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Project:Heart Sings ープロジェクト・ハートシングスー  作者: 翔峰 リアン


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第二話 願いを込めて

閲覧ありがとうございます。

この物語は作者の考えたことを物語という形で残すことにしました。

楽しんで頂けたら、嬉しいです。

【第二話 願いを込めて】


「うぉーーーーーーーーーー」

「りななーーーー!!さーやーーーー!!」

「私たち、シングスブライトでした!ありがとうございました!」


 シングスブライトデビュー日。先輩グループのライブ会場で初めての楽曲お披露目。沢山のペンライトと観客。ステージ上の照明。何もかもが莉奈とさやの胸に残る夢に見た映像がそこにはあった。優しいファンの方たちの温かい眼差しがシングスブライトに向けられ、名前を呼んでもらえる喜び、メンバーカラーのペンライトに切り替えてくれるファンの人たち。感謝が溢れ、うっすらと、涙を浮かべたが、流すのは我慢した。


 デビュー日から数日が経った。毎日のレッスンである。近々、先輩グループのライブにまた参加させてもらう。単独ライブはまだまだ先の話しである。小さなライブハウスを仮定してのフォーメーションの確認、ボイストレーニング、体力づくりを毎日行っている。事務所にはボイストレーナーもダンストレーナーもスポーツトレーナーもいない。外部から依頼してきてもらっている。グループによっても合う合わないがある。その為、グループに合わせてのトレーニング方法を取り入れるのが、この事務所の方法である。それだけ期待をしているのかもしれない。


「はーい!そこまで!ちょっと休憩しまーす!」

「ハァ、、、、ハァ、、、ハァ、、、」

「きっつ~、、、、。」


 シングスブライトの2人は休憩の声とともに、水分補給をして、壁に寄りかかりながら、座り込んだ。鏡張りの壁の中には2人の辛そうな姿が映っていた。足をマッサージしながら、首にタオルを垂らし、時に汗を拭いて息を整える。筋肉を全部動かしたような感覚だった。もうすでに筋肉が悲鳴を上げている。痛みと疲労が蓄積されていた。

 トレーナーはスタッフに呼ばれ、部屋には莉奈とさやの2人だけになった。


「ねぇ、りなな。今度さ、私も妖精界に連れてってよ。私を助けてくれた妖精にも会いたいし、お礼もしたいし、、、、、う~ん、それもそうなんだけど、私が見てみたいのかも。りななが言った場所に興味あるっていうかさ!」


 ネガティブだったさやの心の感情は安定していた。少しは感情の揺れはあるけれど、ゴーストに支配されていた時期の事を考えれば、大したことはない。さやはその事をすごく感じていた。あの事件から、ずっと、頭の中に記憶として残っているようだ。苦しかった日々から解放されて、好奇心旺盛でポジティブな一面が改めて、内面から息を吹き返していた。


「私も連れていきたいのはあるけど、聞いてみないとわからないよ。その後に返事してもいい?」

『さーやも、妖精界に連れて行っていいよ。マスターからも言われてるから。』


 リオの声だ。リオは莉奈の体から飛び出した。莉奈は驚いて、必死にリオの事をさやに隠そうとした。手をバタバタとさせて、急に飛び出した妖精を見せるのは良くないと思ったからだ。ただの興味本位でさやに害がないとも限らない。人間界で妖精が飛んでいたら、大問題になるのは確実だ。大変なことになる。莉奈は隠していたかった。妖精界の迷惑にならないようにと考えての行動だった。


『莉奈、普通の人には見えてないし、声も聞こえてないから大丈夫だよ。』

(そっかぁ。それなら安心だね。妖精界に連れていってもいいの?)

『いいよ。一緒に行こう!今から行こう!』


 さやは呆然としていた。急にジタバタしたと思ったら、無言になって、さやは心配そうに、顔を伺っている。その時、リオは莉奈の体に戻り、妖精界へと転移した。しっかりと莉奈はさやの腕をつかんで、離さないように。眩しい光が空間を包んだ。そして、いつもの扉の前だった。ここはいつ来ても恐ろしい場所だ。暗闇に浮かぶ一つの扉そして、無音がさらに恐ろしさを増す。

 さやは驚いている。ただ、莉奈と違うのは物怖じしない性格で、興味津々に歩き回っていた。


「うわぁ、すご~!!ここどこ~?妖精界?暗闇じゃーん!あの扉何~?光ってんじゃん!!っていうか、今から行くなら行くって言ってよ~。ビックリしたじゃん!!」


 さやは怒涛の質問攻めを始めた。驚いてはいるものの恐怖というものは感じていないようだ。さやは肝が据わっている。体現した感情をそのままストレートに言葉にしていく。さやは度胸があり、好奇心の塊で普段からこんな調子で、慎重派の莉奈とは真逆の性格だ。莉奈は目の前の扉を開けた。

