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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第1章 彼女いない歴=年齢だけど、ツンデレが隣にいた件。

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9/29

8 距離、二十センチ

翌朝の教室。

黒瀬の席の方をちらっと見たけど、

……目が合った瞬間、すぐ逸らされた。


うん、完全に怒ってる。


昨日の佐伯のアホ発言のせいだ。

いや、正確には──その後、俺が何もフォローできなかったせいかもしれない。


「おーい相沢、黒瀬まだ怒ってるっぽいぞ」

「見ればわかる」

「でもさぁ、あの顔は“本気で怒ってる”というより、“照れてる”っぽくね?」

「分析すんな」


佐伯がニヤニヤして肩を叩いてくる。

こいつ、もはや燃料投下装置だ。



昼休み、教室の隅で装飾用のリボンをまとめていたら、

黒瀬が近づいてきた。

机の上に視線を落としたまま、ぽつり。


「……昨日のこと、気にしてないから」


「えっ、ほんとに?」


「ほんと。別に、どうでもいい話だったし」


 どうでもいい……?

 その割に、耳の先がほんのり赤いけど。


「まぁ、佐伯が余計なこと言っただけだし。悪気はなかったんだ」


「悪気がなかったなら、余計にタチ悪いわね」


「……確かに」


 黒瀬の口元が、少しだけ緩んだ。

 あ、これ、ちょっと機嫌直ったやつだ。


 そのとき──

 机の上に置いたリボンが風でふわりと舞い上がった。


「うわっ、待って!」


 同時に手を伸ばした瞬間、

 指先が、黒瀬の手に触れた。


 一瞬の沈黙。

 距離、二十センチ。

 近すぎて、息の仕方がわからない。


「……っ」


 黒瀬が小さく肩をすくめ、

 リボンをそっと掴んで引き寄せた。


「……危なかったわね」


「え、なにが?」


「落ちそうだったでしょ。リボンが」


「……そっちか」


「他に何があるのよ」


 でも、その横顔は少し赤くて。

 目線が合わないように、わざと横を向いていた。



放課後。

教室のドアを閉めようとした時、黒瀬の声がした。


「……ありがと」


「え?」


「さっき、フォローしてくれたでしょ。佐伯くんの件」


「いや、別に」


「別にって言うの、あんたの癖ね」


「黒瀬の“別に”に比べたら可愛いもんだろ」


「……ふふ」


 かすかに笑った黒瀬が、窓の方を向く。

 夕日がその横顔を照らして、少し眩しかった。


 俺はその光景を見ながら、

 “ツン”の奥にある何かが、確かに柔らかくなっていくのを感じていた。

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