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だが、顔を引き攣らせているのは、フィーやセルだけではなかった。
既に話してあったケルナー以外…と言っても一部、それほど多くはない。
多くはないが、それでも一部の生徒は間違いなくフィーの方を、驚愕の表情で見つめていた。
デービーを始めとして、その殆どは伯爵位以上の家の令息令嬢で、子爵位以下の低位貴族家の者達は、特に普段と変わりないように見える。
確かにフィー自身、アンネッタの付き添い等で王宮に行く事もある為、高位貴族家の者達とは顔を合わせる機会が多い。
反対に低位貴族家の者達と関わる事は、どうしても少なくなっていた。
その為、フィーがオファーロ公爵家のメイドだと知っている者が、高位の者に多くなるのだろう。
そんな生徒達の様子に頓着する事なく、セルは自己紹介を始めたが、それを遮った者が居た。
デービーだ。
彼はセルの声で我に返ったのか、席から立ち上がり、その指先をビシリとフィーに突き付ける。
「な、なんでメイドが居るんだ!!??
しかも、そんな奴!!」
顔が蒼褪めて見えるのは、決して気のせいではないだろう。
まぁ、然もありなん……。
デービーは以前、フィーに拷問紛いの拘束をされた事があった。まだその記憶を払拭出来る程の時間は経っていない。
「まさか…またアンネッタや王女の我儘か!!??」
デービーの言葉に、ケルナー以外の生徒達は騒めき始めた。
いや…ケルナーも不快そうな表情でデービーを睨み付けているので、騒めきの一端を担っていると言えるかもしれない。
しかし……こんな浅慮な奴が側近と言うのは、色々と問題しかない気がする。
シナリオの強制力なのか…将又単に選定者が残念な人物だっただけなのか……。
フィーの目がスッと細められた。
セルが何か言う前に、一歩進み出る。
「ノクレンダ様。
言い掛かりもそこまでにして頂けますでしょうか?
私は、学院側が要求する条件を満たしてこの場に居ります。お疑いでしたら如何様にもお調べになって下さい。
それと、貴方様は名を呼ぶ事を許可されていなかった筈です。
オファーロ様の事は、家名でお呼びください。
王女殿下についても、敬称は必要です。
色々な方が不安になるような態度は御控え下さい」
デービーの面目なんて、配慮してやる必要はないだろうが、家の面目は些少なりとも慮った方が良いだろう。
そう考えて、一応言葉は濁した……濁しただけ、とも言える。
すると周囲からクスクスと、嘲りを含んだ音が、教室内の空気を震わせた。
目を吊り上げ、顔を真っ赤にしながら慌てて周囲を見回し、音の発生源を見つけようとするデービーに、フィーは呆れの色を隠せない。
「な!!??」
そんなフィーに、ただでさえ怒りと羞恥で顔を赤くしていたデービーが、更に熱り立つ。
「無、無礼だぞッ!!
何が条件を満たして…だ!!
お前がメイドなのは事実だろうがッ!!!
メイド風情が我等貴族の前に立つ等、許し難い暴挙だッ!!!
このわたしが身の程を教えてやる!!!」
フィーは教室内を見回す。
ケルナーは薄く笑っている。
S組の二人…ウィニカは、デービーを睨み付けて片頬を引き攣らせ、今にも怒髪天を衝いてしまいそうだ。
マイナの方はウィニカを宥める事に注力していて、デービーの事なんて気にもしていない。
他の生徒達は誰もが不安そうな表情で騒ついていたが、そんな中で一人の女子生徒が立ち上がった。
彼女は焦げ茶の髪をサイドでクルクルに巻き、更にねじり上げてピンクのレースで飾り立てている。
アポロノットとか言う髪型に近いだろうか……何にしても、酷く目立つ令嬢だ。
「ノクレンダ様、さすがですわ!
メイドなんて言う下賤の者には、身の程を弁えさせねばなりません!
それは、あたくし達高位貴族の務めですわ!!」
今にも『オーーッホッホッホ』とか、高笑いでもしそうなポーズを披露している女子生徒の名は、パミン・ツピカル。
ツピカル侯爵家の長女にして、エネオットの取り巻きの一人……そして、この教室の密度を上げている原因の一つである3年2組の学生だ。
何故初日から、こんな残念な者達に煩わされなければならないのか…と、フィーは最大級の溜息を一つ落とした。
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