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何やらケルナーの座る席辺りが騒めいているが、教室内全体が落ち着かない空気に満たされているので、特に目立つ訳でもない。
双方の合意の下、当事者2名と責任者となるセルは当然として、生徒達も全員が訓練場へ移動する事になった。
少しばかり不安そうな表情の生徒、デービー達と同じく嫌味な笑みを浮かべる生徒達が、ぞろぞろと移動し始める。
ケルナーは他の生徒達に背を押されながら、早々に教室を後にしていった。
移動する生徒達を見ながら、何故かデービーは自信満々で、気障ったらしく蓼藍色の髪を指で払っている。
そんなデービーの前を通り過ぎ様、声を掛ける女子生徒が居た。
「ノクレンダ様、応援していますわ。
絶対に、思い違いを正してくださいね。
あたくし達、貴族こそが最も尊い至高の存在…平民なんてゴミクズ同然なのですから、盛大にお仕置きをお願いしますわね」
パミンが本当に高笑いをしながら、言葉を残して歩き去って行く。
デービーも『当然だな』と、軽く返して見送っていた。
だが、次に掛けられた言葉に、デービーは青筋を立てる。瞬間湯沸かし器も真っ青な程の豹変ぶりだ。
「ハンッ、ぶちのめされるのはどっちかしらね?」
「なっ!?
貴様は…ウィニカ!!」
「私の名を覚えてたとは思いもしなかったわ。
だってこの数年、一度も会話どころか、会う事もなかったものね?
義務も果たさない貴方に名を呼ばれると、蕁麻疹が出そうになるから、呼ばないで貰えると助かるわ。
そっちだって政略にはうんざりって言いふらしてたんだから、いい加減お互い荷物を下ろしましょうよ。
なんなら白紙撤回も応じるって何度も言ったでしょう?
破棄になると、有責は貴方の方になるから、私はどっちでも良いけどね」
一気に捲し立てるウィニカに、デービーはムッと不機嫌になる。
「い、今そんな話をしてる場合じゃないだろ!」
「あらそう。
じゃあ次までに考えておいて頂戴。
……ま、次なんてあるのかどうか知らないけど」
デービーに捨て台詞を残してから、ウィニカはフィーの方へと満面の笑みを湛えて近付いてきた。
「初めまして。
私はウィニカ…ウィニカ・ケヌクゾと申します。
助手の方にはこれからお世話になると思うので、どうぞ宜しくお願いします。
それと、是非あの気持ち悪い青虫を、叩き潰してやってくださいな」
『ンフ』と、とても良い笑顔を浮かべてデービーを一瞥したウィニカは、後ろに居たマイナと共に魔法訓練場へと向かうのだろう…その場を軽快な足取りで後にした。
フィーは呆気に取られていたが、ふとデービーの方を見ると、ワナワナと拳を握りしめて震えて、何やらぶつぶつと呟いていた。
この時、フィーが考えた事は、やはりウィニカ嬢の方は婚約が不本意なのだな、噂は本当だったのだな…程度の事。
少々不穏な単語の切れ端が、デービーの呟きの中に見え隠れしていたのに、それはフィー自身に対する不満の声だと、さらりと聞き流した。
そして舞台は訓練場へ。
テストの時もそうだったのだが、以前に迷い込んだ時と違い、武技訓練場からではなく、直接魔法訓練場へと入る。
待機席には、既に生徒達がずらりと並んで座っていた。
フィーは待機席と訓練広場との区切りになっている柵辺りに、注意を向ける。
そこには万が一の事故に対する備えとしてか、簡単な障壁魔法が掛けられているのだ。
(う~ん…。
デービーの魔法の実力って知らないのよね…勿論負ける気はしないし、そんなつもりもないけど…。
けれどデービーが魔法を使ってる場面って、ゲーム内でもなかったと思う。
もしかして障壁強化しといた方が良いかしら…でも、それほど魔法力があったなら、エネオットの魔法護衛側近がケルナーにはなってないか…)
「フィー?」
セルの声で意識を現実に戻す。
「それじゃ始めて良いかい?」
「はい」
フィーはセルからの問いかけに頷いた。
流れる様に、セルはデービーの方にも視線を向ける。
「わたしはいつでも構わない。
ゴミの如き平民風情に、わたしが臆する事なんてないからな。
……ぁ、あぁ、先に言っておく。
手加減を期待してるなら、諦めろ…手加減なんてしてやるつもりはないッ!」
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