8
「~~~~~~~ッ!!!!
っく……ちょ!
何でアンタ避けるのよ!!
その髪色、アンタが悪役令嬢なんでしょ!!??
大人しく突き飛ばされなさいよ!!」
鼻血がだらだらと滴り、あちこちに擦過傷を負った女子生徒が、地面に座り込んだまま、フィーの方をキッと睨み付けた。
ビンゴかもしれない……赤リボンを付けている。
よくよく見れば、かなり強く打ち付けたのか、擦過傷の合間に打撲痕も見える。
暫くすれば顔面が赤だの青だの黄色だので、大層賑やかな事になるだろう。
それにしても……彼女がヒロインだとするなら、やはりゲームと全く同じと言う訳ではないようだ。
ゲーム内のヒロインの容貌は『茶色の髪』『茶色の瞳』と明記されており、実際スチルでも茶色の髪と瞳である。しかしあんな乾燥わかめのようなきつい癖毛ではなく、柔らかなウェーブを描く艶髪として描かれているし、瞳の色も灰色に見えていて茶色ではない。
やはりゲームとは多少の差異があるようだ。
彼女はビシリとフィーを指差す。
周囲の視線が、一瞬でフィーに集中した。
その様子に特に狼狽えるでもなく、フィーは無表情で思考する。
(これは……ヒロインと言うよりヒドイン…。
しかもお子様と言うより山猿ヒロイ…いえ、山猿ヒドインね。あぁ、山猿さんに失礼かもしれない……どうしましょう。
一応、相手は人間を想定していたのだけど……これは軌道修正が必須かもしれないわ)
「ちょっと!! 人の話を聞きなさいよ!!
……えっと~~~…名前ってなんだったっけ…。
まーいいわ。
悪役令嬢は悪役令嬢だモン。
そんな目立つ髪色で悪役令嬢じゃないなんてありえないモン!!」
なるほど……確かにフィーの髪色は目立つかもしれない。
真っすぐな撫子色の髪で、それを後ろに三つ編みで垂らしているのだが、さっきからおかしな単語を喚いているように聞こえる。
フィーの恰好を見て、何故『令嬢』と言う単語が出てくるのだろう……?
頭の先から足の先まで、紛う事なくメイドだと言うのに……。
これは彼女の御頭を、心配した方が良いかもしれない。
ヒロインにとって悪役令嬢は重要なパートナーだろうに、その名前さえ覚えていないとか……まさかとは思うが、ベースとなっているゲームを知らないとでも言い出すかもしれない。
いや、それ以前の話だ…『悪役』という言葉を連呼しすぎていて、激しく低能に感じてしまう。
もう形容を取り繕う事も難しいかもしれない。
有体に言うならヒドインでヤバインである。アタオカである。
お子様暴君大魔王と言う形容詞も真っ青な、山猿令嬢……いや、野生児と言っても良いかもしれない。
しかし、視線が集中している以上、無言で去ると言うのも悪手だろう。
「まぁ!
由緒正しきこの学院の敷地内で、『御令嬢』が突進してくるなんて誰が想定出来ましょう?
ただのメイドである私は、歩いていただけでございます。
周囲の皆様にも問いかけてみましょう」
にっこりと微笑んで周囲を見回せば、遠巻きに見ていた2年、3年の学院生達は挙って頷く。
「な!? あたしが悪いって言いたいの!!??
ちょっと、もしかしてバグ? そう言うの困るんだけど。
んん?? メイド? あ~、ないない。悪役は令嬢って決まってんの!
まーいいわ…アンタが悪役令嬢だってはっきりわかってるんだから、さっさと転んで無様な姿になんなさいよ!!
アンタはあたしの引き立て役なの!!」
へたり込んでいた野生の令嬢が、急に立ち上がってフィーに掴み掛ってきた。
目撃者のいない所でなら兎も角、他に学生達が居る目の前でこんな行動をする等、普通は考えられない。
言葉の端々から彼女も転生者だと分かるが、それにしたってあまりにお粗末である。
フィーもさっきの彼女同様に、棒読みな悲鳴らしき…声を発しながら、するりとその手を躱す。
更に目を吊り上げて鬼の形相になったヒド…んん、ヒロインが、手を振り上げた所で、職員達が駆け込んできた。
当然ヒロインの方が拘束される。
一応、目撃者である周囲の学生達に職員が確認を取るが、満場一致でフィーの方が被害者だとお墨付きを頂戴した。
職員に連行される満身創痍の……多分ヒロインを見送ると、学生達が労いの言葉をフィーに掛けて去って行った。
そろそろ式典開始の時刻なのだろう。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
本日は次話の投下も予定しています。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークや評価等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




