付き合う。
「加賀君は、藤堂さんと付き合いそうだね。」
何言ってんだ、こいつ。
高校入学して入学式が終わり体育館から自分のクラスについて初めて言われた言葉が、コレ。
「あ、あー、気にしないで。予言ちゃんは、少しおかしいから。」
横から入ってきた“予言ちゃん”と言われた奴の友達と思われる奴は、通称“予言ちゃん”の口を両手で塞いだ。
「俺、隣りのクラスの斉藤隆司。よろしくな。」
こいつは、まともらしい。
「俺は、加賀泰司。よろしく。」
通称“予言ちゃん”は、口を塞がれつつもモガモガと何かを言っていた。
* * *
こいつ等の話を聞くと、なんだか不思議な話ばっかりだ。
予言ちゃんは、予言の当たる確率が100%という話に。
そのお陰で今日は、交通事故に遭うはずのバスに乗らなかったりと。
なんかうさん臭い。
「大体、藤堂って誰だよ?」
「さあ?わからない。」
ムカつく返事だ。
そこで鐘がなった。
「あ、俺、自分のクラス戻るわ。」
斉藤が去った。
俺と予言ちゃんは、隣りの席。
どうしよう。
斉藤なしで予言ちゃんと話せる自信がない。
予言ちゃんは、はっきり言って第一印象最悪だ。
意味分からん事言うし、無愛想だし。
ガラガラ
クラスの担任らしき眼鏡の男が、教室に入ってきた。
「はーい、席について!」
* * *
それから担任の自己紹介、クラスの皆の自己紹介が終わった頃。
ガラガラ
「お、遅れて、すみません!」
一人の女子生徒が、教室に入ってきた。
きっと不自然に一つ空いてる席の子だろう。
にしても、初日から遅刻ってどんな奴だよ…
「藤堂里奈さんだね?」
「はい。」
その子の顔を見た。
一目惚れだった。
「乗っていたバスが事故に遭ってしまって…」
* * *
「俺と藤堂って、いつごろ付き合うの?」
入学式から一週間経った。
学校にも慣れ。
予言ちゃんにも慣れた。
「アレ?占いとか信じないんじゃなかったっけ?」
朝の教室。
予言ちゃんは俺の質問にそう答えた。
確かに俺は、占いとか信じない奴“だった”。
だけど、予言ちゃんと一緒に居ればそんな奴も変わっちまう。
「別にいいだろ。教えてくれたって…」
「うーん、どうだろう?いつ頃…うーん、わかんないや。」
一週間経って予言ちゃんについて分かったこと。
それは、絶対に当たる予言をする。
逆に“絶対に”当たる予言しか他言しないらしい。
「加賀君、藤堂さんに惹かれてきたの?」
予言ちゃんは、なんでもお見通しの気がしてムカつく。
「いや、別に。」
惹かれてる。
けど、予言ちゃんへの抵抗の言葉が出る。
『藤堂さんと付き合いそうだね。』
その予言とは裏腹に俺と藤堂は、全く接点はない。
予言ちゃんは、いつ頃かは予言してないから一年後二年後、いや、もしかしたら大人になってからかもしれない。
予言ちゃんは、少し黙り込んでこう言った。
「あ、加賀君。明日は、絶対に休まない方がいいよ。」
まるで何かを思い出したかのように予言ちゃんは言った。
* * *
翌日。
台風が上陸したために学校は、休みになったらしい。
俺は、馬鹿か?
俺は、暴風の影響で外に出れなくなった校舎にいる。
一応、教師は一人二人居て、台風対策をしていた。
その教師二人に『今は、暴風で外に出るのは危ないから風が弱くなってから帰りなさい。』と言われ、一人自分の教室で自分の席から窓の外の様子を見ている。
『明日は、絶対に休まない方がいいよ。』
昨日、予言ちゃんに言われたことを思い出した。
何が、『休まない方がいいよ。』だ?
怒りが沸き出てきた時。
ガラガラ
「え、あ、加賀君も!?」
藤堂さんだった。
そこから、藤堂と俺は、本当の意味で惹かれあっていく。
その半年後、俺達は付き合い始めた。
* * *
「さよならだね。」
藤堂が、引っ越す日。
俺は学校をさぼって藤堂の見送りにきた。
「遠くに行っても忘れないでね。」
涙目で藤堂は言った。
藤堂の親は車で待ってくれている。
「また会えるよ。」
俺は言った。
「予言ちゃんの予言よりは、頼りないけど、コレは“俺の予感”。」
しばらく話した後、藤堂は、親の車に乗った。
「いつになるか分かんないけど、いつか必ず迎えに行くから!その時まで、俺のこと忘れんなよ!」
去り行く藤堂の背中に喉がはち切れそうなくらい大きな声で言った。
「うん、待ってる。」
藤堂は、枯れた声でそう答えた。
* * *
あの台風の次の日。
予言ちゃんからこう告げられた。
「加賀君と藤堂さんは、将来一緒にいそう。」
「何それ?予言?」
「んー、いや、勘。」
俺の学校にいる予言ちゃん。
その予言は今のところ百発百中。