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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第5章 ツンデレの『好き』が聞けるまで、俺はあきらめない。

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49 彼女の“変化”

放課後の教室。

窓の外では、夕陽がグラウンドをゆっくりと染めていた。


「黒瀬、ちょっといいか?」


蓮が声をかけると、黒瀬はノートに走らせていたペンを止めた。

顔を上げた瞬間、ふわりと前髪が揺れる。


「なに?」


「校外学習のレポート、まとめるの明日までだって。もう書いた?」


「……まだ。あんたは?」


「昨日の夜に終わらせた」


「……真面目すぎでしょ」


ぼそっと呟きながらも、どこか笑っていた。

最近の黒瀬は、以前より柔らかく笑う。

無表情を装っても、目の奥に“優しさ”が滲むようになった。


──変わったな、黒瀬。


そう思うと同時に、蓮は少しだけ胸がざわついた。

その変化の理由に、自分が関わっている気がしてならない。


「……なに、じっと見てんの」


「いや。変わったなって」


「変わってない」


「嘘。前は“ありがとう”とか、絶対言わなかっただろ」


「い、言ってるし!」


「昨日“助かった”って言ってたのも珍しかったしな」


黒瀬は顔を赤くして、ぷいとそっぽを向いた。

その耳の先が、ほんのり染まっている。


「うるさい。……別に、言いたくて言ったわけじゃないし」


「へぇ、じゃあどういう気持ちで言ったんだ?」


「しつこい!」


教室に響く、黒瀬の声。

それを聞いて、咲がくすっと笑った。


「ふふ、相変わらずだね。蓮くん、からかいすぎ」


「いや、そんなつもりは──」


「そうやって否定するのがまたずるいのよ、相沢くんは」


咲が言葉に含みを持たせるように笑う。

黒瀬は気まずそうに席を立ち、カバンを手にした。


「……帰る」


「あ、黒瀬──」


呼び止めようとしたが、黒瀬は小走りに教室を出ていった。

残された蓮は、苦笑いしながら咲を見た。


「なんか怒らせたか?」


「ううん。むしろ照れてると思うよ」


「照れて、あれかよ……」


咲は窓の外を見つめながら、小さく呟く。

「……いいね、ああいうの」


「ん?」


「黒瀬が変われたの、蓮くんのおかげだと思う。

 あの子、前は誰にも本音を見せなかったから」


「……そう、なのか?」


「うん。ずっと“強がってる”の。

 本当は誰かに頼りたかったのに、それを見せるのが怖いだけ。

 ……だから、蓮くんがそばにいてくれて、少し安心してるんだと思うよ」


その言葉を聞いて、蓮の胸に熱が広がった。

気づけば、自分も黒瀬の存在に救われている。

彼女のツンも、不器用な優しさも、全部が心の中に残って離れない。


「……俺も、たぶん同じだな」


「え?」


「黒瀬がいたから、毎日がちょっと楽しい」


咲は一瞬、目を見開き──そして笑った。

けれど、その笑顔の奥に一瞬だけ、影が差す。


「……そうなんだ。うん、いいと思うよ。

 “そういうの”って、ちゃんと大事にしなきゃね」


咲の声は優しいのに、どこか遠く感じた。


──


その日の帰り道。

蓮は校門を出たところで黒瀬の後ろ姿を見つけた。


「おい、黒瀬!」


振り返った黒瀬は、一瞬驚いたように目を瞬かせたが、すぐに小さく笑った。


「……なんで追ってくるのよ」


「怒ったままだと思って」


「別に怒ってない」


「ならよかった」


二人で並んで歩き出す。

放課後の風が、街路樹の葉を揺らしていた。


「……さっきの話だけどさ」


「ん?」


「“ありがとう”とか、“助かった”とか。

 あんたが気にするほどのことじゃない」


「でも、そうやって言えるようになったの、すごいと思う」


「褒めないで。……恥ずかしい」


「じゃあ、“これからも言ってくれたら嬉しい”って言っとく」


「うるさい」


黒瀬は頬を染めながらも、笑っていた。

その笑顔に、蓮は小さく息をのむ。


──たぶん、今まででいちばん自然な笑顔だった。


「なに、見てんの」


「いや、いい笑顔だなって」


「ばっ……! もう、帰る!」


黒瀬は早足で歩き出す。

その背中を見つめながら、蓮は小さく笑った。


(……ほんと、変わったよな)


変わったのは彼女だけじゃない。

自分の中でも、何かが確かに動き始めている。


夕暮れの道を、二人の影がゆっくりと重なっていった。


──それが、恋の始まりだと気づくのは、もう少し先のことだった。

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