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同僚のイメネアや先輩メイドのユーミ達…多くの人が仲間だと言える。懐かしい孤児院の仲間達も…。
とは言え…それは、前世の記憶に起因するモノ…『ガヴォッドラーヘン』と言うほんの一端だとしても、共有出来たセルやルル、シャフに感じた何かとは、言葉としては同じだが確実に違うモノだ。
前者は仲間と言うより、同僚や友達…そう言った穏やかで優しい関係と言うのが正解かもしれない。
今まで誰もがフィーの過去を知ると、そっと距離をとり、不用意に触れないように、つつかない様にと気遣ってはくれた。
だが、そんな中にただの一人さえ、探そうと…調べてみようと言ってくれた人は居なかった。
いや、調べてくれた人物はいた。
公爵邸に来て暫くした頃に、メナジア夫人が孤児院に調査員を向かわせた事を教えてくれたが、わからなかったと言ってそのままになっている。
そんな物だと思っていた…自分が覚えていないのだから仕方ないと……。
けれど…自覚はしていなかったが、やはり抜け落ちてしまった過去の時間や記憶は、思った以上にフィーの心に圧し掛かり、影を落としていたのかもしれない。
浮草の…寝なし草の様な頼りなさ…地に足がついていない様な浮遊感は、じわじわと何もかもを侵蝕していたようだ。
『両親は居たのだろうか…兄弟姉妹は……?
何処かで生きているのだろうか、それとも…。
幸せだった? 不幸せだった?
どんな事で喜んでいた?
どんな事で悲しんでいた?』
思い始めればキリがない。
抜け落ちた幼い頃の記憶をすっ飛ばして、前世以前を思い出してしまったが、本当は今の自分…フィーとしての過去を取り戻したい気持ちがあったのだ。
そんなフィーの心に、彼等がくれた言葉は波紋を生じさせた。決して不快ではなく、形容し難い感情が、喜びだと気付いたのは最近になってからの事。
その時、感情が制御出来ず、久しぶりに泣いてしまった。
孤児院から連れ出された時以来かもしれない。
ずっと肌身離さず身に着けていた『文字か記号のようにも見える傷があるペンダント』を、フィーは握りしめてただ泣き続けた。
それだけが自分の寄辺だと、縋る様にして泣き続けた。
何度も練習し、流れる様にステップが出せるようになった今、そんな自分の醜態を思い出しながら、フィーは自分に素直になろうと決める。
推しスイッチОNだОN!
ルルも言っていた通り、フィーがセル達の仲間で居られるのは、今回限り…今だけの事になるだろう。
だからこそ、開き直ったって良いじゃないか。
武器を見つければ彼等は此処から去って行くに違いない。
元よりこの国の住人ではないようだし…。
そしてフィーは、これまでと同じく公爵家でメイドとして過ごし、セル達とは2度と会う事はない。
一抹の寂しさを感じるが、それを振り払う様に息を吐いた時、丁度ダンスが終わった。
セルの手と重なっていた手を、フィーはするりと戻して一礼する。
「なんとか最低限は大丈夫そうかな。
フィーの覚えの早さに吃驚させて貰ったよ。
何はともあれ、お疲れ様」
セルから労いの言葉が掛けられた。
「ありがとうございました」
前世と違い、本当に娯楽の少ない世界だからか、思った以上にダンスは楽しかった。
だがどうやら及第点は貰えたようなので、これで終了となるだろう。
後は一人でこっそり復習するのみだ。
ゆっくりと頭を上げ、少し躊躇ってからお茶で喉を潤していたセルに話しかける。
「あの…ルルさんは何方でしょう……。
お借りしたドレスやアクセサリーの事で、少々お伺いしたい事が…」
借り物である以上、綺麗にしてから返すつもりではあるのだが、ルルと会えるかどうかは運任せになっていた。
それはシャフも同様で、セル以外の二人は武器探索に忙しいらしく、初対面の時から以降ずっと会う事は叶わなかった。
今日会えたのも偶然だろうし、出来ればちゃんと会える日時を前もって聞いておきたい。
だがセルは別の所に引っ掛かったようだ。
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