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その弐

「ついた~」

私は大きな声でそう言うと、馬車から軽やかに降りた。ここは港町『アーロン』の中にある『冒険者ギルド』の前。

そうそう、この世界には『冒険者ギルド』というのがあって、私たちの様な『旅人』や『傭兵』、はたまた一攫千金を狙う『トレジャーハンター』などなど色んな職種が集う共同施設(?)みたいなものなの。

分かりやすくいうと、一種のハローワーク(?)みたいなものかな?というより、日雇い労働者(?)なのかな・・・ちょっとした宅配から魔獣退治。はたまた、傭兵の受付から要人の護衛など色々な依頼を受けることが出来るアンダーグラウンドの総合商社ってところなんです。勿論、そういうところだから色々な情報も入ってくるわけで・・・今回の目的はその情報の方みたい。任務とは関係ない私は、さっさと宿屋に行って旅で疲れた体を癒したいわ・・・かれこれ1週間野宿だったもんね。

ちなみに、馬車は今日から泊まる宿屋に預けてあるの。だから手持ちは背中の斧と腰だめで『エムナイン』、ベルトにはその弾倉がある位かな?

一番の軽装はアーシェ姉さんで1.5m程の棒一本のみ。まぁ、魔法が使えるから十分なんだろうけど・・・

カゲヒコさんが一番重装備。腰に刀と左肩には大きな銃。確か、『ハチキュウシキ』とか言ってたかな?更に『シグなんとか』という小さな銃(拳銃っていうらしい)を装備してるの。カゲヒコさんが言うには、この3人と馬車の荷物があれば小国位は攻め落とせるって・・・一体あなたはどこの国と戦争おっぱじめるつもりなんですか・・・

そんな私たちは・・・というか、銃を装備しているのって私たちくらいなものかな?私もカゲヒコさんに出会うまで存在すら知らなかったし・・・さっそくギルド『海の男たちの歌』という看板の付いた建物の中に入っていった。

まぁ、お約束と言うかなんと言うか、ギルドって入ると絶対酒場なのよね・・・それも昼間っから酒盛りしているし・・・でも、ギルド内では喧嘩はご法度なので、陰湿な感じはしないわ。どっちかというと陽気さが漂っている感じなのよね~

流石に港町だから海に従事している人が多いみたい。男も女も良く日に焼けているわ。

私たちは先頭をカゲヒコさん、次にアーシェ姉さん、最後は私という順でカウンターへと進み、少し高さのある椅子に座ったの。勿論、目の前にはバーテンさん、というよりマスターかな?一人しかいないし・・・

「注文は?」

「俺はエールでいい。アーシェとシャイアは?」

「私はシュエルの実のジュースを・・・」

うん、アーシェ姉さんは無難に柑橘系のジュースだね。ちょっと苦味が有るけど爽やかな喉ごしのジュースで結構人気がある。私もそれにしよっと。

「私も、同じので!!」

マスター注文を聞くと少し離れたところで用意をし、直ぐに持ってくる。寡黙なマスターだねぇ。

するとカゲヒコさんが即座に切り出す。こういう場での交渉はいつもカゲヒコさんの出番。

「最近、変わったことはないか?特に海で。」

その言葉を聞いたマスターはポーカフェイスを崩して少し嫌そうな顔をした。なんかあったみたいね。

「あんたらも例の噂を追ってきた口か?」

「例の噂?大きな音と光が海の向こうでしたとしか聞いていないが・・・」

「ならマシな方だな・・・てっきりお前さん方も『鉄の船』の噂で来たのかと思ったわ」

「鉄で出来た船ですか・・・」

アーシェ姉さんが思わず呟いたよ。私も驚いてる。だって鉄の船だよ鉄の船。絶対沈むじゃん。

「その口調だと実物はまだそこにあるんですよね?どうして乗り込んで持ってこないのですか?」

あれ?カゲヒコさんは全然驚いてない。う~ん、その船に心辺りがあるのかな?

「それはな・・・最初で調査で向かった連中が戻ってから多数死んだんだよ。死因も不明だとよ。あの屈強な連中がだぞ?それ依頼あそこの海域には誰も近づかない様になった・・・現地のものはな。」

「ということは、その『鉄の船』に向かって多数の冒険者が向かったと?」

「その通りだよ。だがな、船も危険だが厄介な奴が来ての・・・シーサーペントとその御一行が船近辺に居座っているらしい。」

「「シーサーペント!!?」」

私はアーシェ姉さんと一緒になって驚いちゃった。『シーサーペント』ですよ『シーサーペント』。体長20m以上はある海の竜・・・竜種とあって知能も高く、まさに海の王。もし目の前に現れたら一目散に逃げますね、私は。

そして、一通りマスターと話し、聞けた情報はこんな感じ。

・現場には『鉄の船』がある。

・『鉄の船』には何かしら呪いらしいものがあり、死に至る強力なもの。

・一攫千金を夢に見た冒険者が数多く居る。

・近くには『シーサーペント』が居て、容易には『鉄の船』には近づけないらしい・・・

とういうことだって。

なるほど・・・だからこんなに人が多いのか・・・皮鎧を来た身軽そうな人はいいんだけど、そこ格好で海に出たら絶対溺れる様な重い甲冑を着た人やら、船酔いしそうな痩せこけた魔道士風の人などなどどこの街に似合わない人たちが一杯・・・。会話をちょっと小耳に挟むと『鉄の船』より『シーサーペント』討伐目的の人たちもいるみたい。命知らずだなぁ・・・まぁ、私たちは調査が主だからそんな危ないことしないと思うけどね。多分・・・無理だろうなぁ・・・


私たちは宿屋に戻ってさっそく作戦会議。船の調査は勿論だけど、その前にどうやって『シーサーペント』を撃退するかだ。倒さなくてもいいから幾分かはマシだ。

「なぁ、『シーサーペント』って音とか光に弱いか?」

カゲヒコさんは唐突にそう聞いてきた。

「う~ん、どうだろう。私も実物見たことないし・・・」

「私も無いわ。火竜や風竜なら見たことあんだけど・・・でも、同じ竜種なら弱点らしい弱点はないと思うけど・・・」

「そうか・・・いや、こいつを使おうと思ったんだがなぁ・・・」

カゲヒコさんの手元を見るとそこには何度か使ったことのある『シュリュウダン』があった。あれ・・・なんかちょっと形が違う。私がそうやってジッと見ているとカゲヒコさんも気付いたのか説明をしてくれた。

「あ~こいつは『音響手榴弾』といって、いつも使ってる爆発する奴じゃなくて大きな音を立てるタイプだ。音や閃光で相手を暫く無力化にするやつだよ。」

「へ~そんなのもあるんだ・・・でも、それだったらいつもの『シュリュウダン』の方がよくない?」

「デカブツ相手に余り効果はないだろう。それよりも音や光で怯ませた方が確実かと思ってな。」

「そうね・・・試す価値はありそうね。」

アーシェ姉さんはカゲヒコさんの言葉に納得したみたい。でも、本当に効くのかしら?

私は一抹の不安を心に留めて明日に備えたの。

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