53 狭間の物語 ◇◇◇ セル、千般計較す
何やら呆然としているフィーに、セルが心配して声を掛けたが、どうやら心此処に在らずな状態らしく、そのままふらふらと去って行った。
あんな彼女を見た事がなかったのだが、追いかけようと思った時、背後から聞きなれた声が聞こえる。
「あれ、どした?」
他に誰もいなければ素の喋り方になるルルは、その装いと中身とのギャップが激しい。
だが、セルとしては見慣れているので、日常以外の何物でもなく、違和感も何もかもが仕事をしない。
それよりも…だ。
「ルル、どうして彼女に不正解を伝えた?」
美少女メイドにしか見えないルルが、セルの言葉にきょとんと首を傾げる。
傍目には可憐な美少女がコテリと首を傾ける様子は、眼福モノなのだろうが、中身は結構ガサツな少年だ。
「へ?
何の事だよ…」
「フィーの事。
彼女は借り物だと言ってたんだよ」
「借り物??」
本気でわからないのか、ルルは眉間に皺を刻んで片眉を跳ね上げる。
「いや、本気で何の事だよ」
流石にセルも、ルルが本気で理解していないとわかったらしく、一瞬だけ言葉を詰まらせた。
「………。
本当にわからないみたいだね…。
フィーは何故だろう…ドレスとか、一式をルルからの借り物だと思ってたようなんだよ。
一体どう言う伝え方をしたんだい?」
「はぁぁ!?
何でそうなるんだ??……俺はいたって普通に、ダンスならちゃんと一式身に着けて実践した方が良いって言っただけだぜ?」
困惑を隠さないルルだったが、唐突に『あ』と声を漏らして固まった。
「………あ~…ごめん。
セルからの贈り物だとは言ってなかったかも……」
ルルの言葉足らずだった事が判明したが、もう一つ引っ掛かっている事がセルにはある。
「なるほど…そっちはまぁ…理解した…かな。
それとは別なんだけど…もしかしてフィーへの贈り物として、あれは不味かったんじゃないの?
彼女、すごく困った表情で固まってたよ…」
再びルルは、困惑に眉根を寄せた。
「不味い事はないと思うけど…。
俺、めっちゃ張り切って考えたんだぞ?
なんたってセルが初めて女の子に贈り物なんて言うから、絶対に外せねぇって…」
よくわからないが、何故かルルの言葉に、セルは違和感を覚える。
「外せない…?
どう言う意味?
確かに、僕にとっては初めて事で、女性に何を贈れば良いのかわからなかった…。だからルルに相談したけど…」
セルは無意識に唇の指の背を押し当てて、考え込み始めた。
本気で悩んでいる様子のセルに、ルルの方が慌てる。
「え?
いや…だってセルはイーダ嬢があれだけセルに『好き好き、あたしを見て~~』ってなアピールしてたのに、全く…欠片も靡く様子なかったじゃん!!??
イーダ嬢の『プレゼント買って』攻撃も、まるっと無視してたじゃん!!??
リッケ家の令嬢だし、セルにとっては幼馴染でもあるのにさぁ……。
それなのに、フィーにはプレゼントをって言うから、俺、てっきり……」
どんどんと勢いがなくなり、ルルの言葉の最後の方は空気の中に消え去る。
セルは消えてしまった語尾が気になるのか、促す様にじっとルルを見つめた。
「いや、だからぁ……。
セルはフィーが気に入ったんだろ?
だから落とすつもりなんだと思って…俺…」
「は?
……………落とすって…何を?」
「いや、だからセルはフィーが好きなんだよな?
だからそのうち婚約とか…」
ルルの言葉に今度はセルの方が、目を驚愕に見開いで石化した。
「え…え? え?
違うのか?
俺は絶対そうだと思ったから、一式って言ったんだけど……あちゃぁ…。
ちょ、おい、戻ってこい!
セールー!!」
ルルはセルの腕を掴んで、ガクガクと揺さぶった。
その刺激で意識を取り戻したのか、セルは何度か目を瞬かせてから、床をじっと見つめる。
「……僕は一体……。
ぁ……あぁ、いや、でも……。
あれは詫びも兼ねた……けど、そう…僕は贈り物をしたいって思った…でも、何故?……『何故』の部分が自分でもわからなくて…………」
セルは思考の海に、深く深く沈み込んだ。
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