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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第2章 ツンデレが本気でムカついてると思ったら、どうやら恋らしい。

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17 葵の、初めてのモヤモヤ


別に、気になってるわけじゃない。

……うん。たぶん。きっと。絶対。


黒瀬葵は、そう心の中で何度も言い聞かせていた。


窓際の席から、相沢蓮と白川咲が笑い合っているのが見える。

教室の空気はいつも通りなのに、

自分だけ、ちょっとだけ違う世界にいるような気がした。


「ねぇ葵、これ見て」

咲がスマホを見せてくる。

画面には、蓮が昼休みに寝落ちしている写真。

机に突っ伏して、寝ぐせがぴょこんと立ってる。


「可愛いでしょ?」

「……どこが」

「ほら、こういうの撮ると和むじゃん。癒しってやつ」

「勝手に撮らないであげたら?」

「ふふっ、嫉妬?」

「ち、違う!」


否定した瞬間、自分でも声が大きかったと気づいて、

慌てて顔をそむけた。


咲はにやにや笑いながら口に人差し指を当てる。

「なるほどねぇ、分かりやすいなぁ黒瀬は」

「……分かりやすくない!」

「ううん、超分かりやすい」


黒瀬は何も言い返せず、鞄の中から無意味に教科書を取り出した。

(なんなのよ、もう……!)



放課後。

机の上に置かれた蓮のシャーペンが目に入った。

キャップが外れかけてて、なんだか不格好。


……つい手が伸びる。


キャップを直して、芯を少し補充して。

それだけのことなのに、心臓が変にドキドキしていた。


「何やってるの?」

後ろから咲の声。

「っ!」


「いや、その、落ちてたから……」

「へぇ。優しいんだね」

「違う!」


咲は小さく笑って、

「ねぇ、相沢くんってさ、そういう小さい気づきがある人、好きだと思うよ」

とだけ言い残して教室を出ていった。


黒瀬はその場に立ち尽くす。

(なにそれ。……そんなの、知らない)



帰り道。

イヤホンをして歩いていても、音楽が頭に入ってこない。

咲と蓮が仲良く話していた光景ばかりが浮かぶ。


(別に、相沢のことが好きとか……そういうのじゃなくて)

(ただ、ちょっと……からかわれるのがムカつくだけで)


そう思おうとしても、胸の奥がきゅっと痛む。


「なんなのよ、もう……!」

夜風にまぎれて、思わず声が漏れる。


歩道の向こう側に、蓮の姿が見えた。

彼はイヤホンを外して、こちらに気づき、笑った。


「黒瀬? 偶然だな」

「っ……なんでいちいち遭遇するのよ」

「いや、道が同じなんだって」

「言い訳っぽい」

「いや、マジで!」


自然に並んで歩く。

言葉がなくても、なぜか落ち着く距離。


(ほんと、ムカつく)


だけど──

その横顔を見て、

小さく、息を吸い込む。


(……なんで、こんなにドキドキするのよ)


風が少し冷たくて、

頬の赤さをごまかすには、ちょうどよかった。

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