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てっきり魔法の技量力量も確認されると思ったが、それは追々で構わないとの事だった。
なら顔合わせも済んだ事だし、助手として採用……と言うのも変な話だが、その立場を貰えると決まったのなら一旦戻りたい。
それを言うと、セルはもう少し待ってくれと言う。
どうやら他にもセルの仲間っぽい人が居るとの事で、その人達にも先に紹介しておきたいと言われてしまった。
まだ時間に余裕はあるので構わない。
ゆっくりしててくれとフィーに告げると、セル自身は机に戻って書類仕事をし始めた。
改めて室内を見回す。
結構広めの室内にあまり調度品は置かれていない。
今セルが書き物をしている執務机と、その背面の壁にぎっしりと本が詰め込まれた本棚があるが、それだけだ。
執務机の方はカザロの部屋にあった物の様な華美さはないが、重厚な高級感のある物が置かれている。
本棚の方は棚自体もしっかりした造りのようだが、此方は詰め込まれた本の方に目を奪われた。
この本だけでかなりな資産価値があるのは間違いない。
それ以外には客人を迎える為の応接セットもなく、窓のある壁際に椅子が数脚おかれているだけ。
フィー自身もまだ幼いと言って良い年齢だし、セルもフィーより少し年上かな? と言う感じなので、ただでさえ広い室内は酷くがらんとしていて寒く感じる程だ。
天上も高いので余計にそう感じられてしまう。
尤も、フィーにそう見えていると言うだけで、さっきのカザロの様子から、セルはフィー以外の人からだと大人に見えているのだと思う。
セルが走らせるペンの音だけが微かに響く室内で、フィーはふと考え込んだ。
(そう言えば中断してしまっていたけど…。
セル…と言うか仲間が居るのならセル達と言うべきかしら。
まぁそれは一旦置くとして…。
彼等は隣国のリッケ侯爵家と縁があるのは嘘ではないのなら、隣国の貴族と言うのは間違いないのよね?
となると…胡散臭く感じてはいても最低限の礼は付くすべきね。
少なくとも呼び捨ては良くないわ。今後はちゃんと敬称をつけるようにしましょう。
それにしても探し物の為に、態々ボーカイネン王国に?
…けれどかぼちゃラ…んん…『ガヴォッドラーヘン』ってヒロイン以外には必要なさそうなんだけど……。
確かあれってヒロイン以外が持っても何も反応しない…と言うか、下手すりゃ壊れるとかって設定があったんじゃなかったっけ…。
あぁ、もう…設定とか結構読み飛ばしてたのが悔やまれるわ。
でも考えるとこれは願ったり叶ったりでは…?)
フィーは立ったまま考え込んでいたが、それに気づいたセルが声を掛けてきて思考が中断される。
「何もない部屋でごめん。
そこの椅子にでも座ってて」
「ぇ……ぁ…いえ、私は使用人と言っても平民でございます。
そのようなお気遣いは無用でございます」
深々と頭を下げると、セルは困ったように嘆息する。
「気にする必要はない…と言っても無駄なんだろうね。
そうだな…うん、僕が気になるんだよ。
だから座っててくれないか?」
部屋の主でもあり、助手としてこれから務める以上、フィーにとって彼の方が上司とでもいう立場になる。
なら上司の言には従うべきだろう。
「かしこまりました」
言に従って壁際の方へ進む為に頭を上げると、セルと視線がぶつかる。
彼は困ったような微笑みを浮かべていた。
「フィーさんは助手であって使用人じゃない。
対等にと言っても難しいだろうけど、そこまで遜られてしまうと僕の方が居心地が悪いよ。
もう少し……そうだね…手を抜いてくれると助かる」
セルの言い分は理解した。
しかし希望に添える自信はない……ないが、無視する訳にもいかないだろう。
「かし…んん、わかりました」
セルは諦め半分とでもいう様に、苦笑に更に苦みを加えた。
その表情に推しモードスイッチが入りそうになるのを必死に抑え込みながら、フィーは言葉を続ける。
「それと…なのですが、私に対し敬称は不要でござ……不要です。
セル様の御身分からも当然ですが、立場的にも呼び捨てにして頂くのが妥当だと思います」
「……………わかった」
酷く遅い了承にフィーは首を傾げたが、壁際に移動し窓辺で座っていると、再び思考の海に飛び込んだ。
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