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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第2章 ツンデレが本気でムカついてると思ったら、どうやら恋らしい。

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18 ツンデレ、休日に尾行する。

日曜の午前。

珍しく早起きした理由は、何となく──というか、たぶん、直感。


黒瀬葵はスマホを見ながら呟いた。

「……なんで朝から“咲”のストーリー更新してるのよ」


画面には、“ショッピングモールなう⭐︎”の文字。

そこに、ぼんやりと映り込む男の背中。


──それ、相沢じゃない?


一瞬、心臓が跳ねた。

(違う……たぶん、似てるだけ。似てるだけ……)

そう言い聞かせながらも、

気づけば着替えて、髪を整えて、家を出ていた。


「……別に、確認するだけ。確認。勘違いだったら笑えるし」


完全に言い訳である。



ショッピングモールに着くと、

本当にいた。


白川咲と、相沢蓮。

二人並んで、笑いながら歩いている。


(……うわぁ、本当にいた)

喉が乾くような感覚。

でも、目を逸らせない。


「……ちょっとだけ、見て帰る」

そう言いながら、黒瀬は柱の影に隠れた。


──五分後。

「なんか見てるこっちの方が怪しい気がしてきた……」

それでも足は止まらない。


咲が蓮の腕を軽く引く。

「ねぇ、あっち見よ?」

「お、おう」


その瞬間、黒瀬の胸がちくっとした。


(なにそれ……腕、引く必要ある?)


自分でも驚くほどムカッとして、

つい追いかける足が早くなる。



「うわっ……!」


人混みの中、黒瀬の肩が誰かにぶつかった。

バランスを崩して、前に倒れかけ──


「危ない!」


腕を掴まれた。

あの声。


「……相沢?」

「黒瀬!? なんでこんなとこに……」

「ち、違うのよ! その、偶然で──」

「偶然にしては、三回くらい目が合ってたけどな」

「っ……見てたの、知ってたの?」

「最初からな」


蓮が少し苦笑する。

その表情が優しすぎて、黒瀬は言葉を失った。


「別に、心配とかしてたわけじゃないの。ただ──」

「ただ?」

「……見てたら、イライラして」

「イライラ?」

「……咲が悪いのよ、なんか楽しそうで」


蓮はぽかんとした顔をしたあと、

ゆっくりと笑った。


「黒瀬、もしかして……嫉妬してる?」

「し、してないっ!」

「顔、めっちゃ赤いけど」

「うるさい!」


黒瀬はその場にしゃがみこんで、膝を抱えた。

「もう知らない……」

その姿に、蓮は苦笑しつつ、

そっと自販機のココアを差し出した。


「甘いのでも飲め。落ち着け」

「……ありがと」


缶を受け取る黒瀬の手が、ほんの一瞬、蓮の指に触れる。

その小さな接触に、二人とも微妙に息を止めた。


(やば……心臓、速い)


「な、なんか今日は……変な日ね」

「そうかもな」


咲が遠くからこちらに気づき、手を振る。

黒瀬は条件反射のように立ち上がり、

「……やっぱり私、帰る!」

と言い残して早足で去っていった。


去り際、顔は真っ赤のまま。


「黒瀬、完全にバレてるぞー!」

蓮の声が響いて、

モールの空気が少しだけ暖かく感じた。



その夜。

ベッドに寝転んで、黒瀬はスマホを見つめていた。

通知欄には、咲の新しい投稿。


『今日は楽しかった~⭐︎ 相沢くん優しい♫』


その下に、“いいね”を押した自分の指が震える。


「……なにやってんの、私」

枕に顔をうずめて、声にならない呻きを漏らす。


だけど、どこか、嬉しそうでもあった。

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