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険しい表情のネルローネの後ろにはミリリカの姿もあって、どうやら彼女達は授業が終わって直ぐ、教室を出ていたようだ。
彼女達に、アンネッタはニコリと微笑む。
「もう終わったの?」
「えぇ、先生に呼ばれて行ったけど……聞いたわよ。
わたしとミリリカを呼ぶよう頼んだのは貴方なんですってね」
ネルローネの冷たい視線は、デービーに固定されたまま動かない。
「どう言う事?」
「それが……」
ネルローネの後ろに控えていたミリリカが話し出す。
本日最後の授業が始まる前にネルローネとミリリカは、教師から授業が終わったら直ぐに教員室に行くようにと言われたのだが、いざ行ってみれば、どの教師も読んだ覚えはないとの事だったそうだ。
憤慨しながら教室に戻る途中、指示を伝えてきた教師が歩いて来たので捕まえて尋ねると、どうやら伝言を頼んだのはデービーだと言う事がわかったのだと言う。
つまり、彼は意図的にネルローネとミリリカを教室から引き離し、アンネッタが一人になるのを狙っていたと言う事だ。
答えないデービーの腕を、フィーは更に捻り上げる。
「ック、ァ…い、痛い…」
「さっさと御吐き頂けませんでしょうか?」
フィーは半眼になって問うが、残念な事にデービーからはその表情は見えていない。
反対に見える位置に居たネルローネとミリリカの方が、『ヒィッ』と震えあがってしまった。
「は、放せ!!
護衛、だとして、も…メイド如きがこんな事、許されるわけないだろ!!」
痛みに顔を引き攣らせながらも、抵抗を諦めないデービーに、ニッとネルローネが黒い笑みを浮かべる。
「フィー、わたしが許可するわ。
腕の一本や二本、暫く使い物にならなくても問題はない……そうでしょう?
貴方は護衛じゃないし、お兄様の側近と言っても、いつも口ばっかりだものね」
ネルロ―ネは確かの王女ではあるが、フィーが仕えているのはアンネッタであって、ネルローネではない。
その為アンネッタの方を見て指示を仰ぐ。
アンネッタはと言うと、若干呆れたような表情で、諦めた様に頷いた。
「承知しました」
フィーは淡々と腕を捻り上げ、指を一本逆関節にグイッと倒した。
「ギャァァァ!!」
この中で一番年下の、しかも小柄で華奢な少女であるフィーに、容易く捻り上げられデービーが情けない悲鳴を上げる。
「さぁ、さっさと話して頂戴」
教室内に居るのはこの件の関係者達ばかりで、他のS組の生徒は既に下校していて教室内には居ない。
それにデービーが少々騒いだところで、教室の扉はしっかりと閉じられていて誰も気付く事はないだろう。
その状況に、やっとデービーが白旗を上げた。
「わ、わかったッ、だからッい、痛い!!
先に放して、ックアァ!!」
「フィー、逃げられない程度に緩めてくれて良いわ」
フィーは再びアンネッタの頷きを待ってから、腕は捻り上げたまま指だけは解放してやった。
「……っはぁ…う、腕も放せよ!!」
「放して欲しかったら、先に説明して頂戴。
あの馬鹿兄の命だと言っていたけれど、まさかそれもアレの指示なの?」
自身の兄で王子でもあるエネオットを捕まえて、『馬鹿兄』だの『アレ』だのと言い放つネルローネに、デービーは不快感を隠そうともしないが、やがて項垂れ、ぽつりと話し出す。
「呼び出したのはわたしの思い付きだ。
王女達が居ては間違いなく接近を阻止するだろう?
だからいない間に済ませようと思ったんだ。
殿下はアンネッタへの伝ッ!!!!」
デービーの言葉が声にならない悲鳴で途切れる。
理由は簡単だ。フィーが再び無表情で、指へ逆関節の刑を行ったからだ。
「お嬢様は、ノクレンダ侯爵令息様に名を呼ばない様にとおっしゃっております」
「わ、わかった!!」
はぁと脂汗を流しながら、デービーは息を吐く。
「オ…オファーロ嬢への伝言を、わたしに命じただけだ」
「へぇ、そう。
どんな伝言かしら?」
ネルローネが畳み掛ける様に問う。
「学院内で近付いてくるな…と………それと…生徒会の仕事もしておけ……と…」
デービーの言葉に教室内は静寂に包まれた。
別に感心した訳でも称賛した訳でもなく、ただただ呆れ返っただけである。
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