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そして今日はテスト当日。
朝から何時ものルーティンをこなし、アンネッタが校舎に入って行くのを見送った後、フィーは控室には向かわずに、まっすぐ書庫へ向かう。
書庫の隅にある休憩室で、筆記試験の予定になっているのだ。
書庫では既に何時もの面々プラス、学院長と一人の教職員が待っていたのだが……。
(何故選りにも選って…)
と内心で舌打ちしたのは、仕方ない事だと思う。
何故なら監視役の一人としてやって来ていたのが、攻略対象の一人であるコター・ナーグルだったからだ。
長く伸ばした亜麻色の髪を、今日は緩い三つ編みにして背中に流している。
ゲーム内ですら、コタールートを選択しない限り接触はほぼないキャラなのに、何だってこの場に居るのだ…と文句の一つも垂れたくなると言うものだろう。
「済まないね。
一応監視役として、教員から一人来る事になってしまってね…」
カザロがちらりと、背の高いコターを視線だけ斜め上に動かして一瞥する。
「監視だなんて、そんなにはっきりと言わなくても良いじゃないですか」
言われたコターの方は一瞬苦笑を浮かべるが、すぐに取り澄ましてフィーの方へ向き直った。
「でもまぁ、間違ってはいない。
平民だからこそ、厳しく監視する必要があると言うのが、教職員一同の一致した意見なのでね」
フィーとしてはコターに限らず、教職員達からどう思われていようと、別に構わない。
校舎内に立ち入る事が出来れば、それで良いのだ。
「問題ありません」
しれっと言い放てば、コターが一瞬だけ険のある表情を浮かべる。
だがすぐに微笑みで誤魔化した。
(ふぅん…。
ゲーム内の彼ってスチルは色男風だったけど、台詞なんかは至って真面目で誠実そうだったのに…やっぱり御貴族様って奴なのね。
平民に対して、思うところアリアリなのが隠せてないわよ。
でもまぁ、助手になっても、彼を始めとした教職員達と接する事なんて、ほぼないだろうからどうでも良い)
「それじゃ始めましょう」
フィーを見下すような色を隠しきれていないコターが、微笑みと共にテスト用紙を取り出した。
フィーはペンを置いた。
コターによるテスト開始の合図から、全てのテスト用紙へ記入を終えるまでに、1時間もかからなかった。
「………」
いつもの面々であるモスリンとスミナは、書庫の方で写本に勤しんでいるので姿は見えない。
代わりにフィーの座る席の前に、コターが仁王立ちしているのだが、そのコターは『信じられない』と言いたげな表情で顔を引き攣らせていた。
カザロも近くに居るが、彼は少し離れた場所に座ってお茶を楽しんでいる。
「……確認させて貰う」
コターが引き攣ったままそう言うと、カザロがカップを置いて近付いてきた。
「早いですねぇ。
流石モスリン女史の推薦ですなぁ…どれどれ」
コターが手にしたテスト用紙を、カザロも覗き込んだ。
「ほほう…これは素晴らしい。
ん…?」
何か引っかかったのだろうか、カザロが眉間の皺を深くしている。
「これはあまりに酷いですな…。
歴史の担当はユボンテ先生でしたか…間違いを指摘されるとは…酷いと言うより恥ずべき事でしょう。
しかも我が国の歴史についての出題がこれでは…。
いやはや…教職員へのテストの方が必要そうですな」
カザロの言葉に、コターも渋い顔だ。
「……認めたくはありませんが、確かにこれでは学院長の言う通りと言うしか…」
その後はマナー等のテストとなったが、これも当然の様にあっさりクリア。
そして最後の魔法実技の為に、訓練場の方へ移動となったのだが、これについてはコターがぶつぶつと文句を言い続けている。
この国では平民も、細やかな生活魔法程度は使える。
だが、あくまで『細やかな生活魔法程度』のものであって、貴族が保有する魔法力には到底及ばない。
その為、魔法は貴族特権的な面がある。
その力で国防などを行うのだから、特権意識を持つに至るのは、ある意味仕方ないとも言えた。
だから平民であるフィーのテストの為に、態々訓練場へ移動するのは面倒だと思ったのだろう。
だが彼は『移動して良かった』と、すぐに心底胸の撫で下ろす事になった。
何故なら……。
ずらりと並んだ的人形を、フィーは一撃で全て破壊し尽くしたからであった。
(嘘…でしょう…?
何でこんなに脆いの?
かなり手加減したのに……人形脆すぎない?)
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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