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「そうだよねぇ…嬢ちゃんの顔立ちから想像すると、姉さんってのも結構な美人だろうし…」
うんうんとノギーは頷いているが、フィーにはピンとこない。
まぁきつい顔立ちだと言う自覚はある。
所謂悪役令嬢顔で、品はあるが黒い部分もあるだろうと指摘されるような顔立ちなのだ。
美人だと表現される事は嬉しいが、正直に『悪人顔』とか『高慢ちきな顔』と言えないだけだと、フィーは思っている。
気を遣わせて、申し訳ないかぎりだ。
「旦那様や坊ちゃんの事も心配の種だけど、勤めるならお嬢さんの事も不安材料…そっちの事も話しておくかねぇ。
あっこのお嬢さんはずっとほったらかされててねぇ。
旦那様は女を追いかけるばっかり、奥様は坊ちゃんに構い倒し、坊ちゃんはそれが窮屈だったのか粗暴だし、旦那様の血を正しく受け継いでるのか、やっぱり女癖は宜しくない。
そんな中で家の後継ぎでもないお嬢さんが、ほったらかされたのは…まぁ簡単に想像出来るだろ?」
フィーはこくりと頷く。
「低位とは言え、それなりに裕福な貴族のお嬢さんなのに、ちっさい頃からぼろっちぃワンピースに裸足でさぁ。
親戚だとか言うナホミちゃんがメイドとしてやってくるまでは、本当に可哀想なもんだったよ。
顔がすっごく可愛かっただけに、余計に哀れでねぇ……子供なのに無表情で、門越しにでも目が合うと怯えて、脱兎のように逃げちまうんだ…。
ナホミちゃんもお嬢さんを哀れに思ったのか、最初はやさしくしてやってたみたいだったよ」
フィーはノギーの言葉に引っ掛かった。
「『最初は』…とはどう言う意味ですか?」
ノギーはむぅと唸って難しい顔をする。
「あたいはナホミちゃんがどうしてモーソー家で働く事になったのか、よく知らないんだけど…いや、聞いた事はあったんだよ。けど、言葉を濁すばっかりで……ね。
だからまぁ、気が付いたら婆さんが居なくなってて、代わりにナホミちゃんがあそこで働くようになってた」
どうやらモーソー家には老いたメイドが居たらしいが、その老メイドと入れ替わるようにしてナホミが働いていたようだ。
「で、あの婆さん、お嬢さんの事は気の毒に思ってたんだろうね…大人には懐かなかったからさぁ…ナホミちゃんなら懐くかもって引き合わせたんだと思うんだよ。
そしたら案の定と言うか…ナホミちゃんに懐いてベッタリになってねぇ。
ナホミちゃんは男爵様ン所のメイドで、仕事があるだろ? 買い物とかさぁ、それにお嬢さんもくっついてくるようになって。
まるで姉妹みたいで、本当に微笑ましかったねぇ……」
ノギーは遠い目をして溜息を一つ落とす。
「あれは何時頃だったかねぇ…。
ある時からナホミちゃんに表情がなくなってさぁ…あたい等も心配して、見掛けるたんびに声かけてたんだけど…そんなある日、見ちまったんだよ。
ナホミちゃんがお嬢さんを叩いて怒鳴ってるのをさ…」
ナホミに何かあったと言う事だろうか…少なくともこの口振りでは、ノギーが理由を知っているとは思えない。
「あんまりな剣幕だったもんで、あたいもビビっちまってねぇ。
ついそのまんま、聞きそびれて……」
ノギーの言葉の端々に、後悔が滲んでいるように思えるのは、穿ち過ぎだろうか…。
「そうしたらさぁ、またナホミちゃんが前みたいに笑う様になってくれたもんだから、その事はそれきりになっちまった。
その頃にはお嬢さんは見掛けなくなっちまってたんだけど、今年になって学院に通い出したんだよ。
で、久しぶりにお嬢さんを見たんだけど、ありゃぁたまげたねぇ」
今一度、ノギーが周囲を見回す。
一頻り見回してから、何故かフィーの耳元で囁いた。
「お嬢さん、豹変しちゃってて…緩く癖のあるだけだった髪がチリチリになってるし、可愛らしい顔だったのに、ゴテゴテの化粧で……もう別人かと思っちまったよ」
『豹変』と言い切る程の変わり様だったと言う事か…。
確かに小さな子供の成長は早いし、女の子なら更に変化は著しいかもしれない。しかし髪質がそこまで変化すると言うのは、フィーも不思議だと思った。
(もしかしてあの髪型は、ナホミさんが態々作ってる?
何の為に……?
ノギーさんの話だと、ドニカさんは元々可愛らしい少女だったみたいだけど…なんだか色々と噛み合わない…)
フィーが思考の海にダイブしても、気付いていないノギーは、その後も色々と話をしてくれた。
半分以上雑談だった事は……まぁ、御愛嬌と言う事で……。
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