 いつもの部屋に入ってきた。そこには大妖精マスターが出迎えてくれていた。いつもの格好で昭和のおじさん風で笑いがこみあげる。見た目からつい笑ってしまうのはキャラが立っているからだろう。


「ギャハハハ!おじさん、何、その格好!ちょっとさぁ、笑わせないでよぉ。」


 お腹を抱えて笑っているさやを見て、我慢していた莉奈もつられてしまった。そのままさやは笑いすぎて膝から崩れ落ちた。莉奈の体内からリオが飛び出し、場を収めた。さやはリオの姿を見て、さらに驚いた。やっと、妖精界に来たことを実感したらしい。初めて見た妖精がマスターで、妖精っぽくなかったからだろうか。リオの姿を見て初めて、妖精界に来たことに喜んでいた。リオは妖精界では人間でも見ることは出来る。ただ、人間界では選ばれし者しか確認できないようになってることを教えてくれた。人間には妖精が透明で見えないのだと。容姿端麗なリオの事を見つめるさやは急にリオの事を掴もうと手を伸ばした。リオは慌てて、羽でさやの手を避けるように飛び回った。それを無我夢中に追いかけるさや。


「触ったっていいじゃん!何もしないから~。」


 莉奈はそれを見て、さやを止めようとしたが、さやの好奇心には敵うわけがなかった。だんだんと、エスカレートする状況にリオはたまらず、莉奈の胸へと飛び込み体内へと逃げ込んだ。騒々しい状況が一変して、静けさが戻って来た。さやも悪気があってやっているわけではない。ただ、人よりも好奇心が強いだけで、気になったことはとことん触って確認したいという性格だからだ。さやの好奇心はまだまだ、尽きない。さやが周りを気にしてると思ったら、急に今度はワープ装置に乗って、近くにあった転移スイッチを押して、ワープしてしまった。慌てて、莉奈はワープ装置に向かって、さやと同じところに転移するように願った。

 転移後、辺りを確認すると、ノイズたちを追いかけまわしているさやの姿があった。ノイズたちは必死に逃げ惑っている。思いのほか、ノイズたちのすばしっこさの方が勝っているようだ。ただ、ノイズたちにも性格があるようで、のんびり屋さんのノイズをさやは見つけてしまった。そっと、後ろからさやは近づき、両手で抱きかかえて見せた。


「ぷにぷに~、柔らか~い!この子たち何~?かわいい~。」


 抱きかかえられたノイズは必死に逃げようとしていた。だが、さやの力強さに身動きも取れなくなっていた。他のノイズたちは距離を取り、こちらを見て様子をうかがっている。ノイズは人間に近寄ることはあまりない。ノイズにとって、人間とは負の感情を流し込む対象で、ノイズを触ると普通の人間は耐えることのできない程の痛みを心に受ける。普通の人間は…だ。

 マスターは驚き、分析を始めた。さやの頭にマスターが着地をして、サーチを始めた。波紋のようなレーザーをさやの体に通してみた。すると、さやの体内で何が起きてるか、はっきりとした結果が出てきた。一度、ゴーストに支配された人間は同じ現象では負の感情が弱まることがわかった。ノイズには大きく分けて4種類ある。自責の念、他責の念、拒絶の念、未練の念。この4種類のうち、1種類でも鎮静できれば、その者の受け取る力は弱くなる。さやの体内で何が起きているか。その答えが、自責の念のゴーストの鎮静化が進んでいるため、負の感情はそのまま受け取らないように体の組織が変化しているということだ。

始めはノイズも鳴きながら、抵抗していたが段々とさやに心を許していくように『ピィー―――!!』と鳴いていた鳴き声も『キュッキュッ』と鳴き方が変わっていった。まるで甘えるかのように。その後のさやとノイズはさやの頭の上に乗せたり、他のノイズたちもさやの近くまで誘われるように、近づいていた。さやに対しての警戒心が薄れていることを物語っていた。


「みんな可愛い~!ねぇ,見て見て~!」


さやは呑気にもこの状況を楽しんでいるようだった。マスターはさやを呼んで、一度部屋に戻ることを提案した。ノイズと別れることを名残惜しそうに渋々さやは部屋に戻った。


「さや、実はお前にもゴーストの鎮静化の手伝いをしてもらいたいと思ってるんだ。」

「うん、いいよ。だって、莉奈もいるんでしょ?私も誰かのために助けてあげたい。」


 すごくあっさりとしていて、莉奈は驚いていた。一般的には怖いし、未知の事に足を踏み入れるって躊躇するから。さやの好奇心にここにいる全員が助かったのかもしれない。その分、説明も省ける。話しを先に進める。さやの中で、どんな思いがあったのかはわからないが、ノイズの鎮静化を莉奈と共にすることが決まり、さやの分身である妖精を呼び出すことにした。さやの祈りと共に胸のあたりがピンクに光っていた。その光がポンと外へ飛び出した。光りも薄くなり、姿をはっきりと見えるようになった。さやは目を開き、目の前の妖精を確認した。


