ることはなく、邪神は完全に討伐された。


 そして……。

 その、最大の功労者であるはずの俺は、



「それじゃ、そーま。キリキリ吐いてもらうからね!!」



 なぜか仲間たちに取り囲まれ、その中心で正座をさせられていた。


 い、いや、おかしいよな、これ!

 さっきまでめっちゃくちゃ感動的な流れだったのに、どうしてこうなった!


「まず、そーま。どうしてわたしたちが怒ってるか、分かってるよね?」


 そんな俺の内心とは裏腹に、目を吊り上げ、肩を怒らせ、腕組みまでして怒りをあらわにしている真希が、俺に詰問する。

 正直怖いので、俺は素直に答えた。


「そりゃ、邪神をカンスト出来なかったから……」

「そ、ん、な、わ、け、な、い、で、しょ!!」


 俺の回答に、真希はさらに怒りを燃やして詰め寄ってくると、


「わたしが説明してほしいのは、これ!」


 俺が手に持った弦楽器、いや、砂竜剣『リュート ディズ・アスター』を指さして、



「――なんで……なんで邪神が、楽器になっちゃったのかってことだよ!!」



 真っ赤な顔をして、そう叫んだのだった。





 何を今さら、という思いでいっぱいではあったが、意外にもほかの仲間たちも全員が聞きたそうにしていたため、もう一度初めから説明することになった。


 言うまでもないとは思うが、邪神を弦楽器に変えたのは、邪神大戦映像記録にも出てきた、人を武器に変える禁断のアイテム『竜の秘宝』の力だ。


 この竜の秘宝はゲームでは敵キャラに使うことなど出来なかったし、味方NPCに使うことだって一筋縄ではいかなかった。

 竜の秘宝の発動条件は、「触れながら変化したい武器名と自分の名前を口にする」ことなので、武器化をしてほしければ、通常はNPCキャラの友好度を上げ、武器になってもらえるように頼み込むしかない。


 ただし、竜の秘宝で変化させられる武器の候補は多岐にわたる。

 剣や槍、斧などのスタンダードな武器のほか、手裏剣やダーツ、ギャルのパンティーなどの投擲系の武器。

 それから……ハーモニカやギター、ハープやピアニカ、それに「リュート」などの楽器まで。


 それを覚えていた俺は、邪神大戦映像記録の最終話を見た時、心の底から驚いた。

 邪神が、とんでもない名前のスキルを使っていたからだ。



 ……そのスキルというのが、復活スキル「アブソ『リュート ディズ・アスター』」。



 すなわち、「竜の秘宝の候補武器の名前」+「自分自身の名前」という竜の秘宝の発動キーワードを内蔵した、邪神の奥の手である。


 竜の秘宝の発動条件は「竜の秘宝に触れている」状態で「竜の秘宝の候補武器の名前」+「自分自身の名前」を口にすること。

 リュートより前のアブソ部分は不要ではあるが、キーワードを口にしさえすれば、その前に余計な言葉がついていても当然問題はない。

 そこで俺は、邪神が「アブソリュート ディズ・アスター」を発動した時に竜の秘宝を押し付けることが出来れば、邪神を武器に出来るのではないか、と思いついたのだ。


 普通に考えれば、敵キャラとして設定されたディズ・アスターを武器化なんて出来るはずがない。

 いや、仮に出来たとしても、少なくともゲーム中では敵に竜の秘宝の発動キーワードを言わせる手段がなく、その真偽は分からなかった。

 ただ、俺には一応勝算があった。


 それが、邪神大戦映像記録に出てきたライバルキャラ、リヒター。

 こいつは人間ではなく、モンスター。

 それも、猫耳猫終盤のダンジョンに出てくるアークデーモンというボスキャラクターだ


 リヒターはモンスターであるにもかかわらず、魔王に反旗を翻し、勇者アレクスの手助けをして、最終的には竜の秘宝を使って『騎士剣リヒター』へと姿を変え、アレクスたちを勝利に導くことになる。


