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前世以前の記憶を取り戻したフィーによって、攻略対象だったケルナーは、幼い頃からガッツリと矯正を受けた。
おかげで至極真っ当な貴族令息に育っている。
現在進行形でシナリオの強制力についても警戒しているが、おかしな言動や行動等はなく、今の所、フィーも安心していた。
しかし…だ。
アンネッタが、エネオットとの婚約を王家から望まれてしまった為、エネオットの監視役として…延いてはアンネッタの護衛役として、側近になる事は夫人達も早々に許可を出したのだが……ケルナーは真っ当になってしまった事が災いしてか、エネオット達からは敬遠されてしまったのだ。
その為、王宮内でもフィーがアンネッタの傍に居られるように、ゴリ押しする事になり、現在に至っている。
「それで?
結局話が見えないんだけど……」
「だ~か~ら~……」
『察しろ』と言いたげに、メナジアはガクリと項垂れた。
「いい?
アンネッタに王子の取り巻き令嬢が絡んできてるの。ここまでは良いわね?
だけど、当の令嬢が低位だとしても、王子のお気に入りだと手が出し辛いらしいのよ…この辺はこっちが公爵家なんだから、全く問題ないと思うのだけど、まぁ保身やら色々絡んでくるのかもしれないわね。
とりあえず学院側の対応は、腫れ物に触るような感じだし、何より警備兵は男性ばかりでしょう?
彼等が入れない場所だと突破される事もあった訳。
同級生の面々が阻止を頑張ってくれてるのだけど、どうしてもねぇ…」
メナジアは一気にそこまで話すと、区切りをつける様に溜息を吐いた。
ケルナーの方も、そこまでは理解できたようで頷いている。
「私は殿下達に遠ざけられているから、詳しくは知らないが、一時期王子は女子生徒を際限なく侍らせていたらしいからなぁ…。
その中に勘違い女子が居ると言うのは聞いてはいたけど、強烈な子なんだな…」
学年毎にフロアは完全に分けられているので、昼休みや放課後でもないと他学年の生徒とあまり顔を合わせる事はない。
その為ケルナーが薄っすらとしか把握していなくても、それを責める事は難しい。
最近はケルナー自身、父親に同行する事も多く、メナジアやアンネッタとは擦れ違い生活だった事も影響している。
「そうね。
で、同級生達の負担を考えると、此方で護衛を付けたい所なのだけど、ほら…学院は生徒と教職員以外の校舎内立ち入りを認めていないでしょう?」
メナジアの言葉が途切れるのを待っていたのか、すかさずアンネッタが満面の笑顔で話し出した。
「それでね、フィーが校舎内への立ち入りが可能になる様にって、頑張ってくれているの!」
『ほう』と漏らして、ケルナーと、一家の中で一番存在感の薄い当主が、シンクロしてフィーに目線を移す。
一家の中で、一番のお喋りはメナジアだ。
次いでケルナーだろう。
アンネッタと、父親である当主は専ら聞き役に回る事が多い。
「頑張るって……学院長を脅して特例でも出させた…とか?」
失礼極まりない発言である。
ケルナーがフィーをどう見ているのかわかると言うものだ……。
「ケルナー…貴方の師でもあるフィーになんて言い方なの…。
まったく情けない……。
幼い頃、手が付けられないほど悪ガキだった貴方を、ここまで立派に矯正してくれて、わたくし達がどれほど感謝してるのか…わかってないとは言わせないわ」
「ぅ……」
「まったく…そういう荒っぽい事をせずとも、正攻法で校舎内立ち入りが可能になるように頑張ってくれているのよ。
名前…なんだったかしら…まぁいいわ。
新任の魔法講師の助手という立場を、手に入れようと頑張ってくれてるの。
講師の助手とは言え、そうなれば教職員の一端だし、文句のつけようがないでしょう?」
そこまで聞いて、途端にケルナーは不機嫌になった。
「新任の魔法講師って……。
まだ授業が始まってないけど、あんな野暮ったい奴の助手にフィーを?
何より男じゃないか……フィーが襲われたらどうするんだ」
これまでフィーに、散々コテンパンに叩きのめされてきた記憶は、何処かへ落としてきたらしい。
「フィーが襲われる……ごめんなさい、想像が出来ないわ」
メナジアが呆れたように呟いた。
アンネッタも笑顔で同調するが、思い出したようにフィーに尋ねる。
「今日はダンスの練習だったのでしょう?
その髪飾りはその時に?」
「髪飾り?
失礼しました。気付かず外し忘れていたようです」
セルからの贈り物の中に髪飾りがあったのかと、フィーは自身の髪にそっと手を伸ばした。
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