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流れる様に、休憩前までのステップを踏み始める。
先刻の復習をしながら…と言う事だろう。
「講義中…特に実技になると、どうしても生徒と接触する可能性が出てくる。
魔力の流れなんかは触れた方がわかり易いしね。
教える方も教えやすい」
くるりとターンが入る。
『休憩前まではなかったのに、急なアレンジを入れ込んでくるんじゃない…』等と言うフィーの感想なんて、セルが気付く筈もなくダンスは続く。
「そうなると触れられた方は、違和感に気付いてしまう者が現れるかもしれないんだ。
まぁ、滅多にいる訳じゃないんだけどね。
でも一度違和感に気付かれると、幻影魔法は効果が薄れるし、看破される事にも繋がってしまう。
だから、僕の代わりに生徒に接近出来る人材が、どうしても必要だったんだよ」
フィーは返事こそしなかったが、理解出来た。
確かにセルの美貌に気付かれるのは、面倒を引き寄せかねない。
でも…と、そこでフィーは引っ掛かった。
「ですが…そうなるとこうしたダンスの練習は…不味くないのでしょうか?」
以前にスミナが言っていた新任の魔法講師と言うのがセルの筈で、カザロも随分と見上げていた。
つまり見た目が残念な、年若くて背の高い人物に見せかけていると言う事になる。
フィーには、どうやらセル本来の姿しか見えないようだから、他人から見た場合、目線や手の位置がおかしな事になっているのではないかと思う。
もし誰かが室内に入ってきた場合や、可能性としては高くないが窓越しに見られたりした場合、それによって違和感を引き出してしまうのではないだろうか…?
うまく言えないが、そう言った事を何とか伝えると、セルはフッと笑った。
「大丈夫だと思うよ。
フィーは僕が幻影を纏っていると知っている。
そのおかげで僕の幻影魔法の範囲内に、君を取り込めているんだよ。
だから心配はない…かな。
それにフィーの言う通り、此処は2階だし、廊下側にも窓はない…外部の人間に見られる可能性は…あまり高くないだろうしね」
セル本人がそう言うのなら大丈夫なのだろう。
フィーは公爵夫妻や護衛騎士団長ヤッセム達から勧められて、メイドとしてだけでなく、令嬢付きとして、護衛として、十分すぎる程の教育を受けさせて貰えた。
その中には魔法もあって、ある程度使いこなせている。
だが、それはあくまでアンネッタを守る為の手段としてで、護衛するのに不要な魔法の事は良く知らないままなのだ。
時間に余裕が出来たら、手隙の時間が出来たら…そう言いつつ、なかなか纏まった時間を取れずに今に至っている為、知識にも技量にもぽっかりと空いた空白部分は意外と多い。
「でも…」
セルが言葉を途切れさせたので、ついじっと見つめてしまった。
「ありがとう。
気にしてくれて、とても嬉しいよ」
極上スマイル・ダイレクトアタックの効果はバツグンだ。
フィーはそれを無防備に受けてしまい、顔が熱くなるのを止められない。
いや…正直に言うと、敵認定は解除しても良いと思っている。
彼等が何の為にラーメン武器……失礼『ガヴォッドラーヘン』を欲しているのかわからない。しかしそれはフィーにとってもありがたい話だった。
ヒロインやその周辺の手に渡ると、どう転ぶかわからなくてとても厄介に思っていた代物なので、それを何処かに持ち去ってくれると言うのなら、もう諸手を挙げて歓喜したい。
それにセルは勿論、ルルやシャフもフィーを仲間だと言ってくれた。
例えそれが今だけの限定されたモノだったとしても、気付けばフィーの心に突き刺さっていた。
多分…嬉しかったのだと思う。
そう…気付いてから何度も否定したりもした。けれどフィーの心が嬉しさを感じてしまった事は否定出来なかった。
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