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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第5章 ツンデレの『好き』が聞けるまで、俺はあきらめない。

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60 すれ違いの終わりに


放課後の廊下は、静かだった。

相沢蓮は、職員室前のベンチで深く息を吐く。


――今日こそ黒瀬と話す。


そう決めていた。

昨日、黒瀬が泣きそうな顔で逃げた理由は、蓮にはわかっている。

自分の気持ちを伝えられないまま、黒瀬が不安になるような態度を取ってしまった。


“どうせ、私なんて”


あのとき黒瀬が漏らした小さな声が、耳から離れない。


蓮は拳を握りしめた。

全部、ちゃんと話そう。

自分の気持ちも、理由も、これまでのことも。


そのとき、廊下の先から小さな影が見えた。


「……黒瀬」


黒瀬葵が、胸にぷりん太を抱えたまま歩いてくる。

泣いた跡はないが、目の腫れは隠しきれない。

それでも、彼女は真っ直ぐ蓮の前まで来ると、ぎこちない笑顔を作った。


「……さっきは、ごめん」


「俺のほうこそ。逃げたのは、お前じゃない。俺だ」


黒瀬の肩がピクリと震える。

蓮は、そっと一歩近づいた。


「あの日……ぷりん太を見せてくれたときから、気づいてたんだ。

 お前、すごく無理して笑ってるなって」


黒瀬は目を伏せ、ぎゅっとマスコットを握りしめた。


蓮は続ける。


「俺、怖かったんだよ。

 お前が誰か別のやつのところに行ったらって。

 だから、ちゃんと気持ちを伝えるのを、ずっと先延ばしにしてた」


「……相沢くんでも、怖がるんだ?」


「当たり前だろ。お前のこと、好きなんだから」


黒瀬が顔をあげる。

その瞬間、彼女の瞳が大きく揺れた。


「でも……私、上手にできないよ? 好きって言われたら、どうしたらいいかも……」


「それも知ってる。

 だから、全部言うよ」


蓮は、黒瀬の胸に抱えられているぷりん太をそっと指さした。


「それ、お前の母親が作ったリボンなんだろ?」


黒瀬は目を丸くした。

誰にも言っていないはずの話。


「なんで……知ってるの?」


「前に、泣きそうな顔で話してただろ。

 “なくしたくないものがある”って。

 そのとき、お前、ずっとそのリボン触ってた」


黒瀬は口に手を当て、震える息を吐いた。


蓮は少し笑った。


「俺、そういうとこよく見てる。無駄に。

 黒瀬が大事にしてるもの、大事にしたいって思ってる」


「……ずるい。相沢くん、そんなこと言ったら……」


黒瀬の目がまた濡れ始めた。


蓮はゆっくり手を伸ばす。


「泣くな。まだ言うことある」


黒瀬は慌てて涙をぬぐった。


「わ、わかった……聞く」


「黒瀬。ずっと言いたかったことがある」


蓮は真っ直ぐにその瞳を見る。


「俺、お前が笑うところが好きだ。

 でも、それ以上に……泣きそうなとき、無理してるとき、頑張ってるとき。

 全部含めて、お前が好きなんだよ」


黒瀬は唇を震わせ、絞り出すように言った。


「……そんなの、好きって言われたら……私、もう……」


蓮はそっと黒瀬の手を握った。

ぷりん太が小さく揺れる。


「次。

 明日、ちゃんと話がしたい。

 ちゃんと、俺から……告白する」


黒瀬の瞳が大きく開く。


「え……今じゃないの?」


「今でもいい。

 だけど、お前のために、ちゃんと場所を選びたい。

 逃げずに、誤魔化さずに。

 “好きだ”って伝えるための時間にしたい」


黒瀬は数秒黙り、そして――


「……明日、待ってる」


涙が一粒、頬を伝う。

それを蓮は親指でそっと拭った。


「泣くな。明日、ちゃんと笑わせる」


黒瀬は小さく笑った。


「相沢くん……ずるい。ほんとに」


蓮も少し笑う。


「お互い様だろ」


二人の手は、離れなかった。

放課後の静かな廊下に、黒瀬の小さな声だけが響く。


「……明日、ちゃんと聞く。相沢くんの“好き”」


蓮は深く頷いた。


そして――最終話が、静かに幕を開けた。

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