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「近付かないといけないような場面を思いつけませんわ。
お話ししないといけない事もありませんし。
仕事については「んん!!」……」
フィーが咄嗟に割り込み、アンネッタの言葉を遮る。
『あら』とアンネッタは優雅に自分の口元を手で覆った。
横ではネルローネがわなわなと怒りに震えて、ギリギリと歯噛みしている。
そのせいか、またも口調が残念な事になった。
「あんたねぇ……そんなバカげた伝言、ホイホイと持って来るんじゃないわよ!
頭はないの!?
考える脳がないの!!??
言われるまま動くだけなら、使用人に頼めば済むの!! いいえ、なんなら鳩でも犬でも、手紙を括りつけるだけで事足りるわ!!
仮にもあんたは側近でしょう!?
側近ならアレの行動が不味いってわかりなさいよ!!!
大体、普段からずっと何もかもアンネッタやわたしに押し付けてばかりで、あいつは何をしてるの!?
ちょっとその辺詳しく教えなさい!!」
ネルローネの剣幕に、思わず仰け反りかけたデービーだが、捻り上げられた腕に自分から変な力を加えてしまい、痛みに呻いた。
だがこれ以上単なるメッセンジャーを痛めつけた所で、何も得るものはない。
アンネッタとネルローネから許可を出され、無事解放されたデービーは、這々の体で逃げ去って行った。
疲れ切ったのか、ぐったりと顔色も悪く、アンネッタに申し訳なさそうにするネルローネを、先にミリリカと共に帰らせる。
それを見送ってからフィーとアンネッタの乗る馬車も動き出した。
ガラガラと規則正しく刻まれる車輪の音を聞きながら、フィーは口を開く。
「お嬢様、王陛下や王妃陛下からの御言葉もあり、王宮での執務が断り難く、またそれも試練の一つとお考えなのは存じております。
しかし、学院生徒会の仕事は、あくまで生徒会メンバーの仕事で、お嬢様が手出しする必要もありませんし、手出ししてはいけません」
このところ聞く事のなかったフィーからの小言に、アンネッタは目に見えて萎れた。
「ごめんなさい、つい……」
「困る人が居るかもしれないと、お考えになったのでしょうが、それなら困らせて差し上げなければいけないのです。
でなければ、彼等の成長を妨げる事になります。
そうして壁にぶち当たり、誰かの手を借りる事無く解決してこそ、大きく羽ばたけるのです!」
ハッとした様にアンネッタは顔を上げ、直ぐにその瞳を潤ませた。
「そ…そうね、本当にそうね。
わたくしったら……皆様が成長なさるチャンスを潰してしまう所だったのだわ!
あぁ、やっぱりフィーは凄いのね。
おかげで目から鱗が剥がれ落ちたかのように、気分が晴れやかよ」
フィーはにっこりと頷く。
(本当に素直で優しく成長して下さって、本当に素晴らしい…フィー自慢のお嬢様です。
あんなロクデナシ共に、お嬢様を食い潰させる訳にはまいりません。
精々困り果てて、自爆して下されば万々歳…)
アンネッタから視線を外し、少しばかり考え込んだ。
(………でも、とうとうゲームシナリオも動き出した。
逸脱はどう転ぶかわからないから、やんわり回避と言う路線に今のところ変更はないけど……そう言えば最終ボスを倒すために必要なモノを、そろそろ探さないといけないわね。
流石にあれはやんわりと回避~なんて言って、放置しとく訳にはいかない。
何とかしてヒドイン側の手に渡るのは阻止しないと……。
発見場所は何処だったかしら……)
それから数日、フィーとアンネッタの周辺は平穏な日が続いて居た。
少なくとも過日の様に、誰かが突撃してくると言う事もなく過ごせている。
ただ、やはりと言うか…エネオット達の噂は流れて始めていた。女性にウザ絡みしているとか何とか……。なんにせよ、あまり良い噂でない事は確かだが、その相手と言うのが誰なのかは、諸説あって良くわからない。
抜き打ち的に4組の教室を確認に行った事があるのだが、偶に所在がわからない事があり、相手がドニカである可能性も当然否定出来ない状況だ。
まぁ、ドニカだろうが誰だろうが、アンネッタと公爵家に害が及ばなければ問題ない。
アンネッタがエネオットに執着したり、恋心を抱いているなら兎も角、それは回避出来ている。
とは言え後手に回るのも癪なので、色々と補うべく行動しているところだ。
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