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印象は……まぁ女の子としてなら異性には好まれるかもしれない。
健気で儚げで、愛嬌のある顔立ちとも相まって、男性の庇護欲を掻き立てるだろうの思えるからだ。
「ナホミちゃんとはさっき会ったばっかりだけど、頑張り屋さんなのはわかるよ」
「ほんと、愚痴くらい小母さん達がいくらでも聞いてやるからさ、無理はするんじゃないよ?」
「ありがとうございます。
こうして聞いて貰えるだけで、あたし、頑張れます」
だが別の視点から見れば、仮にも令嬢付きの使用人ならば、その口の軽さはどうなのだと突っ込みたくはなる。
同じ家の使用人同士なら百歩譲ろう。
しかし御婦人の言っていたように『さっき会ったばかり』と言うのが本当なら、とてもではないが肯定出来ない。
見ず知らずの人間に、主家の事をべらべらと喋ったと考えられるからだ。
まぁ最初から敵意満載で見るのは控えよう。
思い込みで視野が狭くなっては、いざと言う時に判断ミスを犯しそうだ。そう考えたフィーは、静かにその場を離れた。
そろそろ控室に戻らないと、アンネッタの授業の終わりに遅れてしまう。
ミリリカやネルローネが居るとは言え、学院はアンネッタにとっては好ましくない人物も多い。
出来る限り隙を見せない為にも急がないければならない。
ちょっと洗い場で粘りすぎたと反省しながら、アンネッタの教室に向かっていると、1年S組で何か騒ぎが起きているようだ。
思わず自分に舌打ちをしてしまうが、反省は後にすれば良い。今は一刻も早くアンネッタの元へ向かわなければ…!
慌ててS組に駆け込むと、白けた表情のアンネッタの前に、長身の男子学生が立っていた。
蓼藍色の肩までの柔らかそうな癖毛に、底意地の悪……んん…神経質そうな横顔。そして緑色のタイ。
(こいつかぁ……最初にお嬢様に凸ってきたのはこいつなのかぁ…)
その髪色、学年から察するに、彼は攻略対象の一人だと思われる。想定通りなら、名をデービー・ノクレンダと言う筈だ。
ノクレンダ侯爵家の長男で、エネオットの側近でもある。
但し、武芸はからきしなので、専ら事務系の補佐をしていると言う設定で、担当としては石頭ななんちゃってチャラ男…と言う所である。
フィーはすぐさまアンネッタの近付き、慇懃に一礼する。
「あぁ、フィー、やっと来てくれたのね」
アンネッタが自身の机の前に仁王立ちするデービーを無視して、フィーに微笑みかける。
「遅くなり申し訳ございません。
御予定に変更はございませんか?」
「えぇ、このまま帰邸するわ」
フィーとアンネッタとの遣り取りに、仁王立ちで固まっていたデービーが目を吊り上げた。
「アンネッタ!!」
掴み掛らんばかりに身を乗り出してきたデービーの前に、フィーが割り込む。
「ノクレンダ侯爵令息様、御控え下さい」
デービーは更に目を吊り上げてフィーを睨み付ける。
「お前……メイド風情がしゃしゃり出てくるな!!」
デービーが手を振り上げて、フィー目掛けて力任せに振り下ろす。その手を片手で軽々と受け止め、そのままぐるりと後ろ手に捻り上げた。
そのままグイと体重をかけて抑え込む。
「再度申し上げます。
ノクレンダ侯爵令息様、御控え下さい」
「っく……ゴミの分際でこのわたしに手を掛ける等、許せん!!」
腕を捻り上げられ、片膝を折る事を余儀なくされているのに、口だけは減らないようだ。
だが、それがアンネッタの怒りを誘った。
「許せないのは、ノクレンダ様、貴方の方ですわ。
まずわたくしの名を呼ぶ許可を、貴方に出した覚えはありません。
そしてフィーはわたくしのメイドであり、護衛でもあります。
その彼女を侮辱するような物言い……失礼にも程がありましてよ。侯爵家の方にはしっかりと抗議させて頂きますわね」
其処へ教室に入って来た……いや、戻ってきたと言うべきか…ネルローネが、足取りも荒く近づいてくる。
「何事!?
デービー・ノクレンダ……3年の貴方が何故ここに居るのかしら?」
「……わたしは殿下の命に従って来ただけです」
仮にも王女の問いに、デービーは苛立ちを隠しもせず吐き捨てる様に言い放った。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
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