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先日のモーソー男爵家付近聞き込みでは、色々と分かった事があった。
彼女達の関係はある時から一変した事。
ドニカの容姿は、フィーたちが現在目にしている姿とは、違っているかもしれない事。
そうしているのがナホミである可能性も……。
理由まではわからなかった。
しかし先だっての遠見での様子や、ナホミの不可解な行動からは、どうやらドニカの方はナホミを純粋に慕っていて、対するナホミの方はドニカに悪意がある様に思えてしまう。
(もし本当にナホミさんに悪意があるのだとしたら、このままドニカさんを放置しておいて良いものかしら……。
ヒロインの可能性がある以上、出来るだけお嬢様や公爵家には近付けたくないけれど、放置しておくのも悪手な気がするのよね。
と、今ここで悩んでも仕方ないわ)
そう…現在フィーは、セルの執務室にて慣れない装いに身を包んでいる。
以前話していたダンスの練習だ。
カザロ……タブスア学院長から言われていたテスト…所謂採用試験と言うか、他の教職員達を納得させる為のソレだが、出題内容は検討中だそうで、聞きに行ったセルにもまだ話せる段階ではなかったらしい。
しかし、鼻っ柱の強い教職員達を納得させる為と言うのなら、魔法の助手と言う立ち位置には全く必要のないダンスを、あえて組み入れてくる可能性があるとセルは分析している。
その点についてはフィーも同じ考えだ。
勿論カザロが不要としてくれる可能性もあるが、前もって練習しておくに越した事はないだろう。
それで本日はその練習をするべく、セルの執務室に居る訳だが、ルルから『ダンスの練習なら、それなりの装いでやらないと!』と言われて、現在ルルから借りたドレスとアクセサリー等々で着飾っている。
「大丈夫?」
現在は休憩中で、椅子に座り込んでいるフィーに、セルが温かいお茶を淹れて差し出してくれた。
「ぁ、申し訳ございません。
お茶の用意なら私がするべきでしたのに…」
セルはクスリと笑って首を横に振る。
「確かに僕はフィーを助手として雇う立場だけど、前にも言ったよね?
フィーは使用人としてこの場に居る訳じゃない。それに僕はこういった雑務も嫌いではないんだよ。
頭を空っぽに出来るしね」
セルはそう言うと、惜しげもなく極上の微笑みを向けてきた。
フィーはげんなりと『これだから美形って奴は……』と内心で零しつつ、渡されたカップに目を落とす。
そのまま沈黙が二人きりの室内に落ち、ふと気になっていた事を尋ねてみる事にした。
「そう言えば、気になっていた事があるのですが、お伺…聞いても良いでしょうか?」
セルは苦笑に肩を揺らしながら、頷く。
「どうぞ。
手の内を見せてるのだし、シャフやルルも言ってたでしょう?
僕達はもう仲間なんだから、疑問があるなら何でも聞いて欲しい。言えない事、わからない事は勿論話せないけどね」
お言葉に甘えて…と、フィーは不思議に思っていた事を口に出した。
「セル様の知識も魔力も、それだけでなく技術もこの短期間でわかる程高くていらっしゃいます。
ですので、どうして『助手』なんて必要とされているのかわからないのです」
セルは肩を竦めて、フィーの方に手を伸ばす。
「言葉」
「ぁ、もうし…ごめ、んなさい…」
「ふふ、まぁ言葉遣いは追々…かな」
まるでダンスの誘いのように差し伸べられた手に、フィーは自分の手を重ねた。
そのままグイと引き寄せられ、顔も身体の密着する。
「僕が本来の姿を幻影で隠しているのは、知ってるよね?」
「ぇ、ぁ…あぁ、ハイ!」
セルは平然としているが、正直フィーの方は免疫がない。
ただでさえとんでもない美貌の持ち主であるセルは、フィーの…と言うより前世の織田 芙美子の推しスイッチが入ってしまいそうになるほど好みなのだ。
顔だけでなく容姿の全て、その声までもドストライクで、気を抜くと諸々沸騰しそうになるのに、そんな苦悩を知らないセルの方は、惜しげもなく色々と駄々洩れにしてくれる。
思わず心の内で唸ったフィーは、決して……多分、悪くない……筈だ。
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