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静寂に満たされた室内に残る事になったフィーとネルローネだったが、圧し掛かる様な静寂に、先に音を上げたのはネルローネだった。
「フィー」
名を呼ばれ、フィーは『はい』と返事しつつ、両手を腹に添わせるように重ね置いて頭を下げる。
「兄をどう思うかしら?」
「………」
沈黙を返事とするが、ネルローネは食い下がる。
「此処での発言で、罪に問う事なんてしないわ。
だから、思ったままを話して欲しいのよ」
「………」
王女の言葉を真に受けて、馬鹿正直に発言するなんて愚を犯す訳がない。
例え王族の許可があったとしても、率直な感想を口にする事自体が、おいそれと出来るモノではないのだ。しかしネルローネは引き下がるつもりは全くないらしい……困ったものである。
フィーの身分は、言ってしまえば平民だ。
公爵令嬢付きとは言え、平民出身の…しかも単なるメイドが王宮に出入りし、王族に声を掛けられる事自体が、異例中の異例なのだ。
これはアンネッタが他のメイドでは嫌がったのと、一人で令嬢のお世話と護衛を兼ねられるメイドが、フィーしかいなかった事が大きい。
それと同時に、幼い頃、身を挺してアンネッタを救った事で、公爵夫妻からとんでもなく厚い信頼を寄せられていた事も関係しているだろう。
公爵家からの、半ば脅しに近い形で、フィーの王宮への出入りが許可された。
この婚約は王家からの熱望に端を発し、王命を出してまで結ぼうとした縁なのだ…臍を曲げられて困るのは王家の方……と言う事で現在フィーはこの場に立っている。
「…じゃあ、せめてわたしが出来る事はないかしら。
兄の非礼さを思えば……いえ、我が両親も大概よね。何の償いにもならないと分かっているけど……」
「………………」
何度も問われ、流石にこれ以上はスルーする方が罪に問われるかもしれないと、フィーは降参の溜息を零した。
「王子殿下について、申し上げられる事はございません。
王陛下、王妃陛下についても同様でございます。
壁にミミちゃん、障子にメアリーちゃんでございますから」
「は?
ミミちゃん?? メアリーちゃん??」
別にわからないならわからないで問題はない。
って、確か日本の会社が作ったゲームだったと思うのだが……まぁ良いだろう。
「ですが……そうでございますね。
これより私は、隣室に茶器の片付けに下がらせて頂きます。
しかし憂いを抱える私は、盛大な独り言を呟いてしまうかもしれません。
どうぞ御耳を塞ぎ、御目を閉じて頂ければ幸いにございます」
能動的に言うのは問題だろうが、独り言を盗み聞かれてしまうのは仕方ない。
反対に盗み聞く等と言うはしたない行動に、避難の目を向けられるのは、聞かれた側ではなく聞いた側だ。
フィーは早速、茶器をワゴンへ移動させる。
勿論、所作は最大限美しく保ったままなのは当然だ。
一礼してワゴンと共に隣室に下がり、扉を閉めた途端……白々しく、且つ棒読みで嘆きだす。
「はぁ、憂鬱です。
間もなく学院の入学式だと言うのに、そんな晴れの日にお嬢様の心痛を思うと……どうすれば良いのでしょう……。
なんとか御婚約者様達と会わずに済めば良いのですが……御婚約者様達御一行が、会場控室にでも籠っていてくださる事を祈るしかないなんて…」
ネルローネもアンネッタと同じ年齢で、同じくS組のクラスメイトとして入学する。
つまり、妹としてでも王女としてでも構わない。
持てる力を最大限生かして、王子だけでなく、その側近と言う名の取り巻き連中も、会場以外をうろつかせるな……と言う意味だが、どう捉えるかはネルローネ次第である。
出来ればフィーの思う通りに事が進んでくれれば良いのだが、メイドの身ではこれが精一杯であった。
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