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おばあちゃんのえんがわ

作者: 七瀬みる
掲載日:2026/08/26

 ピーポー

 ピーポー


 たいへん、たいへん。


 きゅうきゅう車が、おばあちゃんを、つれてっちゃった。


 絵本でみたことある、きゅうきゅう車。

 かっこいい、はたらくじどう車。


 でも、ほんとにお家にくると、ちょっとこわかった。


 マスクをつけた人たちが、おばあちゃんのまわりにあつまって、ムセンでおはなししていたよ。

 それから、おばあちゃんを、みどりいろの"たんか"にのせて、はこんでったの。


 ピーポー

 ピーポー


 おばあちゃん、行っちゃった。


 おうちのなかは、なんだか、からっぽ。


 おばあちゃんの、ごはんの席も、からっぽ。

 テレビをみてた、ざいすも、からっぽ。

 おふとんしいてた、タタミのおへやも、からっぽだよ。


 そしてね。


 おばあちゃんが、いつもにこにこすわってた、「えんがわ」だって、からっぽになっちゃったんだ。


  *


 えんがわって、知ってる?


 おへやと、おにわの、あいだにある、ろうかみたいなばしょ。

 ちょっとモノをおいたり、ひとやすみしたり、おしゃべりしたり。いろんなことが、できるんだ。


 春、おにわのお花を、ながめたり。

 あつい夏には、夕すずみ。スイカを食べたり、たなばたの笹をかざったり。

 秋には、お月見、おだんごたべて。

 冬だって、しぶ柿をつるしたり、おもちを干したり。はれた日なら、ひなたぼっこだって、できるんだ。


 むかしのお家には、そんな、えんがわが、よくあったんだ。

 いまのお家からは、ほとんど、なくなっちゃったけどね。


 もちろん、こうたのお家にだって、さいしょは、そんなの、なかったよ。

 パパが、ろーんで買った、たてうり住宅。

 タタミのおへやは、あったけど、はきだし窓のそとは、すぐ、おにわ。

 むかしながらのえんがわなんて、やっぱり、なかった。


 でも、ひっこしのとき、おばあちゃんが、それを、ざんねんがってね。


「いいへやだけど、これで、えんがわさえ、あればねぇ」


 そしたら、そのころ、まだ元気だったおじいちゃんが、「よし」って、いってね。

 しりあいの大工さんに、木をわけてもらって、トントン、カンカン――つくっちゃったんだ。


「えんがわ」っていうより、「えんだい」っていうやつだったけどね。


 タタミの床に、高さをあわせた、おおきなベンチみたいな、木の台さ。

 おにわにおいて、はきだし窓にくっつけたら、じゅうぶん、えんがわがわりになったんだ。

 ただでさえ、せまい、おにわは、もっとせまくなっちゃったけどね。


 それでも、おばあちゃんは、とっても、よろこんだんだ。


 おざぶとんしいて、お茶をのんで、にこにこ、おにわをながめたり。ご近所さんとおしゃべりしたり。


 あんまりさむすぎたり、あつすぎたりしたら、ダメだけど……


 ちょうど気こうのいいときには、そこが、おばあちゃんの、してい席になったんだ。


  *


 おばあちゃん、だけじゃ、ないよ。

 そこは、こうたにとっても、してい席。


 えんがわで、おばあちゃんのとなりにねっころがったり、すわったり。

 お背中にもたれたりだって、するんだよ。