 この世界は、猫耳猫の世界を出来るだけ矛盾が生まれないように再現している。

 ならば、ゲームそのものならともかく、この世界での仕様なら邪神を武器に変えられる可能性もゼロではない、と思ったのだ。



 もちろん、それでもこれは分の悪い賭けで、大きな博打になる。

 ただ、その分の悪さを呑み込んでも挑戦したくなるような、大きなメリットがこの計画にはあった。


 まず一つは、これがうまくいけば、邪神を本当の意味で倒すことが出来るだろう、ということ。


 邪神は殺しても何度でも復活するし、一度食らった攻撃に対しては耐性がつく。

 ただ、耐性が増えるのは死んで復活した後。

 殺すことなく、竜の秘宝で武器にするだけなら、復活はされないはずだ。



 そして、俺の心を大きく揺らしたもう一つの利点が、竜の秘宝の本来の役割。



 ――つまり、邪神を使って武器を作れば、きっと強い武器が出来るんじゃないか、という願望だった。



 通称『砂竜剣』と呼ばれる竜の秘宝で作った武器は、攻撃力こそ固定値となるが、竜の秘宝を使ったキャラクターの能力値の何割かが能力値補正につく。

 もし、邪神を倒し続けてその能力値をカンスト級にまで高めれば、当然出来上がった砂竜剣も驚異的な強さの武器に、まさに『最強』の名を冠するにふさわしい武器になるだろう。




「……まあ、その場合の最大の懸念は、ミツキが指摘してくれた通りだな。

 仮に邪神がカンストした場合、消滅したり、能力値が反転して弱くなってしまう可能性もある。

 その場合は最強の武器が作れなくて残念なことになるなと……」

「ちょ、ちょっと待って下さい! 私はそんな事は言っていません!」


 まるで「巻き込まれてはたまらない」とばかりに口をはさむミツキ。


 いや、しっかり言っていたと思うんだけど……。

 俺が首を傾げていると、焦ったような口調でミツキが言葉を続ける。


「い、いえ、今はそんな事はいいんです。

 それより、そこまでの話を聞いて確かめたい事があるのですが……」

「確かめたい、こと?」

「は、はい。そんな事はあるはずないと、気のせい、であるとは、思うのですが……」


 妙に歯切れの悪い口調で、ミツキはそこで一度言葉を切ると、彼女にしてはめずらしい、祈るような、ともすれば縋るようなともとれる口調で、問いかけた。



「――もしかして、武器を作る事を考えなければ、邪神を倒すのは一度だけで良かった、のでは?」



 身構えていた割には当たり前の質問で、ホッとする。

 俺はほがらかに答えた。



「え? うん。そりゃもちろん、そうだけど」



 邪神を倒すだけなら『アブソリュート ディズ・アスター』を使った瞬間に竜の秘宝を押し付ければいいだけなので、その前に何度も倒してわざわざ邪神を強くするなんて、損はあっても得なんて何もない。

 そこは確かに、俺にとっても悩みどころだったのだ。


「いやぁ、俺も邪神は出来るだけ強い武器にしたかったんだけどさぁ。

 邪神を倒せば倒すほど、失敗した時のリスクは大きくなるから躊躇ってはいたんだよ。

 でも、そこでミツキが、キリッと『世界の命運を決める我儘、いいではないですか』って言ってくれて、みんなも応援するって言ってくれてさ!

 そのおかげで俺も覚悟を決められて、ほんと背中を押してくれたミツキやみんなには感謝の言葉もないよ。

 いや、ほんと、お前が、お前たちが俺の翼だ……って、あ、あれ?」


 気付くとなぜか、ミツキはその場にうずくまって耳を伏せて、「あぁぁ……。私は、私は何て事を……。あぁぁ……」とゾンビのようにうめいていた。


「後生だ。もう、やめてやってくれ」

「そーまのためにあれだけ必死になってたのに、これじゃあね」


 サザーンと真希がその前に立ち、俺を止めてくる。

 二人の視線は厳しく、とても納得をしたようには見えない。


「え、ええぇぇぇ……」


 な、なぜだろう。

 ちゃんと説明をしたはずなのに、みんなの俺を見る視線がドンドン厳しさを増していっている気がする。


 ちらりと横を見ると、イーナはどこにショックなことがあったのか口を半開きにして魂が抜けている状態だし、レイラはうつむいてぶつぶつと何かを言っていて非常に怖い。



 ――だが!



 だが、今はそんな俺にも、絶対の味方がいる。


「リンゴ! リンゴなら、分かってくれるよな!」


 これから先十年は何があっても俺のことを甘やかすという決意をしてくれた、俺にとっての心のオアシス、リンゴ!


「…ソ、ソー、マ」


 リンゴは、無表情な顔を必死に動かして、笑みのような形を作ろうとして、何度も、何度も、失敗して、そして……。



 ――ポカッ!



「え? えぇっ?」


 俺の頭に、涙目で猫パンチを繰り出してきた!


