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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第1章 彼女いない歴=年齢だけど、ツンデレが隣にいた件。

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4 噂と、ヒビの音

次の日の朝、教室に入ると、空気が少しざわついていた。

誰かが俺を見て、ひそひそと囁く声。

正直、嫌な予感しかしない。


「なぁ、おまえ……黒瀬と昨日、一緒にいた?」


 案の定、佐伯がニヤつきながら聞いてきた。


「は? いや、たまたまだよ。帰り道が一緒になっただけ」


「へぇ〜? “たまたま”で、あの黒瀬葵と帰る? ありえるか、それ?」


「うるさい。ほんとに偶然だって」


 そう言いながら、黒瀬の席を見る。

 彼女は相変わらず本を開いていたけど……ページをめくる手が、ほんの少し震えていた。


 目が合った瞬間、ぱたんと本を閉じる。


「……なに、見てるの」


「いや、別に……」


 黒瀬は視線を落としたまま、小さく言った。


「昨日のこと……誰かに話した?」


「話してない。誓ってない」


「……そう。ならいいけど」


 その声が、いつもより少し弱く聞こえた。



 昼休み。

 屋上のフェンス越しに風を受けながら、佐伯が言った。


「黒瀬って、最近なんか変じゃね? 休み時間もよく席外してるし」


「……そうか?」


「昨日、おまえらが帰ったあとも、職員室のほう行ってたっぽいぞ。担任と話してたって」


 職員室?

 黒瀬が?


 あの“なんでも完璧にこなす”黒瀬が、先生と個人的に話してるのは珍しい。

 何かあったのか──そんな考えが頭をよぎる。



 放課後。

 いつも通り、教室の片隅でノートを閉じていた黒瀬が、ふいに俺の方を見た。


「ねえ……あんた、明日の朝ちょっと時間ある?」


「え? あるけど」


「じゃあ、屋上に来て」


「……え、なにそれ、告白?」


「は? 違う! 重要な話よ!」


「“重要”って言うと余計に気になるけど」


「うるさいっ!」


 珍しく強めに言い返したあと、彼女は小さく息を吐いた。


「……少し、頼みたいことがあるの」


 その表情は、いつもの冷静な黒瀬葵ではなかった。

 不安と、少しの迷いが混じったような顔。


 放課後の夕陽が、その横顔をやさしく染めていた。

 俺はただ、その光景に息を呑んだ。


 ──そしてこのとき、

 俺はまだ知らなかった。


 翌朝、屋上で衝撃の事態が待ち受けていることを。

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