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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第2章 ツンデレが本気でムカついてると思ったら、どうやら恋らしい。

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20 壊れそうな笑顔

翌朝。

黒瀬葵は、いつも通り完璧に髪を整え、

いつも通り冷静な顔で登校した──つもりだった。


けど、教室のドアを開けた瞬間、

目に飛び込んできた光景で、その“いつも通り”は崩れた。


「だからさ、白川。あの映画、思ったより面白かったな」

「でしょ? 私、ああいうテンポ好きなんだ」


相沢蓮と白川咲。

ふたりが並んで笑っていた。


黒瀬は、なぜか心臓が一拍、跳ねた。


「……映画?」

気づけば、声が漏れていた。


咲が笑顔のまま振り向く。

「あ、黒瀬さん。おはよ! 昨日ちょっとだけ相沢くんと話しててね。

 “次観るなら何がいいか”って──」


「ふーん、そう」

黒瀬は短くそう言って、自分の席に向かった。

心のどこかで、何かがざらついていた。


(映画、だって? いつの間にそんな話を……)



一限目の数学。

先生の声は右から左へ抜けていく。

ノートを取る手が止まって、つい隣を見てしまう。


相沢は、真剣な顔で問題を解いている。

咲は、少し離れた席からちらちらと彼を見て、微笑んでいた。


(……なんなのよ、あの距離感)


胸の奥が、じんわりと熱くなる。

“ムカつく”のか、“悲しい”のか、自分でも分からない。



放課後。

黒瀬が鞄を肩に掛けた瞬間、

教室の外から、咲の声が聞こえた。


「相沢くん、ちょっとだけいい? 相談、昨日の続き」

「ああ、わかった」


──“続き”。

その言葉が、やけに重く響いた。


黒瀬は無意識に、廊下の隅に立っていた。

(……別に気になるわけじゃない。けど……)


ふたりは窓際で並んで話していた。

咲は笑顔で身を寄せ、蓮は少し照れたように視線を逸らしている。


その光景が、やけに眩しく見えた。


「……何それ」

小さく、唇が震えた。



帰り道。

夕焼けが街を染めている。

黒瀬はスマホを取り出して、相沢のLINEを開いた。

何か言おうと思っても、文字が浮かばない。


──『あんた、白川と仲良すぎ』

──『別に気にならないけど』

──『……やっぱ、ムカつく』


入力しては、消して。

結局、画面を閉じた。


(どうしてこんなに、胸が苦しいんだろ)


強がってるつもりだった。

でも本当は、怖かった。


あの人が、自分の知らない誰かと笑っているのが。


風が髪を揺らす。

涙なんて、絶対に落とさない。

そう決めていたのに──


「……っ、ばか」


その小さな声は、夕焼けに溶けて消えた。

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