「い、いたっ! あ、いや、別に痛くはないけど、いたっ!」


 リンゴだって本気ではないし、今の俺のステータスなら当然ダメージはない。

 ただ、突然のリンゴの心変わりに、俺は動揺するしかない。


「いや、これを受け入れられたら天使ってレベルじゃないだろ」

「むしろそーまは全力で殴られなかっただけ感謝するべきだと思う」


 ふたたび俺のことをチクチクと刺してくるサザーン真希コンビ。

 そこに追い打ちをかけるように、


「ちゃ、ちゃんと話してくれたら、私は協力したのに……」


 と暗い目でこっちを見てきて、


「そう、ですね。最後は随分と危なかったようですが」


 そこに、やっと少しだけ回復した様子のミツキまで加わってきた。


「た、確かにタイミングはやばかったけどさ……」


 邪神が復活する直前、俺は竜の秘宝を持って必死に手を伸ばした。

 何とか間に合ってよかったが、あのタイミングが一秒でも遅かったら邪神は武器になることなく復活してしまったかもしれない。


「で、でも、一応保険はかけといたんだぜ。

 くまの片割れに竜の秘宝を渡して、いざという時は俺の代わりに邪神にぶつけてもらおうと思って」


 俺がそう言うと、みんなの視線がくまに集中する。


「……ふぅーん? く、ま?」


 真希の言葉に、さっきまでそこで遊んでいたくまが、慌てて竜の秘宝を背中に隠す。

 だが、悲しいほどにバレバレだった。


「……はぁ。まあ、いいでしょう」


 その緊迫した空気を崩したのは、意外にも一番ダメージを受けていた様子のミツキだった。

 どこか憑き物の取れたような顔で、彼女は言う。


「結果良ければ、という言葉はあまり好きではありませんが、実際に被害は出なかった。

 貴方は、誰一人犠牲にする事なく、邪神を討ち取ったのですから。

 ……お疲れ様です。良く、やり遂げましたね」

「ミツキ……」


 邪神を倒してから初めて聞いた素直な労いの言葉に、胸がじーんとなる。

 あと反射的に「カンストまでは届かなかったけどな」という言葉も口に出そうになったが、俺の第六感が口にしたら怒られることになる、と告げてきたので、口にせずに呑み込んだ。


「あとは、他の人達への説明ですが……」


 ミツキが耳を群衆の方に向けると、そこからは鳴りやまない歓声が聞こえてくる。


「……どうやら向こうでは、貴方がそのリュートに邪神を封じた、という事になっているようですね」

「あ、あれ? 俺、最強の武器ゲットしたって言ったのに?」


 あの言葉はどう処理されたのか、俺が首を傾げていると、ミツキは妙に遠い目をした。


「……普通の人は、邪神を武器にしたなんて、想像も出来ませんからね。

 現実と折り合いをつければ、そのような結論になったのでしょう」


 俺にはよく分からないが、そういう話なのだろうか。

 真希も納得出来ないようで、


「わ、分からなくもないけど、いいの、それ!」


 と食ってかかるが、


「良くはありませんが……。言えますか、貴女は。本当の事を」


 ミツキにじとっとした目を向けられると、すぐに黙り込んでしまった。

 それを確かめてから、ミツキがパンパン、と手を打ち鳴らす。


「とにかく、これで邪神の脅威は去りました。

 言いたい事は……多々ありますが、無事に終わりです。

 ……ただ、次からは何かをやる前には絶対に、きちんと私達に説明してもらいたいものですが」


 きちんとまとめると同時に、鋭い眼光で俺に釘を刺すのも忘れない。

 如才ないミツキに、俺は苦笑いを返すしかない。

 でも、それは杞憂っていうものだ。


「は、はは。大丈夫だって、しばらくはミツキに止められるような、そんな大層なことはやらない。

 今はただ、一刻も早く、街に戻りたいなって思ってるだけだよ」

「ふふ……。流石の貴方も、あの戦いには疲れましたか」

「もちろん、それもある。それに……」


 俺は誇らしげに今回の戦利品、最強の武器であるリュートを撫でて……。



「――この『リュート ディズ・アスター』を早く合成しなきゃいけないし、さ」



 俺の言葉から、一瞬の間があって、


「だから、そういうのがダメなんだよぉおおおお!!」


 直後に怒り狂ったサザーンをはじめとした仲間たちに、俺はこっぴどく怒られることになったのだった。






 ……残念ながら、仲間たちの猛抗議によってリュートの合成は無期延期となった。


 いや、まあミツキたちの言ってることも分からなくはない。

 十中八九大丈夫だとは思うが、合成をきっかけに邪神がよみがえったりしたら大変だし。


 ただ、この武器は武器種としては剣になるが、あまり扱いやすい部類ではないし、『リュート ディズ・アスター』というのも言いづらい。


 あ、いや、まあ、出来上がった砂竜剣の名前は「武器種+ファーストネーム」になるのが通例なので、実は『リュート ディズ』か『リュート アスター』なのかもしれないが、メニューを開けないこの世界では確認しようもない。

