表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第5章 ツンデレの『好き』が聞けるまで、俺はあきらめない。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/62

50 気づきたくなかった想い

翌日。

朝の教室には、まだ眠たげな空気が漂っていた。


蓮が席につくと、黒瀬はすでに教科書を開いていた。

彼女の髪が肩にかかり、白い指がページをなぞる。

その横顔を見ていると、自然と息が詰まる。


(……なんだ、これ)


昨日からずっと、黒瀬が気になって仕方がない。

笑っても、怒っても、照れても──全部が頭に焼き付いて離れない。


「……なに、また見てるの?」


「……いや、目が合っただけ」


「ふーん。言い訳、下手ね」


黒瀬は視線をノートに戻しながら、ほんの少し唇を緩めた。

それが、どこか優しい笑みに見えて、蓮は視線をそらす。


(やばい。本格的に意識してる)


心の中でそう認めるのが怖かった。

けれど──目の前の黒瀬を見ていると、もう否定できなかった。


 


その日の放課後。

廊下でばったり白川咲とすれ違った。


「蓮くん」


「ん、咲。どうした?」


「ちょっと、いい?」


呼ばれて廊下の端まで歩く。

窓から差し込む夕日が、咲の髪を橙色に染めていた。


「この前の校外学習、楽しかったね」


「ああ。まあ、いろいろあったけどな」


「ふふ。……“いろいろ”、ね」


咲は小さく笑って、視線を落とした。

そして、ほんの少し間を置いて──言葉を続けた。


「ねえ、葵とは……どうなの?」


「どうって?」


「最近、すごく仲良いから。……付き合ってるのかなって」


「なっ──いや、違う! そんなんじゃない!」


「……そっか」


咲の声が、少しだけ寂しげに揺れた。

その表情を見て、蓮の胸がざわつく。


「咲……?」


「ごめん。変なこと聞いちゃったね。気にしないで」


そう言って笑うけれど、その笑顔は明らかに無理をしていた。

それでも、咲はいつものように優しく笑って言う。


「葵のこと、よろしくね」


「え?」


「たぶん、あの子──蓮くんがいないとダメだから」


 


その一言が、心に重く残った。


咲の背中が廊下の向こうに消えていく。

その姿を見送りながら、蓮は胸の奥に妙な痛みを感じていた。


(……俺、なにしてんだろ)


黒瀬のことが気になる。

でも、咲のことを見ていると、どうしても放っておけない。


 


──その夜。

机に向かってレポートを書こうとしても、文字が頭に入ってこなかった。


ふと、スマホが鳴る。

画面には「黒瀬葵」の名前。


《ねえ、今日のレポートの形式って、これで合ってる?》

短いメッセージと一緒に、写真が送られてきた。


《あってる。ちゃんと書けてる》

《そ。よかった》


たったそれだけのやりとり。

けれど、なぜか胸があたたかくなる。


しばらくして、黒瀬からもう一通メッセージが届いた。


《……ねえ、相沢》

《なに?》

《今日、ちょっと元気なかったね》


「……見てたのか」


スマホを見つめながら、小さく笑った。

そして《ちょっと考えごとしてただけ》と返す。


《そっか。……あんまり無理すんなよ》


その言葉が、じんわりと胸に染みた。


──黒瀬はやっぱり、優しい。


ツンデレなんて言葉で片づけられないほど、まっすぐで、繊細で。

その優しさに触れるたび、どうしようもなく惹かれていく。


(……これ、もう“友達”じゃないよな)


スマホを伏せ、天井を見上げる。

心臓がうるさいほどに鳴っている。


──だけど、まだ認めたくなかった。

この気持ちに気づいてしまえば、きっと“何か”が変わってしまうから。


 


次の日の朝。

黒瀬が教室に入ってくる。

昨日より少しだけ短く結んだ髪。

その後ろ姿を見ただけで、胸が跳ねた。


「おはよう、相沢」


「……お、おはよう」


「どうしたの。顔、赤いよ?」


「暑いだけだ」


黒瀬は不思議そうに首を傾げる。

その無防備な仕草が、ますます心臓に悪い。


(気づきたくなかった。けど──)


──俺、たぶんもう、黒瀬が好きなんだ。


心の奥で、静かにそう呟いた。


 


その瞬間、チャイムが鳴り、朝の喧騒が教室を包み込む。

黒瀬は席につき、いつものようにペンを走らせる。


蓮はただ、その横顔を見つめていた。

この気持ちを、まだ言葉にはできないまま。


 


──でもきっと、前の関係には戻れない。

そんな予感だけが、静かに胸に残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