 おばあちゃんの背中は、こう薬のにおいがするよ。


 だいすきな、おばあちゃん。


 こうたは、その日、あったことを、おはなしするの。

 おえかき、おゆうぎ、つみ木、お砂場……ようちえんで、あそんだこととか。

 ほかにも、いろいろ。

 おばあちゃんは、いつも、にこにこ、きいてくれるの。


 そのおばあちゃんが、いないの。

 もう、三日、いないの。


 えんがわは、からっぽ。

 おざぶとんも、からっぽ。


 ママもなんだか、ぼーっとしてるの。

 いまも、おせんたくを、とりこんで、タタミのうえにひろげたまんま、手がとまってるよ。


 ねえ、ママ。

 ママも、さみしいんだね。


 こうたは、ごろん。

 えんがわに、ひとりで、ねっころがったよ。


 おばあちゃんのいない、えんがわは、がらんとして、ちょっと、ひろすぎ。


 おばあちゃん、どうしちゃったんだよう。

 はやく、かえってきてよう。

 ピーピー豆が、実をつけてるよ。

 また、ピーピー、ならしてよ。


 くすん、くすん。


 こうたは、べそをかいてしまったの。


  *


 ぴーぴー

 ぴーぴー


 ふと、ふえの音が、きこえたの。

 かおをあげると、えんがわのいつものばしょに、おばあちゃん。

 いつものおざぶにすわって、ピーピー豆を、ならしてる。


「おばあちゃん!」


 こうたは、おきて、とびついたよ。

 そしたら、おばあちゃん、ちょっと、よろっとしたの。


「おーとっと」


 だけど、こうたはかまわず、おばあちゃんに、すりすり。


「いつかえってきたの? どこいってたんだよう」


 おばあちゃんは、いつものにこにこ顔で、こうたのあたまをなでなでしたよ。


「いつだろうねえ。へんだねえ。さっきまで、病院でおねんねしてたんだけどねえ。いつのまにかここにいたよ」


「そうなんだー」


 こうたは、べつに、へんだとも思わなかったの。

 だって、おばあちゃんが、よそにお泊まりして、おうちにいないなんて、そっちのほうが、へんだもの。


 そんなことより――


「おばあちゃん、ふえ、ふえ」


 こうたは、おばあちゃんのピーピー豆に、手をのばしたの。


 ピーピー豆。

 べつ名、カラスノエンドウ。


 そのへんにはえてる、ただの草。

 ようちえんにも、道ばたにも、おうちのおにわにだってある、ふつうの、ざっ草。


 でも、四月、五月になると、ちっちゃな"さや"にはいった実をつけるの。

 そのさやを、おばあちゃんが、チョイチョイってすると、ピーピー音のでる、ふえになるんだ。


 こうたは、さいしょ、うまくならせなかったけど、おばあちゃんにおしえてもらって、ちからいっぱい「ふうーっ!」ってしたら、

 ピーッ!

 きれいに、音がでるようになったんだよ。


 でも、きょうのおばあちゃんは、ちょっと、いじわる。


「かして、かして」


 こうたが手をのばしたのに、おばあちゃんったら、ないない、しちゃって、


「だめだめ、これは、おばあちゃんの。こうた、じぶんで、つくってごらん」


 こうたは、くちびるをとがらせて、うつむいたよ。


 だって、じぶんじゃ、うまくつくれないんだもの。

 いつも、おばあちゃんに、つくってもらうんだもの。


 なのに、きょうは、


「こうたなら、できる」


 そういって、つくってくれないの。

 