 ただ、そこはもう気分の問題だが、やっぱりお気に入りの武器なら名前にもこだわりたいというのがゲーマーの人情なのだ。


 アルティヘイトと合成すれば「俺以外に扱えない」という特性がついてほかの人に悪用される危険もなくなるし、何より、遠距離無効の特性と合わせて、「光と闇が合わさって最強に見える!」と言ってみたかったのだが、あきらめるほかはないようだ。


 まあ、装備品を外れなくするテクニックは猫耳猫には当然存在しているし、このリュートさえあれば俺のステータスには補正がかかり、復活した邪神並みになる。

 遠距離無効にこだわらずとも、どんな攻撃が来てもダメージを負うことすらないだろう。


「そうだ。せっかくだからちょっと、試し切りさせてくれよ」


 俺が言うと、なぜかミツキが少し困ったような顔をした。


「良いですが、味方に当てないように気を付けて下さいね」

「し、信用ないなぁ……」


 文句を言いながらも、俺は目星をつけていた大きな岩のところまで進む。

 そこで俺は、リュートを構え……ることはせず、代わりに右手で『真・不知火』を抜く。


「そちら、を試すのですか?」


 意外そうなミツキが言うが、そういうものなのだ。


「砂竜剣の攻撃力は、固定値だからな。

 どんなに強いキャラを武器にしても攻撃力はそんなに高くならない」


 それでも筋力に補正がかかるため、強い砂竜剣なら単体でも最強武器候補となるだけの威力を発揮する。

 だが、もしその強さを最大限に発揮するためには……。


「バフと違って、この上昇補正は素手の攻撃力にも乗るんだ。

 だから、左手に砂竜剣を持って筋力が強化された状態で真・不知火を使うと……」


 言いながら、俺は真・不知火を大岩に向ける。


 おそらく、この邪神の砂竜剣を持った状態の真・不知火こそが、真の最強武器。

 まあ正直に言えば、ゲームに存在するどんな強敵だって、この武器の切れ味を証明するには足りないだろう。


 こんな岩を斬ったところで何の証明になる訳でもないが、ただ、力を込めずに岩に突き刺さっていくなら、それはこの武器の力の一端は見せられるはずだ。

 俺は無造作に真・不知火を大岩に向かって突き出すと、予想通り、何の抵抗もなく刃が岩に吸い込まれ……。


「ほら、このとお――」





 ――シュバォオオオオオン!!




「………………え?」


 今まで生きていた中で一度も聞いたことのないような説明しようのない音を立てて、大岩が跡形もなく消し飛んだ。


 いや、本当に消し飛んだのだ。

 爆発でも、破裂でもなく、消滅。

 派手な音の割に、岩は飛び散ることすらなく、文字通り塵一つ残さず消滅していた。


「そ、そーま、それ……」


 その様子を見ていた仲間たちが、俺を危険人物でも見るような目で見るのが分かった。


「い、いや、違うんだ! これは何かのまちが……」


 弁解しようと振り向いた瞬間、一緒に動いた刀からブォオオオオオオン! という何かの咆哮のような音がして、そこから風が吹き荒れる。


 ゲームにはなかった演出だが、あまりにも強すぎる攻撃力が風圧を生んだらしい。

 どんな威力だよ!


