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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第1章 彼女いない歴=年齢だけど、ツンデレが隣にいた件。

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3/62

2 ツンの裏にある、なにか。

翌朝。

教室のドアを開けた瞬間、またそれは始まった。


「……足音、うるさい」


「まだ一歩しか歩いてないけど!?」


「その“一歩”がうるさいのよ」


「理不尽すぎない!?」


 朝からこれである。

 俺、もうこの一週間で、黒瀬の“理不尽耐性”だけは鍛えられた気がする。


 そんなやり取りをしていたら、隣の席の佐伯がニヤニヤしながら囁いてきた。


「おまえら、ほんと夫婦みたいだな」


「やめろ、その地獄みたいな例え」


 黒瀬の眉がピクリと動く。


「……誰が、誰と夫婦ですって?」


「いえ、何も。佐伯が勝手に言っただけです」


「ふーん……」


 こっちを一瞥して、また視線を逸らす。

 その頬がほんの少しだけ赤いのは、気のせいだろうか。


 ……いや、絶対気のせいだ。



 昼休み。

 俺が購買のパンを片手に戻ってくると、自分の席の上に見慣れないシャーペンが置かれていた。


「ん? 誰のだこれ」


 持ち主の名前シールもない。

 でも、よく見ると、軸の根元に小さなシールが貼ってあった。


 ――アニマルプリン王国のペンギン、ぷりん太。


 妹が小学生のとき好きだったキャラだ。

 でも、こんなシールを貼るような子、クラスにいたっけ?


 そう思ってふと視線を上げると、

 黒瀬が、なぜかこっちを見ていた。


 ……いや、“見ていた”というより、“睨んでいた”。


「な、なに?」


「それ、触らないで」


「え、俺の机の上にあったんだけど!?」


「だからって触っていいとは言ってないわ」


「理不尽シーズン2来たな……」


「……返して」


 黒瀬は一歩近づいてきて、俺の手からシャーペンを奪い取った。

 その動作が、いつもよりずっと焦ってる。


「ぷ、ぷりん太……かわいいよな」


 つい、言ってしまった。

 黒瀬の手が止まる。


「……え?」


「いや、妹が昔好きでさ。アニメ見てたから知ってる。黒瀬も好きなんだな、こういうの」


 次の瞬間。


「ち、ちがうっ!」


 珍しく声を張り上げた黒瀬が、顔を真っ赤にして言った。


「べ、別に好きとかじゃなくて! たまたま……貼ってあっただけで!」


「貼ってあった……だけ……?」


「そう! 勝手に! 気づいたら!」


「誰が!?」


「……知らない!」


 そう言って、黒瀬は顔を背けた。

 その耳まで真っ赤なのを、俺は見逃さなかった。



 放課後。

 教室を出ようとしたとき、背後から小さな声が聞こえた。


「……さっきのこと、誰にも言わないで」


 振り返ると、黒瀬が窓のほうを向いたまま、ぽつりと呟いた。


「……別に、恥ずかしいことじゃないと思うけど」


「うるさい。あんたには、関係ないでしょ」


 そう言って、彼女はそそくさと教室を出ていった。

 でもその背中は、いつもの“完璧超人”とは少し違って見えた。


 ……なんていうか。


 普通の女の子、って感じだった。

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