「おしえたげるから、やってみな」


 そういって、てつだってもくれないの。


 こうたはしぶしぶ、おにわにはえてるピーピー豆を、ひとつ、もぎとったよ。


 がんばって、いっしょうけんめい、つくってみたの。


 でも、やっぱり、なかなか、うまく、いかないの。


 さいしょは、ぶちって、ヘタをぜんぶ切っちゃった。

 はしっこをちょっとのこして、糸をつないでおかないといけないのに。


 こうたは、半べそかいて、おばあちゃんを見あげたよ。

 でも、おばあちゃんは、


「あらあら、もっかいだねえ」


 わらって、そういうの。


 こうたは、がんばって、ちゃれんじ、したよ。

 そしたら、こんどは、うまくいったの。


 ちぎったヘタから、ほそい糸みたいのが、さやの合わせ目に、つながってるの。

 それをそうっとひっぱると、ぴーって糸がはずれて、さやの背中が、パクッとひらくんだよ。


 とちゅうまで、うまくいったの。

 おばあちゃんも、ほめてくれたんだ。


「うまい、うまい」


 でも、とちゅうで、その糸が、ほそくなって、切れちゃった。


「むうー」


 こうたは、くちびるをとがらせて、おこった声をだしたよ。

 おばあちゃんは、わらって、


「はしっこ、つまめるかい?」 


 こうたは、さやにのこった、糸のはしっこを、つまもうとしてみたよ。

 でも、ちいさすぎて、ムリだった。

 いじってるあいだに、さやのおなかが、やぶけちゃったよ。


「ざんねん。もういっかい」


 おばあちゃんは、にこにこわらって、やっぱり、てつだってくれないの。

 こうたは、もう、なきそうだったよ。

 でも、おばあちゃんは、


「こうたなら、できる。ばあちゃんが、いなくても」


 だいすきなおばあちゃんが、そういうから、こうたは、もういっかいだけ、がんばったよ。


 そしたらねぇ……


「できたー!」


 やっと、やっと、できたんだよ。


 さいごまで、糸をひっぱったら、背中がひらいて。

 なかのおマメをぜんぶだしたら、もうかんせい。


 はじめて、ぜんぶ、ひとりで、つくった、ピーピー笛。


 こうたったら、うれしくって、ぴょんぴょんしちゃった。

 手作りのえんがわが、どしん、どしん、音をたてたよ。


「えらい、えらい。こうたは、がんばりやさんだねえ」


 おばあちゃんも、にこにこわらって、ほめてくれたの。


 こうたはとくいになって、おおいばり。


「こんなの、カンタンだもん」


「おやおや、まあまあ」


 おばあちゃんは、わらったよ。


 それから、ふたり、ピーピー豆をならしたの。


 さいしょは、こうたが、ぴーぴーぴー。


 つぎは、おばあちゃんが、ぴーぴーぴー。


 それから、どうじに、ぴーぴーぴーぴー!


 いっしょに、いっぱい、ならしたの。


 それから、顔をみあわしてね、


「ふふふーっ」


 ふたり、どうじに、わらったのさ。


  *


 ぴーぴーぴー

 ぴーぴーぴー


 そのあとも、ふたりで、たのしく、ふきまくったよ。

 そしたらねえ……

 はっと気がついたら、びっくりさ。


 ここは、いったい、どこだろう?


 こうたは、目をまんまるにしちゃったよ。


 だって、だって――


 ほら、ほら、


 雲がとぶよ、

 雲がとぶよ、


 まえから、うしろへ、びゅんびゅん、とんでいくよ。


「おばあちゃん、ぼくたち、お空を、とんでるよ!?」


 いつのまにか、こうたのお家はどこかにいっちゃって、えんがわだけが、お空にうかんでいたの。


 下は、きれいな、お花ばたけ。

 お家なんか、一けんもなくて、どこまでも、きれいな野原がつづいてるんだ。


 おばあちゃんは、とくいそうに、わらったよ。


「なあに、おじいちゃんの、つくった、えんがわだもの。これっくらい、あたりまえさね。ばあちゃん、えんがわで、いねむりしてるときは、いつだって、こうして、お空をさんぽしてたんだよ」


「えー、ずるいー」


「だから、こうして、きょうは、いっしょに、のせてやったろ?」


 おばあちゃん、からから、わらったよ。

 そうして、ピーピー豆を、ひねってね、


 ぴーーっ!


 ぎゅーん!


 おばあちゃんの合図で、空とぶえんがわ、きゅうこうか!


 こうたはびっくり、


「うわっ、うわっ!」


 おばあちゃんに、しがみついたよ。


「まだまだ、こんなもんじゃないよ」


 おばあちゃんは、にこにこしてね。

 また、ピーピー豆をふいたんだよ。

 そしたら、こんどは、


 ぎゅーん! きゅうじょうしょう!

 

 上がって、上がって――

 そのまんま、宙がえりだって、しちゃったんだ。


「すごい、すごい!」


 こうたは、もう、おおよろこびさ。

 こんなの、遊園地だって、のれないぞ!


 ぴーぴー!


 びゅん、びゅん!


 ぎゅん、ぎゅん、ぎゅーん!