「あ、いや、だから……」


 その様子に、仲間たちはずざざざざーっと一斉に俺から距離を取る。

 唯一動かなかったのはイーナだったのだが、特に肝が据わっているとかではなく、その場で腰を抜かし、「はわ、はわわ……」と怯えたハムスターのようになって震えている。


 こうなってはもう、弁解のしようもない。


「く、れ、ぐ、れ、も。私達のいる所では使わないようにして下さいね」

「……はい」


 冷たい目をしたミツキの言葉に、俺は黙ってうなずき、おとなしく不知火を鞘にしまうしかなかったのだった。




「では、行きましょうか」


 俺が「最強って孤独なものなんだな」とひとりごちていると、ようやく落ち着いたイーナを見たミツキが、移動を促す。


「あ、ちょっと待って!」


 ただ、俺には最後に一つ、どうしてもやっておかなくてはならないことがある。

 ミツキに待ったをかけると、俺はリュートを地面に置いた。


 死闘を繰り広げた相手とはいえ、相応の敬意を払うことは必要だ。

 俺は地面に転がったリュートの前に立って手を合わせると、感謝の言葉を口にした。


「砂竜剣を、強くするために、戦ってくれて、ありがとう。

 砂竜剣を、育てるために、たくさん死んでくれて、ありがとう。

 ……おかげで、こんなに強い武器が出来たよ」


 そう言って、俺がリュートを持ち直すと、横にいたミツキが呆れたように口を開く。


「……まったく。貴方も存外、性格が悪い」

「言ったろ。猫耳猫プレイヤーは、執念深いんだ」


 それでも、仲間を殺した遺恨はこれでチャラにしよう。


「お前には、これから散々役に立ってもらわないといけないしな」


 ポンポン、とリュートの側面を叩く。

 流石に楽器だけあってか、何だかいい音がした。


「貴方は一体、これ以上何と戦うつもりなんですか」


 ミツキが呆れたような、でもどこかほほえましいものを見るような目で、俺を見ていた。

 その言葉に対する答えは、決まっている。


「そりゃ、まだ見たことのない何かと、だよ。

 まだこの世界には、ゲームで行ったことのない、色んな場所があるはずだしな」


 俺の返答に、ミツキは虚を突かれたように固まってしまう。

 それを代弁するように、イーナがおずおずと問いかけてきた。


「で、でも……。ソーマさんはもう、元の世界に帰っちゃう、んですよね」


 答えを予想していながらも、どこかで期待するような、その声音。

 俺はその問いかけに……。



「ああ。もちろん帰るつもりだ」



 一瞬たりとも迷うことなく、そう答えた。


「そ、そう、ですよね。だったら……」


 落胆を隠し切れずに、うつむき気味にそう答えるイーナの声に、かぶせるように。


「でも、言っただろ。――俺は、必ず戻ってくる」


 俺は力強く、その言葉を口にした。

 最初にその決意をしたのは巻き戻り前だが、巻き戻りのあとにも、みんなにその意志は伝えている。


 だけど、今この場で、もう一度みんなに話しておきたかった。

 その言葉が嘘ではないと、俺が本気なのだと、みんなに伝えたかったから。


「この世界には、俺のまだ見たことのないモンスターや、見たこともないダンジョン、見たことのないアイテムが、まだまだたくさん眠っているはずなんだ!

 ……だから、さ」


 言いながら、俺は仲間たちを見渡す。

 リンゴ、ミツキ、真希、サザーン、イーナ、レイラ、くま


 俺の大切な、かけがえのない仲間たち。

 ずっと一緒にいたいと素直に思える、俺の大切な人たち。


 帰るのをあきらめるつもりはない。

 でもだからと言って、俺はこいつらと別れるつもりなんて全くなかった。


「ここにいるみんなと、仲間たちと一緒に、まだ見たことのない何かを探して、冒険していく。

 それが、俺の新しい夢なんだ!!」


 世界にとっての最大の危機、最大の敵だった邪神は倒れ、この世界は平和になった。


 ……でも、それで終わりじゃない。

 むしろここが始まり。


 これからも、俺たちの冒険は、戦いは、ずっとずっと、続いていく。

 だって……。



「――俺はようやく、登り始めたばかりだからな。

 この果てしなく遠い、猫耳猫坂を、さ!!」




くぅ~疲れましたw これにて連続更新終了です!



正直ここで完結でもいいかなとも思ったのですが、一応終わりまであと三話程度を考えています

が、実はこの先はまだ頭の中でぼんやりと考えているだけなので、これから少し休んで、きちんと書き溜めて、積みゲーを消化して、大体形が出来てからまた一気に更新する予定です


では、ここまでお付き合い頂きありがとうございました!

大丈夫! すぐ帰ってきますから! きっとすぐに……きっと……

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この時のためだけにわざわざ一年前に連載を始め、この一週間で何とか二十三話まででっちあげた渾身作です!
二重勇者はすごいです! ~魔王を倒して現代日本に戻ってからたくさんのスキルを覚えたけど、それ全部異世界で習得済みだからもう遅い~
ネタで始めたのになぜかその後も連載継続してもう六十話超えました
― 新着の感想 ―
[一言] そのリュート、インテリジェンス・ウェポンになったりしませんかねえ……
[一言]   ( ゜д゜)  _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_    \/    /      ̄ ̄ ̄     ( ゜д゜ ) _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_    \/    /      ̄ ̄ ̄
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