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ヒドインの名と家がわかった。
そして警備兵長は、ヒドインことドニカ・モーソーには付き添いのメイドが居ると言っていた。
名はナホミ・バナカ。
容姿や特徴を聞きそびれた事に、思わず口をへの字にしてしまったが、付き添いなら授業中は控室にやってくるはずである。
警備兵詰所から然程離れていない場所に置かれた使用人控室に、フィーも向かう事にした。
昨日は入学式典だった事もあり、控室も静かなものだったが、今は三々五々お喋りに興じている。
従者よりメイドの方が多い事も影響しているのだろうが、控室の奥の方に、ミリリカのメイドであるニミーが本を読んでいるのを見つけた。
「失礼します。隣、宜しいでしょうか?」
フィーが声を掛けるとニミーが顔を上げた。
「あら、昨日の…確かフィーさん…だったわよね?」
「はい」
控室ではイメネアと共にいる事が多いのか、所在について聞かれた為、今日は出かけていると伝えた。
当たり障りのない話をしながらも、フィーが周囲を気にしている事に気付いたニミーが問いかけてくる。
「誰か探してるの? 何だか周りを気にしてるみたいだから」
「ぁ~……そうですね…ニミーさんは他家の事もお詳しいですか?」
「どうかしら……知らない家の事も多いと思うわ。
仕えてる主人に接点が少ない家の事だと、あまり知らないかもしれない……どこか気になる家があるの?」
フィーは声を潜めて、昨日の出来事を話した。
だんだんと、ニミーの表情に呆れが滲み始める。
「そんな御令嬢が居るの…?」
「昨日、がっつり絡まれました」
「そう……強烈ね…わたしも気を付けておくわ。ミリリカお嬢様に万が一があっても困るし」
「いえ、こちらこそ、急にお訊ねして申し訳ありません。
男爵家と言う爵位でありながら、そこそこの資産を保有するケチ……んん、倹約家と言う事くらいしか把握しておらず…」
溜息交じりに呟くと、ニミーが目を丸くした。
「驚いた…イメネアの言っていたとおりね」
フィーの与り知らぬところで、何を言われているのやら……。
何にせよ、ニミー以外には訊ねたりしない方が良いだろう。何処でどう藪をつついてしまうかわかったものではない。
話を聞くにしても、他家のメイドや従者の為人が、朧気にでもわかってからの方が無難そうだ。
話声でざわついていた控室だが、まだ昼休みには早い時間にも拘らず、バタバタとし始める。
仕える令息令嬢が昼食をとる為の場所を、確保しなければならないからだ。
その為控室は、このタイミングで慌ただしくなる。
ナホミが未だに現れない事は気に掛かるが、アンネッタがミリリカと昼食をとると言っていたので、ニミーと共に適切な場所の確保を優先する。
ちなみに…食堂で食事をとる事も可能だが、そこを利用するのは付き添いのメイドや従者がいない令息令嬢だけと言っても過言ではない。
なにしろ食堂のある場所が校舎から少し離れて奥まっている上に、建物自体が小さくかなり狭いのだ。
フィーとニミーは中庭にある四阿の一つを確保する事に決めた。
ちょっとした迷路のように、春咲き薔薇の生垣が周囲にあるので、人目を気にせずに食事が出来るだろう。
フィーとニミーは、ポケットから小さなマジックポーチを取り出す。
設置されているテーブルの上に、それを置き、中の物を取り出し始めた。
フィーが魔法収納を使わず、マジックポーチと言う小型のアイテムボックスを使っているのは、無駄に目を付けられないようにする為である。
この世界には魔法があり、平民でさえ細やかな生活魔法程度は使える。しかし収納を始めとする空間魔法等の一部の魔法は、貴族でさえ使える者が少なく、どうして目立ってしまうのだ。
昨日アンネッタの鞄を近道の途中で収納に保管したが、当然周囲に人が居ない事を確認した上で使っている。
サンドイッチやサラダを器に盛り付けていると、ニミーがフィーの手元を覗き込んできた。
「流石公爵家ね。
見た事のない野菜だわ」
どれの事だと、フィーも手元の器に目を落とす。
レタスにプチトマト、茹でたコーンに玉葱の薄切りという、どう見てもド定番の野菜達なのだが……。
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