 おばあちゃん、しばらく、おもいっきり、とばしてくれたんだ。


  *


「やれやれ、ちょっと、つかれたね」


 たっぷりお空であそんだあと、おばあちゃんが、そういったよ。


「豆だって、だいぶ、へなへなになっちまったよ」


 ちょっと、ひとやすみするかね。

 そういって、おばあちゃんは、下をゆびさしたんだ。


 お花ばたけのむこうに、きらきら、きれいな川が、ながれていたよ。

 川岸には、なんぼんか、背のひくい木がはえていてね、日かげが、すずしそうなんだ。


「おりるよ」


 おばあちゃんが、そういったら、えんがわは、みるみるうちに、おりていった。

 そして、すーっ――

 すべるみたいに、なんちゃくりく。

 ぴたっと、木のそばに、とまったよ。


 ざわざわー。


 川からのすずしい風が、木をゆらしたよ。

 おとなの背たけくらいの、かん木だったね。

 赤い実が、いっぱい、なっていたよ。


 そしてね。


 その木のそばに、ちいさい女の子が、ひとり、立っていたんだ。

 つぶつぶした、とうめいな赤い実を、手のひらいっぱい、あつめていてね。ときどき、ぱくぱく、食べていたよ。

 くちびるが、つやつや、赤くなっていたね。


「キョウコ、ここにいたのかい」


 おばあちゃんが、その女の子を、そうよんだよ。

 まるで、ずっとまえから、しってるみたい。


 でも、だれだろう?

 こうたは、しらないや。

 キョウコなんて、そんな子、ようちえんにも、いないよ?


(でも、なんだか、どこかで、きいた気もする、名まえだなあ……)


 こうたは、首をかしげて、その子を見たの。

 そしたら、その子は、にっこり、してね。

 赤い実を、ひとつぶ、ひとつぶ、つまんでみせて、きれいな声で、うたったんだ。


「きいちご、あまいの、すっぱいの

 あんたにひとつ、わたしにふたつ

 わたしにみっつ、あんたによっつ

 いつつに、むっつ

 とっぴん、ぱらり

 しゃん、しゃん、ぷう!」


 それでね。


 キョウコちゃん、さいごの「ぷう」で、こうたのおくちに、赤い実ひとつ、つっこんだよ。


 きらきらひかる、とうめいな、赤いきいちご。


 すっぱくって、あまくって、とっても、おいしかったよ。


 ちょっと、びっくり、したけどね。


  *


 それから、こうたは、キョウコちゃんと、あそんだんだ。


 ピーピー豆をふいたり、川の浅せで、ぱしゃぱしゃしたり。

 葉っぱのおさらに、お花のごはんをのせて、えんがわで、ままごとだってしたんだよ。


 でも、たのしい時間って、あっというまだね。


 いつのまにか、もう、夕方。

 お空が赤くなって、まわりが、くらくなってきたよ。


 かげが、地面に、ながーくのびてね。

 なんだか、かげだけ、さきに、おとなになったみたい。


「さて。ばあちゃん、そろそろ、行かなくっちゃ」


「行く? どこ行くの?」


 こうたは、そうきいたよ。


 おばあちゃんは、ふしぎな目をしてね。

 川のむこう岸を、見ていたんだ。


「かえるのさ。こうたは、いつもの家に。ばあちゃんは、あっちの家にね」


 こうたは、びっくりしちゃったよ。

 おばあちゃんが、よそのお家にかえるなんて、そんなの、へんだ。おかしいや。


 でもでも。


 おばあちゃんは、やっぱり、ふしぎな目をしてね。

 川のむこうを、見ているんだ。

 こうたのほうを、見てくれないんだ。


「ばあちゃんの家は、あっちにあるんだよ。むかしむかし、ばあちゃんの、お父ちゃんが、うまれた家さ。お父ちゃんの、お父ちゃんも、うまれた家さ。

 土間があって、かまどがあって、いろりがあって、牛も飼っていたよ。ほんものの、えんがわだって、もちろん、あった。こんな、えんだいじゃ、なくってね」


 おばあちゃんは、うっとり、そういったの。


「ばあちゃん、そこに、かえるんだよ。やっと、かえることが、できるんだよ。――ほら、もう、おむかえが、きているよ」


 見れば、むこう岸の、お花ばたけに、だれかが、いたよ。

 夕方で、うすぐらくて、かおはよく見えなかったけれど。

 くろぐろした人かげが、手をふっていたよ。

 おいで、おいでって、おばあちゃんを、よんでるのかな?


