43 狭間の物語 ◇◇◇ エネオット、昏倒する
ヨリアンナもクーノも、ポカンと呆けていたが、流石は母は強し……ヨリアンナの方がいち早く瘴気に戻った。
「エ、エ…ェ、ェネオット……?
ま…まさかと思いますが……オファーロ家からの打診だったと思っていたのですか…?」
エネオットもさっきまでの怒りは吹っ飛んだのか、呆然とヨリアンナとクーノを見る。
「いや、だって……王家からなんて、思う訳ない…ですヨ……」
なんだかんだと言っても、公務の手伝いや妃教育をサボったりしないから、エネオットはてっきりアンネッタが我儘を言って婚約者の座についたのだと思い込んでいた。
「何度も言いましたっ!!!
だからアンネッタ嬢は当然ですが、公爵家にも礼を欠く事のない様にとあれほど……あぁぁ」
ヨリアンナは扇を落としてしまうだけでなく、よろよろと今にも倒れそうになり、クーノの執務机に手をついて何とか身体を支える。
「どうしてこんな馬鹿になってしまったの……。
いえ、昔から馬鹿ではありましたが、素直な所は褒められる子でしたのに…」
「ヨ、ヨリアンナ!」
よろめく妻を支えようとクーノが手を伸ばした。
そんな両親を見ながら、それでもエネオットは自分の思い違い、勘違いを受け入れる事は出来ず、何とか正当化する理由を必死に探す。
「そ、そう!
アンネッタが望むから、父上や母上がオファーロに恥をかかせない様にしたって「いい加減になさい!!!!!」事じゃ………な…い……のか…」
クーノに支えられながら、ヨリアンナが声を張り上げて最後まで言わせない。
「まさかとは思いますが、アンネッタ嬢が自分の事を好きだとか何だとか、見当外れな事を考えてるんじゃないでしょうね…。
あり得ない……あり得ないわ…。
どういう考え方をすればそんな結論になるというの!?
何度婚約解消を願い出られていると思っているの!!??」
悲鳴のようなヨリアンナの言葉に、エネオットは今度こそ固まった。
「ですがアンネッタ嬢以外に、貴方の不出来をどうにかしてくれそうな令嬢は居ないのよ……。
それを………。
はっきり言えば、王座をエネオット…貴方ではなくアンネッタ嬢…延いてはオファーロ公爵家に託す為の婚約だと思ってもいいくらいよ…」
「ヨリアンナ…流石にそれは言い過ぎではないか…?」
蟀谷を指先で揉みながら、ヨリアンナはクーノに呆れる。
「貴方ねぇ……。
貴方がそんな態度だから、エネオットが誤解して増長してしまったんではないの?
現実を直視してくださいと何度も申しましたでしょう?
学院での素行についても、問題だと何度も言ったではありませんか!!
だからあんな許可も、出さざるを得なくなったのですよ!!??
臣下から軽んじられる王家では、周辺諸国に良い様にされてしまうのですよ?
直轄領の経営も上手くいっていないし……予算もどんどん目減りするばかり……はぁぁぁぁ」
ヨリアンナは黙り込むクーノから、エネオットの方に向き直った。
「エネオット…今一度言います。
これで理解出来ないなら、本当に救えないわ。
良いですか?
……アンネッタ嬢に逃げられたら、貴方の王位継承権はなくなると思いなさい。
もしそうなったらネルローネが女王として立つ事になるでしょう。
そして貴方が周辺諸国の何処かに婿入り……受け入れてくれるところがあれば…ですけど……もしかするとそれさえも難しいかもしれない。
貴方の悪評は、消しても対処しても、次から次への状態なのだもの…」
打ちひしがれた様に目頭を押さえる母親の姿に、エネオットも流石に青くなった。
これまでの行動や言動が、頭の中を駆け巡る。
盛大なやらかしを自覚した途端、エネオットは眩暈に襲われた。
ふらつく身体をどうにかしようと無意識に足を踏ん張るが、その足も縺れて、そのままエネオットの身体は後ろへと傾いていく。
まるでスローモーションのように視界がブレて、意識も曖昧になっていくのを感じながら、エネオットは重力に引き寄せられるまま後頭部から床に倒れ込んだ。
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