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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第2章 ツンデレが本気でムカついてると思ったら、どうやら恋らしい。

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24 小さな約束

翌朝。

教室に入ると、黒瀬葵はいつもの席に静かに座っていた。

けれど、昨日までとは少し違う。

机の上には、小さな包み──例のパンが置かれている。


包装紙の端には、油性ペンで書き足された文字。

「ありがと」


たぶん、誰も知らない。

けど、彼女はそれを見た瞬間、

自然と口元がゆるんでしまった。


(……ほんと、バカ)


授業が始まっても、黒瀬の心はどこかふわふわしていた。



放課後。

窓の外は、初夏の光が少し傾き始めている。

黒瀬はカバンを肩にかけ、廊下に出た。


曲がり角で、偶然──

相沢蓮とぶつかる。


「おっと、ごめん。大丈夫?」

「……あ、うん」


ほんの一瞬、目が合う。

その瞬間、昨日までの沈黙が少しだけ解けた気がした。


蓮は、少し迷ってから口を開く。

「そういえば、こないだ……元気なかったよな。なんかあった?」


黒瀬は一瞬だけ視線を落としたが、

すぐに小さく笑ってみせた。


「別に。ちょっと、寝不足なだけ」

「そっか。でも、無理すんなよ」

「……あんたに言われたくないけど」


そう言いながらも、ほんの少しだけ優しい声。

蓮はその変化に気づいて、目を丸くする。


「お、今のちょっと優しくなかった?」

「気のせい」


黒瀬はぷいっと顔をそらした。

けど、耳まで赤くなっているのを、彼は見逃さなかった。



昇降口までの帰り道。

二人は、ぎこちなく並んで歩いた。

言葉が少ないのに、不思議と居心地が悪くない。


「……あのさ」

黒瀬が小さく切り出した。


「今度の体育祭、リレー出て」


「え? 俺?」

「ほかに誰がいるのよ。あんた、意外と足速いでしょ」

「そんなの、いつ──」

「体育のとき。……見てたの、ちょっとだけ」


「へえ。見てたんだ」

「調子に乗らないで」

「いや、なんか嬉しいなって」

「うるさい」


黒瀬は顔を背けたまま、早足で歩き出した。

その背中を見ながら、蓮は笑いをこらえきれなかった。


「じゃあ、ちゃんと走るよ。期待してていい?」

「別に期待なんかしてない。……応援くらいは、してあげてもいいけど」


「それ、応援してくれるってこと?」

「聞き返さないで。恥ずかしい」


頬をほんのり赤くしたまま、彼女は靴箱の前で立ち止まった。


「サボったら許さないから」

「はいはい、約束な」


蓮が指切りの形を作る。

黒瀬は呆れたように見ながらも、

その手を、ほんの一瞬だけ繋いだ。


──指先が触れた瞬間、胸の奥が静かに鳴った。


(……やっぱり、ずるい)

彼の隣は、どうしてこんなに暖かいんだろう。


「ほら、もう帰るわよ」

「はいはい」


いつもの口調。

けど、そこにあったのは、確かに“優しさ”だった。


昇降口のドアを開けると、

春の風が二人を包んだ。


夕陽の光の中、黒瀬の横顔が少しだけ笑っている。


(次は──ちゃんと伝えたい)


彼女はそう心の中でつぶやいた。

まだ遠い未来の約束みたいに、

その想いを胸にしまいながら──。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

黒瀬葵の“ツン”と“本音”が少しずつ近づいた第二章、

いかがだったでしょうか。

書きながら、相沢と黒瀬の不器用な距離に

何度も「もう素直になれよ!」って心の中でツッコんでました(笑)


次の第三章では、二人の関係に少し波乱と、大きな一歩が訪れます。

ぜひ、もう少しだけ見守ってください。


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