「だめ! いっちゃ、だめ!」


 こうたは、きゅうに、こわくなって、おばあちゃんに、しがみついたよ。


 おばちゃんが、「やれやれ」みたいに、わらってね。

 キョウコちゃんも、こまった顔で、こうたを見たよ。


 でも、そんなの、しらない。かまわない。

 こうたは、ひっしに、さけんだの。


「いっちゃ、だめ! おうち、かえるの! いっしょ、かえるの!」


 だって、おばあちゃん、よそのお家にかえっちゃったら、こんどは、いつ、こうたのお家にかえってくるの?


 もう、かえってこないの?


 ずっと、からっぽ、なの?


 そんなの、だめ、だめ。


 ぜったい、だめ!


「ほんものの、えんがわなんて、しらない。おばあちゃんのえんがわは、ここに、あるもん。お空をとべるえんがわだもん。そんなの、ほかに、ないんだもん!」


 そうだ!

 お空を、とべるんだ!


 こうたは、ピーピー豆を、くわえたよ。

 そして、


 ピーーーーーッ!!


 思いっきり、ならしたの。


 そしたら、やったね。

 えんがわは、三人をのせたまま、ふわっと、お空にういたんだ。


 こうたにも、そうじゅう、できたよ!


「おやおや、まあまあ」


 おばあちゃんが、わらったよ。

 夕日をあびて、金色のえがおだったよ。


「しょうがないねえ。まあ、それも、いいさ。――じゃあ、お行き! ちょうとっきゅう!」


 おばあちゃんが、川のはんたい方向をゆびさしてね。

 こうたは、ピーピー豆をならしたよ。


 ピーッ!


 そしたらね。


 雲がとんだよ。

 雲がとんだよ。


 きんいろの雲が、ひるまとは、ぎゃく方向に、いっちょくせん。

 えんがわは、もうスピードで、お家めざして、とんだんだ。

 キョウコちゃんが、きゃあきゃあわらって、はしゃいだよ。


 だれも、おっかけては、こなかった。


 むこう岸の人かげも、ちょっとふりかえってみたら、おおきく手をふって、バイバイ、してくれていたよ。


  *


 ……目がさめたら、やっぱり、夕方だったよ。


 えんがわは、もとのおにわに、ちゃんとあってね。

 こうたは、そこに、ねていたの。


 おばあちゃんは、いなかった。


 でも、こうたのおなかに、バスタオルが、のせてあってね。

 となりで、ママが、おねんね、していたよ。


「キョウコちゃん……?」


 こうたは、ないしょで、そうよんでみたよ。


 そうだよ。

 どこかで、きいたと、思ったんだ。


 キョウコって、ママの名まえじゃないか。


 ママは、うっすら、目をあけたよ。

 そして、くすくす、わらったんだ。


「こうた、すごいね。空とんじゃったね。おばあちゃん、あっちに、行けなかったね。こっちに、かえってくるしか、ないわねえ」


 そういって、こうたを、ぎゅってしたよ。

 こうたは、うふふって、わらったよ。


 病院から、おでんわがあったのは、その夜だったよ。

 それで、つぎの日、パパと、ママが、おばあちゃんを、おむかえにいったんだ。


 かえってきた、おばあちゃんは、さっそく、いつものえんがわに、すわってね。

 お茶をすすりながら、わらっていたよ。


「やれやれ、おちおち、死んでもいられないね」


 そこは、おばあちゃんの、してい席。


 五月のおひさまが、ぴかぴかしてね。

 カラスノエンドウが、風にゆれていたよ。


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― 新着の感想 ―
泣いちゃいました〜。 おばあちゃんがこうたの家に帰ってこられて良かったです。 ふつうは、あちらの家に帰ってしまうのだけれど、私は断然七瀬さまの結末の方が良いです。 ピーピー豆、知らないので、検索してみ…
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