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「殿下もどうか御励みになって」
悪気も何もなく、心底そう思っているのがわかる真剣な表情なアンネッタからの言葉に、エネオットは顔を真っ赤にして目を吊り上げる。
あまりの怒気に、ドニカの方がギョッとして半歩身を下げたくらいだ。
「貴様……どこまでも俺を馬鹿にして…」
俯きながら呟き、わなわなと握り拳を震わせたかと思うと、猛然とアンネッタに掴み掛ろうとした。
ミリリカとニミーは息を呑むが、当のアンネッタは目を丸くするだけで、身を引く事さえしていない。
このままでは確実に殴られると、慌てたのはミリリカとニミーの方だ。
「アンネッタ!!」
「きゃぁああぁぁぁぁ!!」
思わず手を伸ばしたミリリカと、顔を手で覆って悲鳴を上げてしまったニミーだったが、その後にアンネッタの声は続かなかった。
ミリリカとニミー、2人が恐る恐る目を向けると、そこにはエネオットの伸ばされた腕を逆手に掴むフィーの姿があった。
「あら、フィー。
もうあちらは大丈夫なの?」
アンネッタがあまりにいつも通り過ぎて、ミリリカとニミーは揃ってへなへなと脱力する。
「はい。
お嬢様をこのような場にお一人にしてしまい、申し訳ございません」
「大丈夫よ。
だって絶対にフィーは来てくれると思ってましたもの」
エネオットが今にもアンネッタに、掴み掛らんとしていた光景を目の当たりにしたフィーの方は、間に合わないかもと肝が冷え切ってしまったくらいだが、アンネッタからの絶大な信頼に、否定の言葉を飲み込むしかなくなった。
「………その……はい…」
だが腕を掴まれたままのエネオットは収まらない。
更に顔を真っ赤にして、今度はフィーに怒鳴りつけた。
「くそ、メイド風情が!!
俺を誰だと思っている!?
この国の王子だぞ!!
さっさとその汚い手を離せ!!!」
ギロリと睨まれて、エネオットの方がグッと息を詰める。
「っく……」
「王子殿下、どうぞ御控え頂けますようお願い致します」
「んあ!!??
下賤なゴミが俺に指図するな!!!
俺はお前に発言なんて許可してない!!
不敬だ! 不敬!!! お前なんか地下牢に放り込んでやる!!!」
エネオットは空いた方の手を、今度はフィーに伸ばした。
フィーはその手を、空いた方の手で軽く往なす。
そして考える隙も無い程瞬時に、くるりと反転しながら両手でエネオットの腕を掴み直し、身を屈めながらぐいと一気に引き下ろした。
途端にエネオットの身体は浮き上がり、あれよあれよと言う間にフィーの背中に乗り上がる形になる。そしてそのまま……地面に鈍い音を立てて落とされた。
どうみても一本背負いです、ありがとうございます……。
「くぁwせdrftgyふじこlpッ~~~~~~!!!!!!!!」
以前も聞いた気がするフレーズがエネオットの口から洩れた。
2度目ともなると新鮮味はないし、懐かしさも……あまり込み上げてこない。
とは言え、流石にその様子に身を引いて呆気に取られていたドニカも、思わず声を荒げた。
「ちょ!!
アンタなにしてんのよ!!??
エネオットぉぉぉぉ!!!」
慌てて駆け寄ったドニカが、地面にだらしなく伸びたエネオットを抱き上げる。
「アンタねぇ、エネオットは王子さ…………あああああああああああ!!!」
ドニカはエネオットの頭を掻き抱いたまま、フィーを指差して固まった。
その指先がプルプルと震えている。
「あ、あぁあ……あンタ……あたしを突き飛ばしたメイドぉぉぉぉ!!!???」
躱した覚えはあるが、突き飛ばした記憶はないのだが……と、ちょっぴり遠い目をしてしまうフィーであった。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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