「あなたが、、、、私の分身、、、?」

「俺を起こしたの誰だよ。気持ちよく寝てたのに起こしやがって。」

「・・・・・・・・・・ねぇ!こいつ生意気なんですけど!!本当に私の分身なの!?」


 さやの体内から現れたのは口の悪い妖精だった。やんちゃっぽい若い妖精は姿を見せるや否やさやと口喧嘩を始めた。さやも口が回るほうだが、この妖精も達者である。分身なだけあって、似た者同士。莉奈は妖精に名前を聞いてみた。名は『ジン』というらしい。それにしても、ずっと口喧嘩をしている。


「2人ともストップ!」


口喧嘩を止めに入ったのはリオだった。リオは人間と妖精の関係を話し始めた。話しを聞いていると、莉奈はスッと心に入ってきた。リオが言うには妖精は心の扉で、人間は心の鍵だという。2人で力を合わせないと成しえないことが沢山あるのだと、リオは熱く語ってくれた。そして、話しを終えると、ジンの傍に行って、げんこつをジンの頭にお見舞いしていた。


「いってぇ~~~!!!!」

「ジンは、もっと言葉遣いを勉強しろ。」


2人で力を合わせなきゃいけないことが多いから、リオは言及したようだ。リオは妖精のまとめ役の様に、正義感と共に責任を背負っている。マスターが一番頼りにしている存在がリオのようだ。なんとか、口喧嘩は収まったようだ。


「次、ゴーストが活発化したら、頼む!今日はこの辺で戻るのじゃ!」


 マスターは帰宅を促した。リオとジンは莉奈とさやの体内へと戻った。莉奈が目を瞑り、人間界の事を考えるとまた光が包み、光が落ち着くと、いつものレッスン場の一角にさやと二人で座っていた。さやは興奮から覚めず、妖精界の事を嬉しそうに話し始めた。そして、ノイズの柔らかさを忘れることが出来ないようだ。

 以前から莉奈は気になっていたが、やはり、人間界と妖精界の時間軸が違うらしい。妖精界では1時間ぐらい過ごした気がしたのに、人間界では、まるで時間が止まったみたいに同じ瞬間へ戻っていた。それでも体の疲れだけは確かに残る。頻繁に行けば、体がもたない。

 

しばらくすると、レッスン場にトレーナーが入ってきて、レッスンを再開することとなった。体力づくりの筋トレを終えて、次はダンスレッスンだった。振付はすでに覚えて、あとは細かい所の修正をするばかりだった。指の先から足の先の角度やタイミングを一つ一つ確認しながら、進めていく。しばらくすると、体内にいるはずのリオとジンが飛び出してきた。


『なぁ、今何も起きてないし、暇だから事務所の中を散歩してきていいか?』

(いいけど、あまり遠く行っちゃだめだよ。)

『わかった。リオも行くよな?』

『行きたいけど…。』

(ねぇ、これって念話ってやつ?すごっ!こうやって聞こえるんだ~!?ジン、いたずらなんてするんじゃないわよ!あんたは特に気を付けなさいよね。)


リオは莉奈の方を見ながら、申し訳なさそうに見ていた。行きたいけど、莉奈に気を使って離れないようにしていた。さやはさやなりに心配をしているのか、素直じゃない。


(いっておいで!)

『ありがとう!』


リオとジンはレッスン場を飛び出していった。莉奈とさやは引き続きダンスレッスンを受けている。ただ、リオとジンが抜けた後の莉奈とさやのダンスがなぜか、上手く踊れない。大きくリズムが外れることはないが、微妙なズレを感じていた。莉奈は違和感を探っていた。そんな中で、トレーナーの様子もおかしくなってきた。


「はい、ストーップ!ストップ!どうしたんだ!?2人とも出来ていたことが出来てないじゃないかー!」

「ハァ、、、ハァ、、、すみ、、ません。」


 莉奈とさやは必死だった。何かがおかしいとは感じつつも思った通りに体が動かなくて、今は練習するしかなかった。そんな時、リオとジンが慌てて戻って来た。


『莉奈!さや!ゴーストだ!妖精界に行こう!』

(え?わ、わかった!少しだけ待って。)

「ごめんなさい、少しだけ休憩させてください。」

「それじゃ、5分休憩します!」


  莉奈とさやは妖精を呼び戻し、妖精界へ向かって祈りを込めた。妖精界から戻ってきて、1時間も経たずに妖精界へ舞い戻ることとなった。こんなに頻繁に鎮静する必要がこれからも続くことに恐怖していた。


ありがとうございました。

現実世界でも沢山のアイドルさんがいる中で、それぞれの場所で輝いて、ファンの人たちの光として、導いてくれる姿が美しいなぁと思っている作者です。

辛い時もあるかもしれないけど、灯台のように道を照らしてくれる存在だから、そういう背景を書きたくなってしまいました。

現実世界でもノイズとうまく共存してほしいと思います。丸っこくてぷにぷにで可愛いやつらですよ。(笑)

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