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学院へ着くとフィーはアンネッタに付き従い、1年S組前に到着すると鞄を渡した。
それを受け取ったアンネッタが教室に入って行くのを見送る。
一応教室内の様子を見るが、先に席についていたミリリカを見つけたようで、其方に近付いて行くのを確認した所で、フィーは歩き出した。
初登校の1限目だからか、特に授業等は割り振られていない。入学式典当日に話しきれなかった注意事項の伝達や、クラスメイトの自己紹介等に充てられるのだろう。
ならば教職員もいる筈……危険は少ないと判断して、フィーは警備兵詰所に向かった。
昨日も使った、令息令嬢に付き従ってきた使用人達の控室がある棟の、一番出入り口に近い場所に『警備兵詰所』がある。
その戸口を守る様に立つ警備兵に声を掛けた。
「あの、職務中に失礼致します。
少々お尋ねしたい事があるのですが、今お時間宜しいでしょうか?」
兵士の一人が『何でしょう?』と反応してくれたので、用件を話すと詰所の扉を開いてくれた。
案内してくれる兵士の後に続いて中へ入ると、一番奥で他の兵士と話していた恰幅の良い中年兵士に近付いた。
どうやら彼が警備兵長らしい。
互いに名を名乗った事で分かった事だが、警備兵長はザザカン侯爵家の血筋のようだ。
聞けば侯爵家の後継を弟に押し付け、自分は気楽な警備兵独身生活を謳歌しているのだと笑う。
それはさておき、早速だが用件に入らせて貰おう。
昨日、新入生の令嬢に絡まれたのは自分だと明かし、今後の為にあの女子生徒の事を聞いておきたいと話した。
するとザザカン警備兵長は苦笑を浮かべる。
「なるほど…理由は了解した。
確かに知っておきたいと思っても、不思議には思わんな。
何と言うか……あの令嬢には参ったよ。
言葉が通じているのかいないのか……悉くズレた返答ばかりだったからな。
彼女に付き添ってきていたメイドの方には、何とか話が通じたので助かったよ」
女子生徒の名前はドニカ・モーソー。
モーソー男爵家の令嬢らしい。
爵位は低いが、かなり資産を保有していると言う話は聞いた事がある。
と言ってもあくまで男爵家としては…と言う注釈が付き、ケチ…げふんがふん…倹約家としても知られている。
ついでに話が通じるらしいメイドの事も聞いてみる。
「あぁ、確か名前は……ナホミ・バナカだったか…。
一応男爵家みたいなんだが、モーソー家とは違ってあまり余裕のない家みたいだな。
バナカ嬢の母親がモーソー家の出で、その縁を頼って働きに出ていると言う話だ。
とは言うものの、随分と前に亡くなっているみたいだな。今は父親と弟の3人暮らしだと言っていたよ。
世間話のついでに聞けたのはそのくらいだが……」
と言う事は、ナホミ・バナカは多分ヒロインだと思われる『ドニカ・モーソー』の従姉妹と言う事だ。
片や常識の欠落した山猿令嬢、片や常識ある苦労人の貧乏男爵令嬢……何と言うかかんと言うか……である。
そしてドニカは『自分が絡んだのは、自分のせいじゃない』と訳のわからない言い訳を並べた挙句、癇癪を起したらしい。
その為、話を聞いていた場所……怪我と打撲が酷かったので、学院の保健室で話を聞く事になったのだが、その一角が現在使用不可になっているとの事だ。
だが、わかった事がある。
どうやらドニカに付き添ってきたナホミの服装は、かなり古びたワンピースだったらしい。
メイドはそう言う服装だと思っていたのなら、同じメイドとは言えかなり上質な衣服を纏っているフィーが、メイドだと認識出来なかったのもわからなくはない。
実際、職員や警備兵に囲まれた彼女は、なかなかフィーの事をメイドだと理解出来なかったと言うのだ。
てっきり放任された山猿令嬢だと思っていたのだが、まさかまさかの箱入り令嬢だったのかもしれない。
(厳重に囲って箱入り……あ~、あそこまで行くと箱入りと言うより金庫入りかもしれないわね……まぁそれはさておき、娘を大事にするならするで、責任をもって人間としての教育は終えてから野に放って欲しいわ…)
フィーは疲れ切ったように半眼で、大きく溜息を吐いた。
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