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だがメイド少年が攻撃に転じる事はなかった。
間髪入れずにセルが魔法でメイド少年を拘束した結果、彼……いや、彼女と言うべきなのだろうか…わからないが、体勢を崩し床に転がってしまう。
「相変わらず血の気が多いね」
セルがげんなりと言う。
「ちょ!
放せって!
だってそいつ、俺と目が合ったんだ! おかしいだろ!!??」
口は拘束されていなかったので、メイド少年は転がりながらも元気に喚いた。
隣に立っていた事務服青年が仕方ないと言いたげに、抱え上げて立たせてやってから口を開く。
「まぁ、一言欲しかったのは確かですね。
急に呼び出されて何事だと来てみれば、見知らぬ女性が室内に居るのですから、そりゃ警戒もすると言うものです」
「僕が室内にいる事を許可していたんだから、問題ない相手だとすぐわかると思うのだけどね」
肩を竦めながら、セルはメイド少年の拘束を解いた。
ムッと口を曲げながら頬を膨らませる少年は、一瞬性別を忘れそうになる程可愛らしい。
違和感が仕事をしなくなりそうだ。
「で?
何者なんだよ…俺は幻影魔法を解いてないんだぞ。
なのにさぁ、なんでそいつは俺の顔をしっかり見てくるんだ?」
なるほど…と、フィーはやっと理解した。
どうやらメイド少年もセル同様に、違った姿で見えているのが普通だったようだ。
セルが困ったように微笑んでから立ち上がり、机を回って事務員……どうにもそうじゃない感があるのは確かだが、今はそう呼ぶしかないだろう…と男の娘メイドの方へ歩いて行く。
「とりあえず中に入って扉を閉めてくれる?」
事務員の方が『あぁ』と頷くと、二人共室内に入り扉を閉めた。
それを確認してセルが話し出す。
「じゃあまず紹介から。
そっちの彼から…名はシャフ。
主に事務系の補佐をしてくれている。
学院が雇用している訳ではなく、あくまで僕の補佐官なんだけど、学院職員の制服を着るように言われてね」
「シャフです。
見た所メイドのようですが……」
シャフと紹介された事務員は、フィーを見ながら首を傾げている。
「彼女の事は後でちゃんと話すよ。
それでこのメイドの方だけど、考えるより先に身体が動いてしまうらしくてね…何度も注意はしてるんだけど、なかなか…。
名はルル。
シャフと同じく僕が雇用……とでも言えば良いのかな。
まぁ学院の職員ではないよ」
ルルと紹介されたメイドは、フィーをムスっと見つめた。
「幻影は見破られてるみたいだから言うけど、これ、俺の趣味じゃないから!」
ルルはメイド服を摘まんで憮然と言い放つ。
だがその顔は頬に薄っすらと朱が入り、恥ずかしいのだろうと言う事が見て取れる。
「てか、俺の幻影見破る奴がいたなんて……。
あんまり程度は高くない学院だと思ってたのになぁ…ちょっと注意しないとダメか」
「ルルの幻影は、セルからもお墨付きでしたからねぇ」
「なんか悔しい…」
シャフがルルの頭をヨシヨシと撫でている。
「じゃあ次は彼女かな。
名はフィー。この国のオファーロ公爵家のメイドなんだけど、僕の助手を務めて貰う事になったから」
シャフとルルが目を真ん丸にしている。
「「は?」」
見事なシンクロで結構な事だが、フィーが挨拶をする隙が無い。
「いやいや、待てって……助手は探してたからわかるけど、だからってなんで他家のメイド?
学院雇用って条件で探してるんじゃなかったのか?
この場合、契約はどうなるんだよ…」
ルルが疑問符を飛ばしながら、セルに問いかける。
「契約としては学院をすっ飛ばして僕と直接になるね。
まぁそれはともかくとして、彼女を採用した理由なんだけど。
まず第一に、僕の幻影も彼女には効果がなかったか「「えええぇ!!??」」ら」
セルの言葉を遮る様に、シャフとルルの驚愕の声が被さった。
「嘘でしょう?
セルの幻影を見破った者なんて、これまでただの一人として居なかったではないですか」
「僕も驚いたよ。でも事実だしね。
それで第二に、僕の攻撃魔法を回避した」
「「…………………」」
シャフとルルは言葉も出ないようだ。
セルは苦笑交じりに肩を竦める。
「最後に、彼女は僕達の探し物の名を知っていた」
途端に室内は剣呑な空気に支配された。
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