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こんな状況になってしまうのも、全く想像出来なかった訳ではない。
実際コターだって、フィーを平民だと見下して侮っていた。
先週末のテスト、そしてその場で合格。
休日を挟んで今週頭から、すぐに授業補佐……学院側に周知する暇もなかったのは明白で、貴族である生徒達にも寝耳に水だったのだから、受け入れがたい…と言うのは、まぁあり得ない反応ではない。
貴族としてのプライドから、平民が前に立つのを阻止したいというのは、とてもわかり易い感情だ。
もしかすると、煙たいケルナーの家…オファーロ家の使用人であるフィーだからこそ、目の敵にしている部分もあるかもしれない。
特にデービーの場合、個人的にフィ―が気に入らないというのも、大いにありそうだ。
どうしたものかと、フィーはセルの方へと一瞬視線を向けた。
なんともはや…セルは薄ら笑いを浮かべていた。
「そう、私の助手の身分が気に入らないと…生徒である君達は言うのだね?」
セルが口を開いた。
だが…フィーが引っ掛かったのは、かなりズレた部分である。
(あら…授業中は一人称が変わるんだ。
普段は『僕』だったと思うけど……ぁ、そう言えば、最初に訓練場で会った時『私』って言ってたかもしれない。
公的な場面とかでは、一人称を変えているって事なのかもね)
「……それは…」
リッケ家は、メナジアも言っていたが隣国の魔法士一族で、爵位は侯爵位だったと記憶している。
隣国の侯爵家ではあるが、伯爵家の令嬢でしかないパミンは、途端に口籠った。
だが、デービーの方は同じ侯爵家だからか、引き下がるつもりはないらしい。
「そうです!
なんで栄えある貴族であるわたし達が、平民なんかが前に立つ事を許さないといけないんですか?
先生は高名な魔法士一族であるリッケ家の方みたいですし、何の問題もないですが、そいつは認められない!!」
デービーはフィーを指差して言い放った。
教室内の空気は最悪だ。
デービーの言葉に賛同して頷いている者も、かなりな数いるようだ。
その様子に、生徒側の席に着いていたケルナーが、不愉快そうに見回した後、ゆっくりと立ち上がる。
そして口を開こうとしたのを、セルが手で制した。
「色々な意見があるのだろうが、ここは私に任せて貰えるだろうか?」
穏やかに微笑むセルだったが、ケルナーにはどう見えているのか……ムッとした表情で黙り込み、席へを再び腰を下ろした。
「では……そうだね。
正面からぶつかってみる…と言うのはどうだろう?」
セルの言葉に、デービーは一瞬呆けたように首を傾ける。
「正面からぶつかる…?」
「そう、実力行使だね。
君…ノクレンダ君だったかな?
正々堂々、彼女と魔法でやり合ってみては?…と、提案している」
提案の内容をやっと理解したのか、デービーは黙り込み、だんだんと顔色を悪くしていった。
後ろ手に捻り上げられ、膝をつかされた場面を思い出したのかもしれない。
だが、プライドだけは一人前なのだろう。
「い、ぃぃ、いいでしょう!!!
わたしが、その女を二度と立ち上がれない程に、打ちのめしてやりますよッ!!」
体術ではフィーに適わなかったデービーだが、平民であるフィーに魔法で劣るとは微塵も考えていない。
その為、片頬を引き攣らせながらも、デービーはきっぱりと言い切った。
セルはそんな彼に、酷薄な笑みを一度向ける。それから穏やかな表情に切り替え、フィーの方へ向き直った。
「フィー…勝手に話を進めて申し訳ない。
けれど、どうだろう…?
正面切ってやりあう…で構わないかな?」
少し眉尻をさげて問うセルに、フィーは満面の笑みを向けた。
「はい。
全力で殺り合って見せましょう」
フィーの笑みに何かを感じたのか、セルはヒクリと顔を引き攣らせた。
「……ぁ~…ほどほどに…ね」
「いえ、慈悲など不要。
完膚なきまでに殺り合って御覧に入れます」
「……ぁ~…ぅん」
フィーとセルの遣り取りに、ケルナーが熱り立つ。
「ちょ、フィーって言った!?
名前呼び捨てにしてた!!??
くそ…セブ・リッケ……許すまじ…」
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