41 狭間の物語 ◇◇◇ エネオット、沸騰する
―――時は少し遡り………。
エネオットは羞恥と屈辱で、沸騰しそうになりながらドスドスと足早に歩いていた。
身体の節々が痛みに悲鳴を上げているが、そんな事に拘ってる心の余裕がない。
荒れるエネオットの後を、デービーが必死に追う。
「で、殿下! お待ちを!!」
デービーの声なんて無視したかったが、ふと気づけば周囲の視線がチクチクと突き刺さってきていた。
そんな細いな事でさえ癇に障り、エネオットは振り返って足を止め、デービーをキッと睨み付ける。
一方のデービーはと言うと、追いつけた事にホッとしたようで薄っすらと笑みまで浮かべていた。
それが余計にエネオットの感情を逆撫でする。
「お…お前は……俺をイラつかせる事しか出来ないのかッ!?」
エネオットの剣幕に、デービーは思わず半歩下がってしまったが、正直この程度で引き下がっていてはエネオットの側近なんぞ務まらない。
ちょっとした事で癇癪を起すなんて、平常運転過ぎて珍しくないのだ。
「殿下、やはり彼奴等が何か……?
もしそうなら不敬罪で捕らえましょう! 殿下が騎士にお命じになれば「デービー……」…ッ!?」
地を這うようなドスの効いた声で言葉を遮られ、ハッとした様に口を噤んだデービーは、少々顔色が悪くなりつつある。
「ま、まさか…わたしに捕まえてこいとか言います?
いえ、わたしは荒事は……そ、そうです、チェポンに命じましょう!!」
妙案だとばかりに、デービーは力説した。
内心は冷や汗だらだらであるのだが、そんな事はおくびにも出せない。
まさか侯爵家の者が、メイド一人に及び腰になっている等、気取られる訳にはいかない。
エネオットもそうだが、デービーも無駄に高い自尊心のせいで、睨み合いに終始してしまい話が進まなくなっていた。
「煩い!!
いい加減黙れって言ってるだろ!!??」
「ヒッ! も、申し訳ございません!!」
再び不機嫌に歩き出したエネオットだったが、デービーも暢気に見送る訳にもいかず、後に続こうとした。しかし、それに気付いたエネオットが、また振り返って声を荒げる。
「付いてくるな!!」
「え、いや…で、ですが、わたしは殿下の側近で…」
「何度も言わせるなッ!!」
自分一人の判断では心許なくなったのか、デービーは後ろを振り返った。
てっきり追いかけて来てるであろうと思っていたチェポンの姿はなく、デービーは途方に暮れる。
「は? い、いない…?
こんな時に何をしてるんだ…役立たずもいい所じゃないか…」
どうしたものかと悩んでいる間に、エネオットはずんずんと歩き去ってしまった。
デービーを置き去りに、馬車止めに向かったエネオットは、乱暴に馬車に乗り込む。
御者も慣れたものなのか、淡々と馬車を出した。
それさえも気に入らないのか、エネオットは座面に置かれていたクッションを、両手で思い切り引き裂く。
中に詰められていた綿が零れて散らばった。
「くそ……くそっ!!」
綿をダンダンと踏みつけるが、感情は高ぶったままで収まらない。
「なんで父上も母上もあんな許可を……。
俺は次期国王なんだぞ…なんで俺を大事にしないんだっ!!
納得出来る訳ないだろうが!
アンネッタも言う事聞かないし、俺が女連れでも平気な顔しやがって……。
それになんなんだ…あのメイド…なんであんなにチビの癖に、いとも簡単に……あぁぁ、もう怒りで頭がどうにかなってしまいそうだ…くっそ…」
馬車の窓から外を見れば、もうすぐ王宮に到着しそうだ。
「身体は痛いし、不敬を問えないって反則だろ!?
どうにかして一泡吹かせる事が出来ないか……。
アンネッタのお付きなら、あいつが登城する時に来るよな…って事はだ、その時に不意打ちなら……って、いや、本気でなんでメイドのガキがあんなに強いんだよ…ありえないだろ…」
ギリリと爪を噛みながら、エネオットは忌々し気に呟いた。
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