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「お嬢様、このまま進むのではなく、此方の道を通って見ましょう」
フィーはゲームの開幕イベント地点となる中庭ルートを避けようと、校舎の間を抜ける道へとアンネッタを促す。
だが、アンネッタは少しだけ難色を示した。
「え……でも…。
そっちの隙間は道なの? んん~何だか薄暗くて怖いわ…」
「そうですね、人通りは殆どないと思われます。
ですが、近道が可能な道なのでございます。
彼方の…花々に彩られた道は、これから御友人達と散策する機会もございましょう。
しかし、こんな道を御友人達と歩く事があるとは思えません。それ以前に御存じでない可能性が高いと思われます。
ですので、私と先に確認しておきましょう……『他の皆様が知らない近道』を」
『他に知る者のない近道』という部分を強調すれば、アンネッタは瞳を輝かせた。
「知ってるのは本当にわたくし達だけ?」
「はい。
少なくとも旦那様や奥様、兄君であらせられますケルナー様も、アンネッタ様より2年も前に御入学なさっていらっしゃいますが、全くご存じなかったようです」
「なんて素敵なの!
フィー、案内して頂戴!」
「はい、お嬢様」
アンネッタの先を歩いて案内しつつ、フィーはフッと口角を引き上げた。
(本当に素直で可愛らしい令嬢に成長して下さって、私はとても嬉しうございます。
そして、このままヒロインには、是非とも速やかに御退場願いましょう。
アンネッタお嬢様と私達の、平穏と幸せの為にも…)
時は数日前に遡る。
アンネッタの婚約者であるエネオット王子の態度がどうあれ、婚約者と言う立場である限り、アンネッタは妃教育から逃げる事は出来ない。
その為、その日も登城して講義を受けていた。
一段落した頃に、エネオットの妹であるネルローネ・ボーカイネン王女が、アンネッタが休んでいた部屋を訪れる。
アンネッタとネルローネは婚約云々とは関係なく、幼い頃よりの幼馴染である。
「アンネッタ…ごめんなさいね。
お兄様ったら、また……」
どうやら此処に現れるべき相手である婚約者のエネオットが、行方を晦ましたようだ。
「気にしてないわ。
何時もの事だもの」
あっけらかんと笑うアンネッタに、ネルローネの方が重い溜息を吐き出す。
「わたしだけではなく、全員で兄を諫めているのだけど……。
婚約破棄してくれて構わないとか、馬鹿な事ばかり言うのよ…」
「え!?
婚約破棄して下さるの!?
なんて素敵なのかしら!!」
途端に瞳を輝かせ、アンネッタはうっとりと胸に両手を重ね置いた。
一方ネルローネの方は苦り切った表情で、蟀谷を揉んでいる。
「あ~……そうよね…。
その反応が普通よね……。
わたしはアンネッタと義理であっても姉妹になれるのは嬉しいけど、アンネッタからしてみれば、それ以前の話だものね……。
あんな常識のない兄と結婚なんて……拷問以外の何物でもないわよね……。
……あああぁぁぁぁぁ!! 糞お兄様の大馬鹿者ぉぉぉ!!!」
最早ネルローネは王女の仮面をかなぐり捨てた様だった。
言葉遣いが大いに乱れている。
叫び声を上げた後、彼女はテーブルに突っ伏し、頭を抱えた。
アンネッタがネルローネを宥めていると、部屋の扉がノックされる。
フィーが静かに近づき、扉越しに相手を確認すると、どうやら王宮侍女の一人でヨリアンナ・ボーカイネン王妃からの遣いだったようだ。
一応妃教育で登城する度、王妃と面会するのが決まりのようになっている。
フィーもついて行こうとするが、勝手知ったる何とやらだからと、部屋でネルローネの相手をするようにと頼まれた。
正直に言うと、王宮の人間も信用ならないと思っているフィーなので、アンネッタから離れるのは避けたかったが、当の本人から頼まれれば引き下がらざるを得ない。
だが……別視点から考えれば、これはチャンスだろう。
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