61
だが準備は必要だ。
そんな事を考えていると、ドカドカと複数の靴音が近付いてくる。
詰所で一連を見ていた警備兵達だろう。
そして見えてきたのは、やはり警備兵で、先頭はザザカン警備兵長だ。
ザザカンはフィー達の近くまで来ると、状況を一瞥してから、すぐにドニカを保健室に運ぶよう、部下に指示する。
それからアンネッタの方を振り返った。
「オファーロ公爵令嬢、怪我等はございませんか?」
「ぇ…えぇ、わたくしは大丈夫…でも、フィーが……」
フィーが咄嗟にドニカを抱え込んだ事で、心配させてしまったらしい。
アンネッタを安心させるように、フィーはゆっくりと首を横に振る。
「私は問題ありません。
オファーロ様、どうぞ教室へ…」
フィーからの促しと、ザザカン警備兵長の頷きで、アンネッタは渋りながらも、その場を後にした。
残されたフィーとザザカン、そして数人の警備兵達だったが…。
「魔具の映像は当然記録されていますよね?」
確認の為にフィーが発した言葉に、ザザカンと警備兵達の方がギョッとした顔になった。
「廊下の両端に、等間隔で置かれている円柱飾りは魔具でしょう?
映像の確認をさせて下さい。
そしてその複写もお願いしたいのですが?」
平然と話すフィーに、ザザカン達は固まったように動かない。
暫くして、やっとザザカンが動き出した。『参ったな』と呟きながら、耳の後ろを指先で掻いている。
「いや、まぁ……その、なんだ……詰所で話すか…」
「何処でも構いませんが、授業の助手を務めねばなりませんので、時間には御配慮をお願いします」
「あ~…あぁ、わかった…」
流石にザザカン達は、フィーが教員用の上着を羽織っているのを、見落としていなかったようだ。
降参とばかりに、両手を上げたザザカンの後ろについて、フィーは詰所に向かう。
詰所には以前にも入った事がある。
ヒロインらしき人物の名を知りたくて、話を聞きに来た時だ。あの時は詰所の一番奥に行くだけだったが、今日は途中で別室に繋がる扉の先に案内される。
そこそこの広さのある室内は、壁に沿う様に机が置かれ、そこには四角い鏡の様な物が、所狭しと並べ慣れていた。
イメージするとしたら、液晶画面がずらりと横一列に並ぶモニター室…と言った所か…。
「先程の映像が映ったモニターはどれですか?」
「もに…たぁ……??」
つい『モニター』と、無意識に言ってしまった。
ザザカンに聞き返されるまで、全く気付かずに口にしてしまっていた事がわかり、フィーは一瞬狼狽えたが、直ぐに気を取り直す。
「んん!
失礼しました。
投影魔具はどれですか?」
「…あ、あぁ、こっちだ」
ザザカンに先導されて、さっきの廊下に設置されていた円柱飾りと対になっている投影魔具に近付いた。
確かに、さっきまで居た廊下が映し出されている。
フィーは徐に振り向て、ザザカンを見上げた。
「複写は可能ですか?」
「それは勿論可能だが……何故複写が必要なんだ?
さっきの状況は俺達も見ていた。
突っかかって行ったのは、あの男爵家の…なんだったか…そう、モーソー嬢の方だろう?
それについては、聞かれれば俺達も証言するし、オファーロ嬢やフィーが面倒に巻き込まれる事はないと思うがな」
通常ならそれで良いだろう。
しかし相手はドニカだ。
もしかするとエネオットがしゃしゃり出てくる可能性がある。そうなれば面倒に発展するのは想像に難くない。
何よりそうなってしまった時、平民であるフィーが気に入らない、この学院の教職員達が結託して偽証する恐れがある。
「複写をお願いします。
そして可能でしたら警備兵長他数名の証明…魔力印などの付与をお願いできますか?」
「随分と厳重だな」
怪訝そうな表情のザザカンに、詳しく説明するつもりはない。
詰まる所、フィーはこの学院の教職員を、全く信用していないと言う事に他ならないからだ。
態々そんな気分を害するような事を、言う必要はないだろう。
だが、ザザカンは眉尻を下げて、困ったように笑った。
「ま、警戒はしたくなるだろうな。
いいぞ、俺と…あぁ、警備魔具の担当者、それと学院長にも証明を頼んでみよう」
ザザカンにも思う所があるのか、あっさりと了承してくれた。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




