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そこへ飛び込んでくる声があった。
まだ距離があるのか、少しばかり聞き取りにくいが、確かに聞こえる。
「(殿下ぁぁ!!)」
「(何処ですか!? 殿下!!??)」
チェポンとデービーの声だ。
呼びかける声と一緒に、ドタバタと荒い足音も近付いてきているので、間もなく姿も見えるだろう。
やっと見えてきた人影2つが、此方に気付いたようで駆け寄ってくる。
「殿下!!」
「なんでこんな状況??」
デービーはエネオットの横に到着するや、屈んでエネオットの衣服に着いた土埃を払っている。
チェポンも続いたが、目の前の光景に理解が追い付かないのか、暢気に首を傾げていた。
「お、お前達…殿下に何をした!!??」
デービーが大きな声を張り上げるが、フィーの姿に気付くと途端に顔色が悪くなり、口を噤んでしまう。
だがそんなデービーを、エネオットが制した。
メイドに投げ飛ばされたとか、その上そんな行動や言動を、両親である王や王妃から許可しているとか、流石に恥ずかしくて言い出せないのだろう。
プライドだけは一人前だ。
チェポンの手を借り立ち上がったエネオットは、忌々しそうに舌打ちをすると背を向けて去って行く。
デービーはそれを追いかけていった。
未だ立ち上がれないでいるドニカにも、チェポンが手を貸して立たせて一緒に去って行く。
後に残された4名は、無言でそれを見送った後、盛大にシンクロ溜息を落とした。
いや、正確にはアンネッタ以外の3名…である。
「もう、手を上げられたらせめて回避してよぉ…」
ミリリカが半泣きでアンネッタに訴える。
「本当でございます。
それに…情けない事でございますが、わたしでは何の御役にも立てない事がわかりました。
フィーさんだけが頼りです」
ニミーが嘆きつつも、フィーに祈りを捧げるかのように、胸元で両手を握り合わせて首を垂れた。
勘弁して欲しいとフィーは額を押さえるが、真剣な表情のニミーに言葉が出ない。
「やっぱりフィーが最強ね!
ふぅ…神様って意地悪だと思うわ。どうしてフィーが殿方じゃないのかしら…」
そんな事を嘆かれても困る。
フィーとしては、生まれ持った性質の一つでしかなく、自身の性別に問題を感じた事はない。
とりあえず目の前の3名は置いておくとして、邸に帰ってからの報告が大変そうだと、フィーは虚ろな目で天を仰いだ。
それから暫くは平穏な日々が続いた。
少なくとも登下校時と昼食時は平穏だった。
しかし校舎への立ち入りは、昼休憩の迎え以外は変わらず許可されないままで、登下校と昼食時以外は正直言うと気が気でない。
書庫での作業中も、手が止まりがちになっている。
「大丈夫?
なんだか心ここに在らず……って感じね」
隣の席で手写し作業に勤しんでいたスミナが、心配するように声を掛けてきた。
フィーはそれに小さく肩を落として答える。
「はい……。
校舎への立ち入りが出来ず……お嬢様の身の安全の確保が困難なのです…」
フィーの言葉にスミナは納得がいったのか、大きく頷いた。
「お嬢様って……あぁ! フィーはオファーロ公爵家に仕えてるんだったわよね。
つまりオファーロ公爵令嬢の身が心配って事?
……そう言えば、なんか4組の男爵令嬢がS組に凸ってるとか聞いたわ。
それ?」
流石はスミナ……耳聡くて苦笑を浮かべるしかない。
そうなのだ。
フィーが近付けないのを良い事に、隙を見つけてはドニカがアンネッタに突撃しているらしい。
大抵はネルローネやミリリカ、他のクラスメイトが阻止してくれるらしいのだが、それも万全ではない。
何度かその防衛網を掻い潜って、アンネッタと対峙してしまった事があると聞いていた。
そんな話をしていると、書庫の主モスリン・コーブ女史が新しく購入したらしい本を抱えてやってくる。
そしてフィーを見て微笑んだ。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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