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擦り切れたワンピース姿の女性だ。
彼女はまるで誰かに突き飛ばされたかのように、地面に後ろ手をついている。
フィーは直ぐに誰かわかった……ナホミだ。
突き飛ばしたのは誰だろうと周囲を見回すが、誰もいない。
なんなら争っていた気配もなかった。
誰かが争っている気配を察したなら、フィーが通る道を変えていた筈である。
「お、お嬢様、申し訳ございません!!」
急に叫ぶナホミに、フィーだけでなくアンネッタやミリリカも首を傾げた。
叫んだ彼女は立ち上がろうとして、ついた手に力を入れた途端、痛みが走ったらしく顔を顰める。
フィーは警戒を緩めないまま、近づく。
まさか、様子を窺いながらもこれまで接近出来なかったナホミに、こんな形で会うとは思っていなかった。
「大丈夫ですか?」
自分以外の存在にやっと気付いたのか、ナホミは痛む手を庇って地面にへたり込んだ姿勢のまま、頭を深く下げた。
「す、すみません!!」
顔には怯えの様な表情が浮かんでいるが、フィーは何となく違和感を感じた。
とは言え、先にアンネッタとミリリカを四阿へ向かわせる事を優先する。
「立てそうになければ少しお待ちを」
フィーはナホミにそう言いおいて、アンネッタとミリリカを振り返る。
「先に向かいましょう」
「でも…」
アンネッタが困ったように呟くが、フィーは首を横に振る。
「此方の事は、私が後程対応いたします。
しかしお昼休みは有限です。
ゆっくりお食事をなさってくださいませ」
アンネッタとミリリカは頷くと、フィーの先導に続いて歩き出した。
フィーは二人を四阿送り、ニミーに託してからナホミのいる場所へ戻る。
彼女は未だ腕を庇う様にして、地面にペタリと座っていた。
「お待たせしました。
手を貸しますので立てますか?」
フィーは周囲の様子に注意を払いながら、ナホミに手を差し伸べる。
「す、すみません…迷惑を掛けちゃったみたいで…」
彼女は神妙な様子で、差し出されたフィーの手を借りて立ち上がった。
それからナホミはきょろきょろと、辺りを見回しだす。
「あの…さっきのお嬢様達に謝りたいのですが…」
「申し訳ございませんが、御食事の邪魔になりますので御遠慮ください」
「ぁ…そ、そうですよね…あたしったら…」
儚げな苦笑を浮かべるナホミを、フィーは半眼で見つめる。
(何が目的だ?
誰かに突き飛ばされた様だったけど、たぶんそう見せかけただけよね。
彼女以外に人の気配はなかった。
『お嬢様』って叫んでたから、ドニカに突き飛ばされたと印象付けたかった?
口が軽い人だとは思ってたけど、もしかして悪意もあるって事?)
ナホミの考えも行動も、何もかもがさっぱりわからない。
「あの、じゃぁせめてお名前を教えて貰えませんか?」
「貴方が知る必要はございません」
胡散臭すぎる。
アンネッタとミリリカの名を口にしないようにしたのは正解だったかもしれない。
はっきり言うと、ドニカ以上に警鐘が鳴り響いている感じだ。
「あ、は…はい。
すみません」
「手が痛む様ですし、控室に行きましょうか」
「え……控室…ですか?」
やっぱり何がしたいのかわからない。
保健室に行きたかったのだろうか…しかし保健室は学院生と教職員の為のモノで、使用人が利用して良い場所ではない。
「あ、の……も、もう大丈夫ですので、あたしはこれで」
ナホミはフィーの手を振り払い、逃げる様に走り去って行った。
(なんなの…あれは……意味不明過ぎる。
と言うか、手…振り払ってたわよね? 痛そうにしていたのも演技だったって事?
あれ…でも待って…。
茶色の髪に茶色の瞳、そして男爵令嬢……ナホミも該当するんじゃ……。
学院生ではなくメイドとして此処に居るから、つい盲点になっていたけど、もしかしてドニカよりヒロインっぽく見えるかも?)
一方その頃、四阿の方では悶着がおきていた。
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