表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第1章 彼女いない歴=年齢だけど、ツンデレが隣にいた件。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/29

6 黒瀬葵、文化祭モードになる

文化祭準備一日目。

教室の黒板には「出し物:喫茶店」と大きく書かれていた。


「ねぇ、喫茶店ってさ……またベタだよな」

「だよなー、去年もやったし」


男子がぼやく中、黒瀬が手際よく進行表を作っていた。

実行委員らしく、まるで先生みたいな采配。

──ただし、俺の扱いだけは別格。


「そこ、ぼーっとしないで。机運んで」


「はいはい」


「“はい”は一回」


「はい」


どんな軍隊だよ。


でも、真剣に指示を出してる顔は、正直ちょっと見惚れる。

完璧で、きれいで、でもどこか必死で。


「……なに、見てるの?」


「いや、頑張ってるなーと思って」


「は? 別に、普通でしょ」


頬が、少しだけ赤い。

ぷいっと顔を背ける仕草が、ツンデレ教科書の表紙レベルだった。



昼休み、飾りつけの材料を買いに行くことになった。

当然のようにペア分けのくじを引いたら──


【黒瀬】×【相沢】


「……あのさ、これ絶対先生が仕組んだだろ」

「……さぁ?」


黒瀬は視線を逸らした。

耳がほんのり赤いのを、俺は見逃さなかった。



商店街の100円ショップ。

紙ナプキンや風船を選んでると、黒瀬が真剣な顔で悩んでいた。


「どっちのリボンがいいと思う?」


「え、珍しい。意見聞いてくるなんて」


「……別に。どうでもいいけど」


「どうでもいいなら聞かないでしょ」


「うるさい」


 口ではツンツンしてるけど、

 その指先がリボンを比べる姿は妙に可愛い。


「じゃあ、こっち。黒瀬の髪に合いそう」


「え……? な、なに言って──!」


 黒瀬が一瞬、動きを止めた。

 目を丸くして、すぐ顔を逸らす。


「そ、そういうこと言うと……誤解されるでしょ」


「誤解って、誰に?」


「……あたしに」


 その小さな声は、雑踏の中でもはっきり聞こえた。

 心臓が、ちょっとだけ速くなる。



帰り道。

手に持った紙袋が、二人分の影をつくって揺れていた。


「……ねぇ」


「ん?」


「文化祭、ちゃんとやってよ」


「もちろん。黒瀬の隣で恥かけないように頑張るよ」


「べ、別に隣とか言ってないけど!」


 そう言いながら、彼女は小さく笑った。


 その笑顔は、今まででいちばん“普通の女の子”だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