1
「3人目のヒーメさん、貴族のお姫様ッスよ」
カルナディアの勇者ガヤオのお見合いは続いていた。
城の大広間で行われるパーティーの中、ネココの紹介で20代前半の美しい姫ヒーメが現れる。
(おお! かわいいー!)
ガヤオはドキドキした。
「勇者様。踊りましょう」
ヒーメがエメラルド色のロングヘアを揺らし、右手を差し出す。
「え! 俺、ダンスは上手くなくて⋯」
オドオドしつつ、ガヤオはヒーメの手を取った。
「大丈夫。わたくしがリードしますから」
ヒーメがチャーミングに微笑んだ。
生オーケストラが演奏を始める。
2人は他の貴族たちと共に、ダンスフロアでクルクルと踊りだした。
ヒーメが導いてくれ、ガヤオも何とかついていく。
「わたくしと結婚していただければ、ダンスにもすぐに慣れますわ。毎日、観劇したり、お菓子を食べたりして楽しく過ごせますのよ」
「ええ!? 毎日!?」
「はい。わたくしとでは退屈ですか?」
ヒーメの表情が曇った。
「い、いえ! ただ俺には、勇者の役目が⋯」
「それは心配要りません。勇者様のお仕事は全て、わたくしのお父様の家来たちが引き受けますから。わたくしと勇者様は、お城でゆっくりくつろいでいれば良いのです」
「えー!? そ、そんな⋯」
ガヤオが困惑した、その時。
「これは!」
ミョーン感覚が襲ってきた。
身体が半透明になる。
「あら!? 勇者様!?」
「済みません! 続きは後で!」
謝ったガヤオは、別世界へと移動していた。
目の前の小さなステージ上で、アイドル衣装を着た10代後半のかわいい女性がスポットライトを浴びて立っている。
「あ⋯あの⋯その⋯」
彼女の顔が真っ赤だ。
「マミカちゃん、最高ー!」
ガランとした劇場内で、たった1人の青年が、マミカを応援している。
彼は20代後半で、丸眼鏡をかけ、チェック柄のシャツとデニムパンツ姿だ。
「「あ!」」
ステージのマミカと眼鏡青年が同時に、ガヤオに気付いた。
マミカはますます赤くなり、青年はガヤオに抱きつく。
「おおおー! ついにボク以外のマミカちゃんファンが! 君の名前は!?」
「え? 俺はカルナディアのガヤオ」
「ガヤオくん! ボクは純男! マミカちゃんの大ファンさ!」
「そうか⋯マミカちゃん?」
ガヤオがマミカを見る。
彼女は、下を向いてしまった。
「そう! 地下アイドルのマミカちゃん!」
ガヤオは何のことやら、さっぱり分からない。
「あれ? ガヤオくん、RPGの勇者みたいな格好してるね。そうか、コスプレイヤーなんだ! そして、マミカちゃんのファン!」
全然、分からない。
「さあ、2人でマミカちゃんを応援しよう!」
純男に肩を組まれ、マミカの前に立った。
「あ! ああっ⋯あうぅ⋯」
マミカが両手で、顔を隠す。
「マミカちゃん! ガヤオくんも来てくれたよ! 頑張って! ほら、ガヤオくんも!」
「え? あー⋯頑張って」
「は、はは、はい!」
マミカがマイクを口の前戻した。
「し、新曲の⋯『ズッキュン♡マミカ・ラブ』⋯聴いてください⋯」
ポップなイントロが流れ、マミカがぎこちなく踊りだす。
「うおおぉー!」
興奮した純男が背中のリュックから4本のサイリウムを取り出した。
2本をガヤオに握らせる。
光らせ方も教えてくれた。
マミカが唄いだす。
(声、ちっちゃ!)
彼女の声は、ほとんど聞こえない。
しかし純男は、大喜びで両手のサイリウムを振り回し、懸命に声援を送っている。
その様子に気圧され、ガヤオも動きは真似できないまでも、マミカを応援した。
曲が終わり、顔を赤くしたマミカが肩をすくめて小さくなる。
「最高だよ、マミカちゃーん!」
純男が満面の笑みを見せる。
「ちょっと待ちなさい!」
声と共に、アイドル衣装姿の3人の娘たちがステージ袖から現れた。
「あ! キューティーズ!」
純男が驚く。
「最初から最後まで全然、声が出てないのよ! ダンスも下手すぎ!」
それぞれ赤青黃色の衣装の真ん中、赤の女子が怒った。
「キューティーズのリーダー、ベニコちゃんだよ」と、純男がガヤオに教えてくれる。




