第2話:重力異常
接地。
船体をわずかな振動が抜ける。
衝撃吸収機構は正常に作動し、姿勢制御も完了。
外部は、剥き出しの岩肌と、微細な塵が舞う真空の世界だった。
着陸完了。
外部環境:気圧0、気温マイナス180度。
重力値:基準値の0.12倍。
断続的な変動を検知。
船体後部ハッチが開放される。
内部から、四輪駆動の小型調査用装甲車が展開された。
主人公「01」は運転席へ滑り込み、直接接続を行う。
外部ユニット接続。
全地形対応モード、起動。
観測センサー、最大感度。
装甲車は音もなく地表を滑り出した。
目的は、重力異常の発生源の特定。
荒涼とした岩場を越えるたび、センサーの針が不規則に振れる。
岩石はひび割れ、本来あるべきでない角度で地層がねじ曲がっていた。
地割れの深部に、巨大な亀裂——洞窟の入り口を確認する。
異常値は、そこから放射されていた。
「01」は装甲車を停車させ、徒歩による探査へと切り替える。
洞窟内部は、光を吸い込むような暗闇だった。
足元の岩石を一部採取し、腹部にある製造・解析機構へと投入する。
サンプル解析。
組成:一般的な珪酸塩鉱物。
特記事項:分子構造に高密度の圧縮痕を確認。
奥へ進むほど、物理的な違和感が増大していく。
上向きの重力。
横方向への引力。
センサーは激しいノイズを吐き出し、視界の一部がデジタル的な砂嵐に覆われる。
だが「01」の歩行ユニットは、ただ最適化された出力で、不安定な足場を踏みしめ続ける。
突き当たりに、その「中心」があった。
空間が、熱に浮かされた陽炎のように歪んでいる。
光すらもその渦に巻き込まれ、中心部は完全な「無」を呈していた。
重力異常の中枢を検知。
数値、計測限界を突破。
本星へ記録データを送信——
送信シーケンスが完了する直前、小惑星全体が激しく鳴動した。
地震。
あるいは、空間の崩壊。
天井から巨大な岩塊が降り注ぎ、地表が砕ける。
「01」は回避行動を選択しようとしたが、それより早く、中心部の「無」が急速に膨張した。
引力が、質量を無視して「01」を捉える。
強固な装甲が軋み、センサーが光の飽和によって焼き切れる。
警告。
機体整合性、低下。
外部通信、遮断。
重力異常・数値——
ログはそこで途絶した。
次の瞬間、小惑星の洞窟からは、ロボットの姿も、歪んだ重力も、跡形もなく消滅していた。




